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シロクロゲーム  作者: 竹取翁
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2日目-⑳ 選別

PM.7:13

島の周囲に密かに待機していた隊員たちが、廃校にやってきて作業を行っている。周囲に生徒の影はない。桐山は乱雑にスマートホンを机の上に置き、楽しそうに語りかけていた。


「…と、いうわけだよ。明日の17時を機に、十色高校2年7組の「シロクロゲーム」は終了だ。そこからは私と生徒たちの一騎打ち…心が躍るね。」


『勝手なことばかりしやがる。俺たちが何のためにルールを厳格に決めたと思ってるんだ。』


「だけど、視聴者は釘付けだろう?知っているよ。このゲームの視聴率が、他のゲームと比べても著しく高いことに。」


電話口の向こう側で、

分かりやすく舌打ちをする音がした。


『それで、どうするんだ?黒崎白馬とお前の間で設定したルールに従うなら、十色高校のシロクロゲームの生存者は0ってことになる。』


「おいおい、そんなことわからないだろう?私が彼らに殺されて、生存者は今の20人を超える大記録になるかもしれないじゃないか。」


『あり得ない。そんなことは、お前が一番わかってることだ。』


ずいぶんと信頼されている。


『そんなことは許されねぇぞ。何のために・・・・・俺たちがこのゲームを開催していると思ってる?ちゃんと結果を残して帰ってこい。そうでなきゃ、「あの人」が許しても俺が許さねぇ。』


「もちろん、分かってるよ。どうなるかは蓋を開けてみないと分からない…だけど、何人かは残すつもりさ。」


『めぼしい生徒はいるのか?』


「君だって、ゲームを見ていたら分かるだろ?」


『俺は俺のゲームを管轄してる。お前管轄のゲームのひとつを見物してる暇なんかねぇよ。』


なんだ、つまらない。

その言葉を飲み込んだ。

そんなことを口走ったら、たとえ電話口で

あっても恐ろしいことになりそうだ。


「目をつけているのは4人だよ。鬼銅瞬、萌葱海斗、渋染赤音…それから、黒崎白馬。そのうち1人は、私の見立てだと覚醒しかけている・・・・・・。沖田、君と同じタイプだよ。」


『ほお…そりゃ、面白い。』


「ほかの生徒は、事前に伝えたとおりだよ。まだまだ不安定なところが多いけど…その点でいえば、黒崎も渋染も、萌葱の冷静さを見習ってほしいね。」


『そういえば、アイツはどうなんだよ?第1回ゲームの親族、確か十色高校に編入したんだろ?』


「ああ、松田琥珀くんね…彼は――――」


楽しい。心が躍る。

今から、明日を心待ちにしている。




※※※




PM.7:03


「松田、明日のことをしっかり整理しておこう。」


新田が声をかける。松田は頷くと、天王寺、煉瓦、緑黄園も集まってきた。太陽は沈んだ。周囲を照らしているのは、公民館の中にあった蠟燭にともった炎だった。


「煉瓦くん、もう落ち着いたの?」


「落ち着いてられるかよ…けど、鬼銅のことも何とかしなくちゃいけねぇし…だって、俺たちが隠れてたってアイツは俺らのことを殺しに来るんだろ?」


「そのこと…もう一度、きちんと整理しないの。松田くん。どうして鬼銅くんは、私たちのことを殺しに来るって言い切れるの?」


緑黄園の顔はいたって真剣だった。

昼間までの、どこか迷っているような

表情は影を潜めている。


「…単純に、抵抗する人間を先に潰した方が動きやすくなるってだけだよ。実際、「シロ」陣営のメンバーで敵に手をかけた人間は新田くん以外にいない。俗な言い方になるけど、要するにナメられているかどうか…ってことだよ。」


「自分に抵抗し、相手側からも自分に危害を及ぼす可能性があるとすれば…それは、鬼銅にとって僕らが脅威ということになる。そうなったら大変だよ。一方的に狩りをするつもりが、僕たちの見え隠れする影を気にしなくちゃならない。精神はすり減るし、その分体力も使う。だからこそ、真っ先に僕らと枝野さんを狙ってくると思ったんだ。」


「それじゃ、今日襲ってこなかったのは…?」


「単純に僕らの居場所を特定しきれなかった可能性もあるけど…それ以上に、縹くんと戦ったダメージが大きかったんだと思う。そのあとに、続けざまに枝野さんとの銃撃戦…僕たちを敵に回す余裕がなかったんだと思うよ。今は、今日のダメージを回復することに徹するんじゃないかな。だから、今から動く可能性も低いと思う。決着は明日だ。」


噛み締めるように、緑黄園は何度も何度も

頷いた。そうして、天王寺と同じように、

まっすぐに松田の顔を見据えた。


「松田くん。正直に言うけど、私はどっちかというと奥田くんと同じ意見。綺麗ごとだって言われちゃうかもしれないけど、私は自分の命可愛さに、友達の命を犠牲にしたくない。」


「おい、緑黄園…」


「だけど、鬼銅くんのことを止められるのは…きっと私たちだけだから。」


縹匡史が死んだ。

彼のことを殺すと決意を燃やしていた枝野も、

同じく殺された。

黒崎たちと萌葱たちは、いまだ動く気配がない。


「自分たちが動けば助けられるかもしれない…そう分かってて動かないのは、もっと嫌だから。」


「私も緑黄園さんと同じです。桃岬さんたちとのことについては、そのあとで話し合う。最後まで絶対にあきらめたりしません。」


「なら、当面の間はこの面子で乗り切るしかないってことだ。結局、やることは変わらねぇよ。」


「…みんな、ありがとう。」


松田はここにきて初めて。

深々と、仲間たちに頭を下げた。

信頼されるということは、とても心強い。

たとえ志が完全に一致していなくても、

こうして僕らは集うことが出来る。


「(姉さん…姉さんの時は、どうだったのかな。)」


信頼できるクラスメイトはいたのだろうか。

きっと凄惨なゲームだったろう。

生存者1名という情報が、それを物語っている。


「僕を信じてくれて、本当にありがとう。みんなで勝とう。誰も欠けることなく、絶対にこの島を出よう。」


復讐をするためにこの学校へ来た。

だけど、今はそれよりも前に、ここにいる

仲間たちを守りたいという気持ちが芽生えている。




※※※




PM.8:19


乾パンをかじる。さっきから腹は鳴りっぱなしだ。

島の中を飛び回りながら食料をかき集めたが、

それでも陳腐な食事では腹が満ちることはなかった。


「は~あ、なんか、カメラぶっ壊すのも飽きてきたなぁ…」


象牙は呑気にも大あくびをする。

ゲームに巻き込まれているという実感が、

あまりなかった。

象牙は自分自身が頭の悪い人間だと自覚していた。


「そっかぁ…湾田の奴も死んじまったんだもんなあー…」


実感が湧かないのは、クラスメイト達の死に関しても同じだった。


「蒼山も死んじまったんだもんな…俺とリを助けてくれたのに…あ、リも死んだのか。うっとうしい奴だったけど、死んだってなるとやっぱ可哀想だよなぁ。」


半数近い生徒が死んで、島の中は

初日よりもどこか寂しさを帯びているような、

そんな気がした。今他の連中は何をしているんだろう。

そんなことを思いながら、象牙は地面に降りて伸びをした。


「象牙。」


「うわぁっ!!?」


不意に、背後から口をふさがれる。

必死に抵抗しようともがいたが、

相手の力は想像よりもずっと強かった。


「大人しくしろ。お前に危害を加えるつもりはない。」


「(この声…き、鬼銅…っ!?)」


声の主はゆっくりと象牙から手を放す。

象牙は息を切らしながら距離をとると、

じっと鬼銅の姿を確認した。


「お、お前…なんかボロボロじゃね?」


ところどころに包帯を巻いている。

顔も心なしか腫れているし、

暗くてよく見えないが、包帯の一部は

血が滲んでいるようだった。


「ちょっとしたトラブルだ。それは今どうでもいい。それより、お前に頼みがある。」


鬼銅はひょいとペットボトルを投げる。

慌てて受け取ると、中に水が入っていた。


「何これ?」


「まあ、まずは飲めよ。一日中動き回っていたら、水も必要だろ。」


「まあ、確かにありがたいけど…いただきまーす。」


なんだ、案外いい奴じゃん。

象牙は内心そう呟きながら、

ペットボトルをグイっと傾け

水を飲む。すると、何かがボトルに

張り付けてあることに気がついた。


「ん?なんだこれ―――」


「静かに、俺の言うことを聞け。」


鬼銅は象牙に近づいて耳打ちをする。

言っている内容の意味は半分も理解できなかったが、鬼銅の頼みとは象牙にとって何のこともない、簡単なことだった。


「…いいけど、それってなんか意味あんの?」


「ああ、俺たちが生き残るためだ。」


俺たち…ここでいうところの、「クロ」チームのことを指すのだろう。それくらいバカな自分でもわかる。


「…分かった、やるよ。やればいいんだろ。」


「頼む。俺は他にやることがあるから、もう行く。」


「こんなことやってもらっててなんだけどさぁ、鬼銅って怖くなったりしねーの?確かに俺ら生きて帰るためにシロチームのやつら殺さなきゃだけど…人を殺すのって、怖くねーの?」


鬼銅からの返答は返ってこなかった。




※※※




腰を落ち着けたのは、市街地の中心にある

大きな一軒家だった。

中は散らかっていたがそこにはわずかに

生活感があり、かつてここに人が住んでいた

ことが感じられた。


「今さっき話してたことだが、俺と鴇は渋染を殺すために動く。さっきの話を聞いてる限り麹塵もその気みたいだが…それでいいのか?」


開口一番に最上は切り出した。

腰掛ける間もなく、麹塵は「ああ」と返答する。


「真紀は、残ってみんなのことを頼む。雄黄も出来ればその方がいい。男手が全員出払えば、残ったみんなが不安になる。」


「残るって、銀河くん―――」


不安げな声を最愛の人にかけられるが、

最上の決意は変わらなかった。


「時雨、ごめん。だけど今回ばかりは譲れない。お前が近くにいたら戦えない。お前のことを守るためにも、こうするしかないんだ。」


「見せつけてくれるねぇ、銀河。」


雄黄が茶化すが、最上はいたって真剣だった。


「まあ、俺は別に、可愛い女の子たちに囲まれるわけだし?そこんところは文句ないんだけどさ。」


「お前はいっつもそれだもんなぁ、敬二。こういうときこそ、男らしく戦おうって気にはならねぇのかよ。」


「戦いの決意なんて、誰も持たない方が世の中平和なんだよ。俺は喧嘩するのも嫌いだし…だから、俺白馬が説得に成功することに賭けてるかんな?」


「おいおい、プレッシャーだな…まあ、頑張るよ。」


「それじゃあ、私と桃岬、黄櫨、朽葉、東原、雄黄の6人は居残り。黒崎たちの方からは、翠田と黄島、水原の3人が残るってことでいいの?」


「ああ、それでいい。お前らは先に、廃校近くか、この建物の中に待機してるのが一番安全だ。その間に、俺たちが確実にやつを叩く。」


「貴代美、分かってるよね?私たちは―――」


「分かってる。余計な心配をするな。」


檜皮が何か言おうとしたが、すぐに突っぱねられてしまう。紅葉は未だ不安そうに白馬のことを横目で見つめている。


「白馬…アンタも、無茶だけはしないで。まずは朝、ここでみんなと合流するのよ。最悪、全員で逃げ回ったっていいじゃん。17時になれば、桐山と戦うだけで済むんでしょ?」


「不安要素を残したまま戦いに臨めるか。言い出したのは黒崎なんだ。責任は果たしてもらうぞ。」


「最上、分かってるよ。紅葉も、俺は大丈夫だから。」


「今度は本当に」と、黄櫨にも視線を送って付け足す。大丈夫だ。決意はもうすでに固めてある。


「じゃ…白馬、お前はちょっとでも休んでろよ。夜通し歩き回るようなことになったら、休んでる暇なんてなくなっちまうぜ。」


「ああ、そうだな…」


時刻はまもなく21時を回る。

2日目のゲームが、終わろうとしていた。




※※※




象牙を見送った直後。

隠れ家へ戻っていた最中、

鬼銅は闇の中に気配を感じた。


「こんばんは、鬼銅くん。」


「渋染…お前、ここで何をしてる?」


一瞬、警戒をした。

隠れ家の中に入られていないだろうか。

そして、渋染の身体。

何か武器を持っていないか。

しかし、そのどちらも杞憂の様子だった。


「とっとと失せろ。お前と談笑する気分じゃない。」


「今日は何人殺したの?縹くんと、枝野さん?灰場くんと勿忘さんは、蒼山くんが殺したんだって。今日本人から聞いた。」


「本人?」


そうか。あの2人を殺したのは蒼山だったのか。

渋染の犯行だと思っていた鬼銅にとっては、予想外の答えだった。


「それで…蒼山を殺したのは、お前なのか。」


「違うわ、会って話しただけ…殺したのは、きっと黒崎くんね。蒼山くんが彼の名前を言っていたから。」


「黒崎が――――」


黒崎白馬。

これといって印象のない人物だった。

いつも灰場や翠田、黄島たちと

一緒に行動していた。

このゲームでも、その周辺で行動を共にしているものと思っていたが…


「…それだけか?わざわざ俺に会いに来て、その報告をするのが目的か?」


「それだけじゃないわ。挨拶。挨拶を、しておこうと思って―――」


渋染赤音。

黒崎よりもずっと印象の薄い生徒。

いつも1人教室の席に座っていて、

存在感もなかった女。

それが今、この島の中でも一番といって良いほどの存在感を放ち、生徒たちに恐怖を振りまいている…


「私ね、私のことを殺すのは、きっと鬼銅くんだと思ってた…鬼銅くんと私は、似ているような気がしてたから。でも、きっと違うのね。私とあなたは、きっと違う。」


「どういう意味だ。」


「どうして人を殺しているのか、鬼銅くんは私に教えてくれる?私がなぜ人を殺しているか、鬼銅くんはわかってくれる?」


沈黙。わかりようもない答えだった。


「…私と君は、違う人。だから、きっと今日でお別れだと思って。最後に、挨拶だけしておきたかったの。」


「何を、わけのわからないことを――――」


「黒崎くんは、私が殺すからね。」


一瞬だった。

さっきまで10メートルほど遠くにいたはずの渋染の姿は、瞬きをした次には、鬼銅の眼前2メートルほどに立っていた。頭が反応するよりも先に、銃口を向けていた。渋染はそれ以上近づいてくる気はなかったようで、微かに微笑んで踵を返す。


「さようなら、鬼銅くん。本当ならお友達になりたかった。人殺し同士ね。」


そう言い残し、渋染赤音は闇の中へと消えていった。




※※※




最初の10回・・・・・・

これだけは、無作為に選出をしたわけではない。


シロクロゲームの目的を遂行する上で、

「我々」は明確なターゲットを絞っていた。


「松田琥珀の推測は正しかった…だからこそ彼はこの十色高校2年7組へ編入し、そして私たちを引き当てた―――警察は無能だねぇ、高校生でも解き明かせる方程式を、導き出すことが出来ずにいるなんて。」


対象となるクラスを探し当てた時、

桐山は高揚したことを覚えている。

引き当てることは非常に困難。

そんな条件下の中で、このクラスは「2人」の逸材を拾い上げてくれた。


「とはいえ、まだまだ未完成…このゲームで生き残ってくれるかどうかは不確定要素が多い…でもまあ、その方が私も視聴者も楽しい。それに、「あの人」の為にもなる。」


第1回ゲーム生存者 火黒卿介

第2回ゲーム生存者 音無響

第3回ゲーム生存者 卯ノ花雫

第4回ゲーム生存者 町田唯 松本輝 横江光

第5回ゲーム生存者 江本一樹

第6回ゲーム生存者 笹山黒羽 

第7回ゲーム生存者 盛崎玲桜

第8回ゲーム生存者 望月聖司 白雪亜希 柿田大輝


時間をかけて選び抜いても、

実際に生き残ったのが目当ての生徒でない…

なんてことは、前例がいくらでもある。


「…ああ、2日目が終わったね。」


桐山は監視カメラと首輪の反応を

今一度確認し、笑い混じりに呟いたのだった。


生存者:24名

第9回シロクロゲーム:2日目終了

死屍累々の3日目を書くモチベが…

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