知った彼、家からの知らせ
はっ!
(早く寝かせてあげなきゃ)
レンヴラントに抱きつかれたまま、あっけに取られていたレティセラは、彼の重いからだを引きずって、ベッドに寝かせた。
細身なのに、こうやって体に触れると、がっしりとしている。やはり、男性だな、とレティセラは思った。
「レティセラ……」
「もうっ、何でこんなになるまで、飲んじゃったんです?」
レティセラが水を取りにいこうとすると、レンヴラントが、腕をつかんだ。
「レンヴラント様? わたし、お水を持ってきますから、離してくださいよ」
「やだ……」
「やだって……もうっ、なに、子供みたいなこと言ってるんですか?」
「子供でもいいから、ここにいろ」
しかたなく息を吐くと、レティセラはベッドに腰かけて、レンヴラントが寝てしまうのを、待つ事にした。
「………着替えさせてくれ」
「っ!」
お酒のおびた息で、酔ってしまったかのように、レティセラが顔を真っ赤にする。
その様子に、レンヴラントは気分をよくした。
「メイドは着替えを手伝うんだぞ? 早くしてくれ」
「………分かりました」
そう言うと、レティセラは、先まで熱くなった指で、レンヴラントの服に手を伸ばし、そっとボタンに触れた。
手がふるえて上手くはずせない。
胸がどきどきして、顔が熱くて、逃げだしてしまいたいのを必死に我慢していた。
レンヴラントに手を握られる。目を合わせると、彼はこの上なく笑っていた。
「ははは、冗談だ。少しだけ、こうしててくれ」
レティセラの膝の上に、レンヴラントが頭をのせてきて、彼は気持ちよさそうに目を閉じた。
(ほんと、子供みたい)
実家にいる弟を思いだして、レンヴラントの頭を撫でる。
「気持ちいいな」
「こんな甘えんぼで。わたしが、いなくなったらどうするんですか?」
「いなくなるのか?」
レティセラが、あきれたように言うと、レンヴラントが、撫でていた手をつかみ、目を開けていた。
心臓が飛び上がる。
「いなくなるのか?」
からだを起こし、レンヴラントがもう一度聞くと、レティセラは立ち上がり、離れていった。
「…………あの」
「いつなんだ」
レンヴラントが詰め寄っていくと、レティセラはとうとう壁に、追い詰められてしまった。
「いつだ」
両腕で閉じ込められ、髪を結んでいたヒモをほどかれて、髪が落ちていく。
怖くて目をギュッと閉じる。
お酒の匂いのする息づかいが肌にあたり、そこから体に熱をもった。
「2月が終わるまで、です」
「2月……」
レンヴラントの髪が頬にあたってくすぐったい。彼は、レティセラの首筋にすり寄り、体に手を回していた。
「レンヴラント様、痛いです! 離して!」
「やだ」
ゴンッ!
だんだん腕に力が入り、痛いくらいになってくると、音とともに、急に、力なくレンヴラントが、床に倒れていた。
「すこし飲みすぎですよ。まったく……大丈夫ですか?」
「……ありがとうございます。わたしは大丈夫です」
レティセラがにっこり笑うと、アルバートが、倒れているレンヴラントを担いで、ベッドに寝かせていた。
「レンヴラント様こそ、大丈夫なんでしょうか?」
「あぁ、後で冷やしておきますから、平気です。レンヴラント様、今日は早く妻を決めるように、とオズヴァルド様からずいぶん言われたそうで……悪く思わないでくださいね」
あたりまえだ。
レンヴラントは今年には19歳になり、結婚をして、子供がいてもおかしくないのに、本人は全くその気がないみたいだった。
「その話。レンヴラント様、ほんとにキライですからね」
それなら仕方ないな。と、レティセラは思うと、寝ているレンヴラントを見て「ふふ」と笑い声をあげた。
その後、レンヴラントから、期限のこと、について聞かれることはなく、年が明けた。
相変わらず、からかってくるレンヴラントは、またすこし変わって、ときどき手をつかんで来るようになった。
さむいさむい、といいながら、レティセラが窓ふきをしていると、アルバートから「手紙が来ている」と、渡される。
レティセラは手紙を読んで、息を呑んだ。
『先方の事情で、2月に入ったらすぐ、お前を送ることになった。帰ってくるように。
追伸:弟も待っている』
手紙にはそう書かれてあった。
ハッピーニューイヤー!




