表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/142

仕組まれた罠

椿と知り合ったのは一年とほんの少し前。引越しの挨拶にやってきたときに、高羽家の御当主に連れられてきた。当時の印象は、引っ込み思案でおとなしい女の子。俯きがちで、人前に出るのも苦手だと話していた。


そんな椿を心配してか、高羽のおじさまは「仲良くしてやってくれ」と彼女のことをよろしく頼むと私に頼んでいたくらい。幼い頃から仙と一緒に育ってきたとはいえ、妹のような存在ができることは、私にとっても嬉しいことだった。


それからというもの、よくうちの屋敷に招いてはお茶をしたり、私が着れなくなった着物をプレゼントしたり、一緒に街へおでかけしたりと、まるで姉妹のように共に過ごすようになったのだ。


『あやめさんのこと、”お姉様”って呼んでもいいですか?まるで、本当のお姉さんみたいだから……』


もじもじと恥ずかしそうに彼女にそう言われたときのことは、よく覚えている。お父様が亡くなって塞ぎ込んでいたときも、椿はよくこの屋敷を訪れ、私の身の回りの世話をしてくれたこともあった。今では、お茶仲間としてすっかり定期的に会うような仲である。


「今日は、どうしたの?連絡もなく椿がうちに来るなんて珍しいわね」


仙がお茶の用意をしてくれている間、私たちは縁側に座っておしゃべりを楽しむことにした。


「その、急ぎお知らせしたいことがありまして。仙様には内密にしたいお話です」

「仙に内密の話……?」

「ええ。あやめお姉様が九条家に嫁入りにすることになったら、仙様も一緒に連れて行かれるのでしょう?」

「そのつもりだけど……」


それと「内密にしたい話」と、どう関係があるのだろうかと首を傾げていると、椿は「だったら」と、にやりと悪戯な笑みを浮かべて私を見た。


「仙様に内緒で、何か贈り物をご用意してはいかがですか。養子とはいえ、ご家族のように育ってきたお方なのでしょう?結婚してからも側にいることにはお変わりないでしょうけれど、おめでたい節目のときですし、これまでの感謝の気持ちを込めてお礼の品をお渡しして差し上げるのも良いのではないかと」


私にぴたりと寄り添って小声で、そう言う椿の言葉に「なるほど」と返す。確かに、仙にはこれまで随分とお世話になってきたことだし、椿の提案は名案かも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ