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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
第1章 Vorahnung─巡り会う─

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16話 悪魔は入店お断り



「お前に何がわかるんだよ!」

「ねえ、落ち着いて。クリニックの先生も大丈夫だって言ってたじゃない」

「あんな気休め信用できるか! 結局誰にも理解されないんだよ! だから俺は……。俺は……!」


 悪魔出現の気配を感じた三人は立ち上がった。


「来るぞ!」


 シモンはすぐさま店内に駆け込み、スタッフや客たちに警告して避難を促した。人々はエプロンのままだったり荷物を置いて、慌てて外へ出て店を離れて行く。


戦闘領域(レギオン・シュラハト)を展開すれば、一般人は自動的に領域外に移動するんじゃないのか?」

「距離が近過ぎると、巻き込まれる可能性が高いんだよ」


 男性の彼女にも避難を促し、彼女は男性を気に掛けながら走って離れて行くのを確認して領域を展開する。


戦闘領域(レギオン・シュラハト)!」


「オ"$&ゥµッ!」カフェの前を中心に戦闘領域が展開されたと同時に、男性の中から悪魔が出現した。


「そろそろ夕方か。メシの時間もあるし、とっとと帰りてぇな」

「ユダとヨハネは待つのか?」

「オレらで片付けるってメッセージ送っといた。お前も慣れたし、大丈夫だろ」

「∅オψ¿ゥッ!」


 今回は、自身の影を操るタイプの悪魔のようだ。地中を蠢く巨大な黒い蛇のような影が、三人目を掛けて疾走して来る。

 三人は怪しげな影が自分たちの足元に到達する直前にその場から下がり、地面から突き出した大きな棘を回避した。


「俺が行って来るから二人とも頼む!」

「わかった!」


潜入インフィルトラツィオン!》


 ヤコブは倒れた男性の深層に潜り込み、悪魔の相手はペトロとシモンに任せられた。


「ダレ、ニ……ワカル、カ……。グ@%⊅ッ!」

祝福の光雨リヒトリーゲン・ジーゲン!」

「グ§ァ¢……!」


 シモンからの光の雨を食らうも、悪魔は影をウネウネとくねらせながら地を這わせ、逃げる二人を追い掛ける。地面から離れてアパートの壁伝いに逃げても、建物と地面が繋がっているため、登って来て串刺しにしようとする。


天の罰雷(ドンナー・ヒンメル)!」


 壁からジャンプしたペトロは、空中から雷を落とした。「グ∂σ∀ッ!」悪魔は直撃を受けるも影は怯まず追って来て、今度は地上から反撃されるが、身を翻してかわし、着地した。


「ペトロ。もしかして、サーカスにいた?」

「そんな訳ないだろ」


 影を操る悪魔は、どうやら地上からは動けないようだ。行動範囲は限られると考えた二人は、前後に挟んで攻撃する戦法を取った。

 しかし、前後同時に反撃され、二人は跳躍して回避した。


「くっ……!」


 執拗に追いかけて来る影から逃れるために、開けた広い敷地を使って縦横無尽に駆け回る。シモンは、カフェに隣接する博物館の屋根に飛び乗ったり壁を走り、身軽な身体を活かして攻撃をかわしていく。


「シモンこそ、先祖がニンジャだったんじゃないか?」

「ニッポンにルーツがあったら、そうかもね!」


 そうした戦いを続けて数分。深層に潜入していたヤコブが帰還した。


「二人とも行け!」


 ヤコブの合図で、ペトロとシモンはハーツヴンデを具現化する。


心具象出ヴァッフェ・ダーシュテーレン──── 〈誓志(アイド)〉!」

「〈恐怯(フルヒト)〉!」


 ペトロは剣の〈誓志(アイド)〉を、そしてシモンは弓矢の〈恐怯(フルヒト)〉を手にした。


「はあっ!」


 ペトロが憑依された男性と悪魔を繋ぐ鎖を断ち切る。シモンは弦を引き、現れた光の矢で狙いを定める。


「天よ。濁りし魂に導きの光を!」


 直線を描いて放たれた光の矢は悪魔を貫き、祓魔(エクソルツィエレン)は完了した。

 そのあと。恒例の感謝タイムがあり、カフェの店長からのパンのサービスを丁重に断り、帰宅の途に着いた。


「ヤコブ。さっきの人、原因は何だったの?」

「ついこの前まで海外出張してたっぽいんだけど、そこで巻き込まれたらしい。ニュースでもやってたやつだ」

「そうなんだ……」


 男性のトラウマの原因を聞いたシモンは、少し憂いの表情をした。ヤコブはその頭をポンポンと撫でて微笑み掛け、シモンも微笑み返した。

 その様子を後ろから見ていたペトロは、二人に訊いた。


「二人って、めちゃくちゃ仲良いよな。仲間とか親友じゃなくて、それとは別の雰囲気っていうか。バンデだからか?」


 その疑問に答えようと振り向いたヤコブは、シモンの肩を抱いた。


「バンデでもあるけど」

「だってボクたち、ラブラブだから」

「えっ!? 付き合ってんの?」


 なんと二人は、年の差カップルだった。付き合い始めてからもう半年ほど経ち、肩を抱かれるシモンも恥ずかしがる様子はない。


「やけに仲良いなとは思ってたけど、そうなんだ……。ユダとヨハネは知ってるのか?」

「知ってるよ」

「だから、事務所公認だぜ」


 しかしだからと言って、外でのイチャイチャは控えていると言う。使徒で顔バレしている上に広告の仕事もしているから、一応支障が出ないようにと配慮してのことだ。


「お前はどうなんだよ。そっち方面」

「え?」

「環境が新しくなって、新しい出会いもあって、恋の予感とかあったりしないのか?」


 この流れで、ヨハネのためにユダとの関係を探ってやろうと、ヤコブはさりげなく訊いた。


「別に。何もないよ」

「本当か? 誰かにアプローチされたり、ちょっとドキドキするシチュエーションになったりしてないのかよ?」

「今のところ、そういう展開になりそうなことはないかな」

「なんだ。ないのかよ」

「なんか期待してた?」

「だってその外見だから、言い寄られたりしてるのかと思って」

「期待外れで残念だったな。オレも今は、使徒の役目を果たすことが一番大事だから」


 色恋沙汰は必要ないと言うペトロは、今は使徒の使命一筋のようだ。

 ヤコブはシモンと視線を合わせる。同じくヨハネの恋応援部隊のシモンは、やる気の頷きを返した。


(よかったな、ヨハネ。まだチャンスはあるぞ!)


 望みはまだ捨てられていないことを知り、ヨハネを応援するヤコブにも薪が焚べられる。その気合のおかげで、ヨハネの尻は真っ赤になるくらい叩かれそうだ。




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