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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
第5章 Verschwinden─裏表─

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30話 恥ずかしい話暴露大会



 おいしい料理にビールやワインを飲んで、未成年のシモン以外はだんだんと酔いも回ってきた。みんなそれぞれ顔に出ているが、色白のペトロが一番顔に出ている。


「なぁ。今度は、恥ずかしい話暴露大会しようぜ〜。トップバッターはヨハネな」

「なんで僕!? 言い出しっぺのヤコブが最初に言えよ」

「なんかお前は、トップバッターっぽいから」

「なんだよそれ……」

「ちなみに、ちっちゃい頃のおねしょはなしな」

「え〜……」


 突然始まった、「恥ずかしい話暴露大会」トップバッターに指名されたヨハネ。恥ずかしい話は恥ずかしいから隠しておくものなのにと内心思いながら、渋々過去の思い出を振り返って発表する。


中学校(コレージュ)の頃だったんだけど……。休み時間に、トイレの個室に入ってたんだ。だけど、その個室のドアの鍵が壊れてたの知らなくて、まだ途中なのに急に開いて、たまたまいた同級生に見られたんだ。しかも、気になってた子に。イジられたりすることはなかったけど、そのせいで、その後は恥ずかしくてまともに顔を合わせられなかった」


 思い出し羞恥で顔を覆うヨハネ。アルコールと相俟って、余計に顔が赤くなる。


「それめっちゃ恥ずかしいっすね!」

「好きな子にそんな姿見られたら、ボクでもたまらないよ」

「おかげで、告白もできずに卒業したよ」

「もしかして。ヨハネが告白できないのって、それも原因だったりして」

「傷を受けた年齢が若いほど、跡が残るって言うしね」

「言われてみると、そんな気がしなくもない……」


 ヨハネの青春の一ページは、恥ずかしくてほろ苦い思い出だったようだ。


「じゃあ次は。ヨハネのバンデのアンデレ!」

「はいっ!」


 次に指名されたアンデレは、なぜか張り切って立ち上がった。


「おれの恥ずかしい話はー。幼稚園(キンダーガルテン)から実科学校(レアルシューレ)まで、必ず先生のことを一度は「お母さん」て呼んだこととかー。激寒なのに短パンで学校行ってみんなにバカだなって笑われた上に、半日で風引いたこととかー。学食で友達の隣に座って三十分くらい話してから、友達だと思ってた人が全然知らない人だったりとかー……」


 恥ずかしい話を、全く恥ずかしげためらいもなく明るく言うので、ペトロ以外はちょこっとだけ引いた。


「お前どんだけあるんだよ」

「アンデレは、そういうネタいっぱい持ってるよな」

「三六五日、毎日話せるくらいのネタは持ってるぞ!」


 胸を張って自慢げに言うアンデレ。


「そんなに恥ずかしい経験してるのに、ためらいもなく話せるとは……」

「アンデレの鋼のメンタルは、そうして作られたんだね」


 順位付けをするなら、アンデレが恥ずかしい話暫定No.1だ。

 鋼のメンタル・アンデレの次は、シモンの番だ。


「ボクは、そんなにおもしろいネタ持ってないんだけど。そうだなぁ……。ボク、ちっちゃい頃は大型犬が苦手だったんだ。ある時、お母さんと一緒に歩いてた時に吠えられて、びっくりして半泣きで抱き着いたんだ。でも、お母さんだと思ったその人は知らないおばさんで。それに更にびっくりして、泣いたことあったなぁ」

「シモンのエピソード、かわいいなぁ〜」

「お母さん間違いって、やっぱあるあるだよな」

「あの時の恥ずかしさは、マジで逃げ出すレベルだもんな」


 誰もが一度は通る「お母さん間違い」にヨハネたちは頷いて共感して、そのエピソードで少し盛り上がった。

 その次はヤコブの番だ。


「俺も、ちっちゃい頃の話なんだけどさ。確か、三〜四歳だったかな。家族でレストランに行った時に、フィッシュアンドチップスのポテトをふざけて鼻に詰めたら、奥まで入って取れなくなったことある」

「まさか、鼻の穴両方?」

「両方! 鼻息でも取れなくて、俺軽くパニクってさ。家族は大慌てで、周りの客も店の人もびっくりして、みんなで俺の鼻の穴の中のポテト救出しようとしてくれたわ」

「結局取れたのか?」

「バーガーとかに使うピックでな。少しずつポテトを削って小さくして、最後は思いっ切り鼻息吹いたらポンッて出てきた。今思い出すとマジ笑える」


 と、ヤコブは途中から笑いを零しながら話した。やんちゃな幼少時代の、可愛らしい思い出だ。


「それじゃあ次は……。ペトロの恥ずかしい話!」


 シモンが指名して、自分の恥ずかしい記憶を思い出すペトロ。


「オレの恥ずかしい話といえば……。幼稚園(キンダーガルテン)の時、劇の発表会があって、オレの配役は最初、小人Bを演る予定だったんだ。だけど当日、お姫様役の子が休んで、なぜか急遽オレが代役を務めることになったんだ」

「その理由は、なんとなく想像が付くね」

「大体その想像通りだよ。嫌だったけど先生に押し切られて、お姫様のドレスを着て大勢の保護者の前に出た時が、ものすごく恥ずかしかった……」


 穴があったら入って一週間くらい籠もりたかったことを思い出し、今すぐ記憶から消してしまいたかった。


「これも想像だけど、好評だったんだろ?」

「みんなに『かわいい』って言われた。でも、劇が終わった瞬間に裏に走ってって、半泣きでドレス脱ぎ捨てた。思ってみれば、性別勘違いされるの、あの頃からだったかも」

「ペトロの、苦難の人生の始まりだったんだね」

「おれは羨ましいぞ! 男女にモテモテなんだから、もっと喜べばいいのに!」

「喜べるかよ。散々性別間違われてうんざりする人生を、お前も味わってみろ!」


 モテモテだったのが実は羨ましかったアンデレだが、ペトロは普通に男の外見のアンデレの方が羨ましい。


「んじゃ。最後はユダだな」

「えっ。私も?」

「当たり前だろ。全員強制参加だ」

「恥ずかしい話って言われても……」

「なんかあるだろ、一つくらい。俺らが知らないことがさ」

「みんなが、知らないこと……」


 ヤコブにそう言われて、ユダは目を伏せる。


「ヨハネ。お前一番付き合い長いんだから、なんかないか」

「ユダの恥ずかしい話か……」


 ヤコブはヨハネにも訊き、ヨハネは振り返ってエピソードはないかと考える。

 けれど、その思考を遮るようにユダは言う。




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