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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
第5章 Verschwinden─裏表─

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23話 ニヒトバンデのボロ



 シャックスと戦うペトロたちの後方、並木道から防御をしているアンデレは、ものすごくウズウズしていた。


「動けないのが、すっげーもどかしい!」

(でも、前に使徒の力が使えなかった時もあったらしいから、使えてるだけマシかぁ。ヨハネさんたちも何とか戦えてるけど、知覚がなくなった原因がわからないと、術を解くこともできないんだよな)

「くううっ! おれが、やつの術を無効化できたらいいのにっ!」


 足も動かせないので、心の中で地団駄を踏むアンデレ。今日はいいところを全く見せられていないぶん、不満が溜まってきていた。

 一方のペトロたちはどうにか戦えているが、時間が経過するにつれ、そう見えているのはヤコブとシモンの方だけだと明白になりつつあった。


大いなる祝福の光雨リヒトリーゲン・ジーゲン・グロース!」


 ペトロは攻撃を放つが、的が外れて悪魔にはほとんど当たらず、想像の半分程度しか祓えない。


「違う! もう少し左だ!」

「そんなこと言われても!」


 ペトロとヨハネの連携が崩れてきていた。上手くいかないもどかしさに、二人の表情にも苛立ちが見え始めている。


(僕は聴覚をやられて、ペトロは視覚を失った。だからこの場合、お互いを補い合って戦うのが最善だ。だけど、段々と自分の方にばかり集中してしまって、僕からの指示が遅れてきてる。ヤコブとシモンはバンデだからうまく連携ができてるけど、僕とペトロじゃそこまで上手くできない!)

「後ろだ、ペトロ!」

連なる天の罰雷ドンナー・ヒンメル・コンティニュイアリヒ!」


 ペトロはいくつもの雷を落とすが、やはり思い通りの攻撃になっていない。気配でわかればいいが、何十体に囲まれていると察知もし難い。


冀う縁の残心(エントゥウィクレン)皓々拓く(ゼルプスト)!」


 ペトロの攻撃が思い通りにいかなくなったぶん、ヨハネは〈苛念(ゲクイエルト)〉でまとめて祓っていく。

 連携が崩れてきたおかげでヨハネの負担が増えていることは、ペトロも感じている。


(段々、オレが足手まといになってるような気がしてきた。もしかして、戦法間違えた?)


 ヨハネは提案に乗ってくれたが、他にいい戦法があったのではないかと、選択ミスに不安になる。ユダだったら、この状況でどういう戦法を選んでいただろうと。

 胸がざわつくペトロは、右腕に触れる。


(ユダは大丈夫なのか? もしも、あの爆弾テロがトラウマだとしたら、今頃……)


 自分と同じように苦しみ、闇の底に沈められそうになっているんじゃないかと想像すると、気が気でならない。

 だが、視覚を失っている自分にできることは、ユダがちゃんと戻って来るのを信じて戦うことだと、十二分に理解している。だからペトロは、今すべきことに全力で集中しろと、騒ぐ心に言い聞かせた。


「二人とも、大丈夫!?」

「加勢するぞ!」


 そこへ、頼りなさげな戦いっぷりの二人を見兼ねて、余裕があるヤコブとシモンが合流してくれた。


「助けてくれるのか?」

「ちょっと苦戦してるみたいだからね」

「連携乱れてて、見てられんねぇよ」

「何を言ってるか聞こえないけど、加勢はありがたい」

「この状況は、バンデの二人の方が有利だ。悪いけど、オレたちのサポート頼む!」

「任せとけ!」


 頼りない二人の前方にバンデのヤコブとシモンが構え、四人で協力して悪魔を祓っていく。


泡沫覆う惣闇(ホフノン・)星芒射す(リヒトシャイネン)! ヤコブ、右斜め前!」

深き御使いの抱擁ウムアームン・エンゲル・ティーフ!」


 ヤコブは、ペトロと同じく視覚を失っているとは思えない正確さで、シモンのサポートで確実に悪魔を仕留めていく。

 その安定した戦いぶりを後ろから見るヨハネは心強く思い、苛立ちを落ち着かせ冷静さを取り戻していく。


(バンデじゃないからって、力を発揮できないわけじゃないんだよな。そんなことを忘れてたなんて、情けない)

「僕たちも二人に負けてられないな。ペトロ、気持ちを切り替えよう!」

「そうだな!」


 ペトロとの連携は、バンデでなくとも仲間の絆がある。ヨハネはそれを、ヤコブとシモンの背中で思い出せた。




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