4 頭がおかしい
R15注意
アギナルド視点→ミネルヴァ視点
「うっ…… うっ……」
ミネルヴァが寝台上で啜り泣いている。
「家に帰りたい…… お父さん、お母さん……」
アギナルドは困ってしまった。ミネルヴァの両親や里の者たちが自分たちを祝福してくれればいいが、たぶんミネルヴァの父親には袋叩きにされること間違いなしだし、まだ✕✕も来ていない少女と関係するのは里では非常識とされているので、多くの者たちから良く思われないだろう。
アギナルドはミネルヴァを抱きしめたり身体を擦ったりして元気を出させようとしたが、尽く手を振り払われて嫌がられて拒まれた。
(おかしいなぁ……)
番なのになぜ嫌われているのか。
とりあえず、アギナルドはもう一度ミネルヴァと✕✕✕✕してみた。けれど泣き叫ぶばかりのミネルヴァが自分に好意を寄せる気配はない。
「……あのさ、音って鳴った? カチカチカチっていう音」
「…………鳴ってない」
アギナルドは愕然とした。
(まさかそんなことがあるのか…………)
「……お風呂に入ってくる」
固まってしまったアギナルドを尻目に、ミネルヴァは浴室に消えてしまった。
******
『音って鳴った?』
ミネルヴァは湧かしたお湯に浸かりながら、✕✕されてしまって落ち込むよりも、先程の彼の言葉の意味を考えていた。
✕✕されたのは重大事件で、知らない男が自分の番になってしまったことは最初は嫌だなと思っていたが、二度目の時はそうでもなかった。
「鳴った…… ような気もする……」
ミネルヴァは、「気絶してる間に音が鳴って、それに気付かなかっただけでは?」という気もしてきた。
覚醒直前の薄い意識の中で音を聞いたような気もするがはっきりせず、気付いた時には何せ混乱の方が強くて、その時の状況を今ようやく落ち着いて振り返られているという感じだった。
(お風呂から出たら、鳴ったような気もするってあの人に言ってみようかな)
ミネルヴァは、金髪に紫色の狂気じみた瞳を持つあの男の姿を思い浮かべてみた。
最初は嫌悪感もあったが、今は不思議と、あの人のことを考えると、心の中がポッと温かくなるような気もしていた。
「ミーネたん……」
陰鬱さを含んだ声に呼ばれて、ミネルヴァは身体を思いっきりビクつかせて驚いてしまった。疲れていたのと、考えごとをしていて彼の接近に気付くのが遅れた。
見れば、まるで覗きでもするかのように浴室の戸を薄く開けて、不気味にも見えてしまう紫色の目を片目だけ、その隙間から覗かせていた。
(登場の仕方が怖すぎる……)
彼の紫瞳に澱みが詰まっているように見えてしまって、咄嗟に返事もできない。
「…………ミーネたんに音が鳴るか、もう一回試してみたいんだ」
アギナルドの無理難題を聞いたミネルヴァは青褪め、逃げようとした。が、体格差もあってあっさりと捕まり、寝台に戻って来てしまった。
「大丈夫大丈夫」
アギナルドはミネルヴァの尻を撫でている。
頭がおかしくなりそうだった。
「もう一度初めてをやりたいんだ。そうしたら音が鳴るかもしれないじゃないか」
「それどんな理屈!?」
ミネルヴァはツッコミを入れた。