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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
第4章 zum nächsten─見つけたもの─

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39話 アンデレ、ファインプレー



 アミーの不和助長の術により、幻覚と幻聴に陥るペトロたち。眷属の悪魔たちを仲間と思い込んで防戦一方を強いられ、精神攻撃と物理攻撃を受け続ける。


「オレは、誓いを忘れたわけじゃない。裏切ってなんかない!」

「やめろ! 俺はまだ、使徒でいたいんだ! ここにいさせてくれ!」

「ボクは足手まといなの? みんなの邪魔だったの? 違うよね。違うって言ってよ!」


 浴びせられる誹謗で心は揺らぎ、身体は傷だらけ。まだまともに戦ってもいないのに、激戦を思わせる姿となっていく。


「ハハハ! 良い眺めだ。ジワジワ弱って行く姿を見るのは良いな!」


 看板の上から悠揚と見下ろすアミーは、仕留め時を待つばかりだった。

 ジワジワと追い詰められる四人の一方で、特有の防御のおかげで術の影響をほぼ受けていないアンデレは、ペトロたちのピンチに焦燥する。


「ペトロ! みんな! しっかりしろよ!」

(おれ、本当にこのまま自分の防御だけやってればいいのか? みんながピンチなのに、自分だけ無事でいたってしょうがないのに)

「そうだよ。おれは治癒と防御しかできないんだから、一人になったら戦えないんだ。この数の悪魔から、フルボッコにされるんだ。そんなの超絶痛いし、即病院送りじゃんか! あ。でも自分で治癒できるのかな」

(いや。今それはどっちでもよくて! このままじゃ、まともに動けるおれが動かなきゃ負ける! それは絶対に阻止する!)


 感情と表情をコロコロ変えて考えたアンデレは、自分がすべき最善の策を取ろうと考える。


「防御を解除したら悪魔が押し寄せて来るから、まずそれから逃げる!」


 ユダから展開したままでと言われていたアンデレは、防御を解除した。「ひいっ!」途端に悪魔たちが襲い掛かって来て、迷わず逃げに徹する。


「そんで! どっか適当なところに移動する!」


 堂々と逃げたアンデレは見通しがいいビルの屋上に移動し、〈護済(ヘルフェン)〉を掲げる。


心魂は不可侵、ゲヒトエスディアグート・黒雲は沈降に非ず。(ルーイヒ・)大いなる祝福を受けよ(ジーゲングロース)!」

(みんな! 目を覚ませ!)


 全員に行き渡るように効果増大の精神治癒の術を唱えると、玉が目映い光を放った。


「何だあれは!?」


護済(ヘルフェン)〉が放つ大きな白光が眩しく、目を開けていられないアミー。その光を浴びた悪魔たちも、心なしか動きが鈍った。

 そして、ユダたちに掛かっていた不和助長の術も解除に成功し、正常を取り戻した。


「大丈夫か、みんな!」

「アンデレくんか!」

「くそ。また掛かったのかよ!」

「助かったよ、アンデレ。ついでに、怪我も治してくれないか!」

「わかった! 宵闇遡及し日輪へ。(ハイルン・)己を信じ、(カイネゾーグ・)大いなる祝福を受けよ(ジーゲングロース)!」


 アンデレは、〈護済(ヘルフェン)〉を地上のユダたちに向け唱えた。半透明の発光する球体に包まれた四人の怪我が、完治する。


「よっしゃ! 完全復活ー!」

「ありがと、アンデレ!」

「んじゃ。ウザいこいつらを一掃するか!」


 気力も体力も戦闘前の状態に戻った四人は、アミーの眷属たちを祓い始め、形勢は一気に逆転モードに入った。


「くっ! 吾輩の眷属に何をする!」


 アミーは、青い炎からさらに眷属を喚び出す。だが。


泡沫覆う惣闇(ホフノン・)星芒射す(リヒトシャイネン)!」


 立ちはだかっていた悪魔を早くもほぼ片付けたシモンが、手にしていた〈恐怯(フルヒト)〉で無数の光の矢を放ち半分ほどを一気に祓った。


来たれ黎明(アウスシュテアブン・)祝禱の截断(ゲベート)!」


 そして、自分の周囲の悪魔を片付けたユダが、祓い損ねた残りを全て祓いきる。


「なっ……! 人形(ひとがた)はどうしたんだ!」

「私がとっくに、全部片付けておいたよ。さあ。追加の眷属を喚ばなくていいの?」

「其れなら。君の後ろに居るよ」


 振り返ると、数十体の悪魔が青い炎の中から現れた。しかし、惑乱の元凶の生首の人形(ひとがた)はいない。


「なんだ。ノーマルじゃないか」


 それなら問題ないと、ユダは〈悔責(バイヒテ)〉を手に一個小隊に向かっていく。

 ヤコブとペトロ方にもさらに悪魔が現れ、次々と祓っていく。


赫灼の浄泉(クヴェレ・ブレンデン)!」

闇世への帰標(ベスターフン・ニヒツ)!」


 一度は逃げ切り安心して地上に降りて来たアンデレの方にも、再び悪魔が迫っていた。


「また来たぁ! おれは戦えないから向こう行けってー!」

朽ちぬ一念(シュナイデン・)玉屑の闇(エントシュルス)!」


 アンデレが防御でやり過ごしていたところへ、ペトロが助けに来た。


「大丈夫か、アンデレ!」

「ペトロ! 来てくれて助かったよー!」


 心から感謝して半泣きのアンデレ。ペトロは戦えないアンデレの盾となり、悪魔を祓っていく。


「使徒になったばっかなのに、キツいし大変だろ」

「キツいし大変だし怖いよ! だけどペトロたちは、こんな戦いを何度も繰り返してるんだもんな。だから、おれも弱音は吐かない!」

「全然吐いていいぞ」

「吐いたら、弱いやつって思われそうじゃん」

「思わないよ。オレたちは、弱いやつの集まりだ。でも、同情して傷を舐め合ってるんじゃなくて、戦う力と希望を与え合ってる。あ、でも。弱音ばっかり吐くと特にヤコブが喝を入れるし、今逃げたら全員からバッシングだからな」

「バッシングは嫌だから頑張る!」


 空気を読めなくて嫌味を言われ続けてきたアンデレだが、やはりバッシングは避けたいようだ。


「んじゃ。できるだけ早めに片付けるから、お前はまたヨハネを助けてやってくれ!」

「わかった!」


 アンデレはヨハネが囚われる棺の方へ向かい、ペトロは悪魔掃討に再び合流した。アミーが性懲りもなく、また追加で眷属を喚び出していた。


「ペトロ。アンデレくんは大丈夫そう?」

「あいつは大丈夫だよ。空気が読めないのを嫌がられてることに気付いても、スタンス変えないくらい強いから」

「それなら大丈夫だね」

「ユダは?」

「え?」

「ちょっと顔色悪く見えるから」

「大丈夫だよ。さっきの幻聴に、ちょっとやられただけ」


 気に掛けるペトロに、ユダはニコッと普段通りの笑みを返して言った。


(ユダは何を聞いたんだろう……)




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