プロローグ
――新展歴(V.M)245.2月25日
世界連盟政府(WFG)主導の下で行われた『地球再生計画(E.R.P)』。そこを起点として始まった新たな暦は、245年目を迎えていた。
損耗の末に生活の場を宇宙へと移した人々が新たな繁栄を築き上げ始めた頃、地球環境は想定の予想を遥かに上回る回復を見せ、帰還可能基準を満たすこととなった。
母なる大地へと戻れることを喜ぶ人々。しかしながら都度の争乱や荒廃から回復したのは地球環境だけではなく、”人々”も同じだった。改暦当初40億に満たなかった人類の総人口は100億を超え『地球再生計画(E.R.P)』完了時の予想の倍を凌ぐ数値に達していたのである。
新天地である宇宙という過酷環境下によって人口は平行か下方へと推移するだろうという世界連盟政府(WFG)の予想は大きく外れてしまう。人類の環境適応能力を甘く見た結果の誤算であった。
人々から帰還要望が上がり続ける中、世界連盟政府(WFG)は当初の予定にはなかった帰還人数の制限を発表。この制限により、人類の半数が宇宙へと残されることとなった。
当然のごとく上がった不満は燃え広がる山火事のごとく各コロニー群へと広がり、矛先は政府へと向けられた。日に日に激化していく人々の感情は暴力へと変換され、親展歴始まって以来初めての大きな争乱の兆しを見せる。
水面下で烈火くすぶる親展歴249年、3月4日。帰還者たちによる地球再建が進む最中に、膨れ上がった想いは爆発した。
コロニー0028にて暴動鎮圧のために動いていた政府の治安維持軍が、『コロニー連合軍』によって壊滅したのである。
宇宙に存在するグループ1からグループ9に在する全てのコロニー、そして全資源衛星によって構築された『コロニー連合政府(CUG)』発足の瞬間だった。
世界連盟政府(WFG)は統治運営権及び軍事力保有を認めないと抗議するも拒否され、コロニー連合政府(CUG)との全面戦争状態へと突入する。
無尽蔵の惨劇を生む第四次世界大戦の開戦。新天地である宇宙にて数多の命が散ろうとしていた……――