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シロクロゲーム  作者: 竹取翁
40/44

2日目-⑯ 反撃

PM.3:18


「…あっ!あそこにいるのって―――」


島を歩き回ってしばらく。黄島が見つけたのは、固まりになって歩いている黄櫨たちの姿だった。


「彩羽ちゃーん!牡丹ちゃーん!!」


「おい、周りに誰かいるかもしれない。不用意に大声出すなよ。」


最上が神経質に注意するが、黄島はもうすでに大きく手を振って合図を送っていた。

向こうもそれに気づく。真っ先に駆け出してきたのは黄櫨だった。


「紅葉!加世!会いたかった!無事ね?大丈夫?」


「彩羽…ありがとう、大丈夫よ。私は―――」


3人の親友たちが抱き合う中、東原はポツンと立ち尽くしていた。


「どうしたの?やっと再会できたんだ。遠慮せずにいけばいいんだよ?」


ふと、その姿に違和感を覚えた。東原牡丹の表情は、いまだに晴れていない。

檜皮の分析は、間違っていたのだろうか。


「白馬!おいおいお前…なんつーかその、大変だったなぁ。」


雄黄が駆け寄っていったとき、白馬は弱々しく笑った。


「敬二、元気そうでよかった。龍星も無事か?」


「あったり前だ、俺は正義の英雄ヒーローだからな。それよりお前、好奇が死んで消沈してんじゃねーだろうな?」


「おい龍星!」


「俺はあえて言ってんだ!ここで落ち込んでたらダメだ!俺たちがしっかりしないと、好奇に申し訳が立たねぇだろうが!」


親友の遠慮のない発言に、雄黄は申し訳なさそうに手を合わせる。


「ごめん白馬、コイツバカなんだ。気を悪くしないでくれ。」


「いいよ、俺は大丈夫だ。」


「そ、そっか。ありがと…」


「こっちこそありがとう。黄櫨と牡丹のこと、一緒に守っててくれてさ。」


今度は、雄黄が違和感を覚える番だった。目の前にいる級友の様子が、いつもと違うように思える。具体的な指摘は見当たらない。それでも、1年以上同じ教室で話してきた黒崎白馬とは、何か違うような…


「ちょっと、悪い。先に黄櫨と牡丹と話しておきたくて。」


「あ、ああ大丈夫!とにかく、合流出来てホッとしたよ。」


東原のもとへ歩いていく白馬を見送る。


「よう、牡丹。」


「あ、白馬くん…」


東原の顔は、変わらずひきつっていた。檜皮は横目でそれを確認しながら、自分の考えが甘かったとを認識する。彼女の不安材料は、「翠田たちと会えないこと」ではなかったのだ。


「(灰場が死んだ直後は、一瞬黒崎たちのことを心配してた。その気持ちは絶対嘘じゃない。だけど…)」


彼女の不安の種になっているのは、「シロ」陣営という敵同士の関係性なのか。

しかしそれだけで、小学校時代からの友人たちにそこまで猜疑心を抱くものだろうか。

何が、ここまで彼女を不安に駆り立てるのか。


「…どうした?何か変だぞ、お前。」


ふと、白馬が東原の顔を見てそう呟いた。

東原はびくっと体を震わせて、恐る恐る白馬の顔を見る。


「…なんでもないの。私、紅葉ちゃん…白馬くんたちのことは、信じてるから。」


「俺たちのこと「は」…?」


引っ掛かりのある言葉だった。それは檜皮も白馬も同様に気が付いている様子だったが、白馬はあえてそこに触れようとは思わなかった。


「牡丹、お前初日はずっと1人でいたんだよな?枝野から聞いた。きっと怖かったよな…もっと早くに合流出来ればよかったんだけど、ごめん。好奇のことも…俺がもっとしっかりしてれば、こんなことにならなかったのに。」


「そんなこと!」


「そんなことない」と言おうとしたのだ。「ありがとう」と言葉を紡ぐ。


「でも、もう大丈夫。もうこれ以上、みんなのことを傷つけさせたりしないから。」


再会を喜び合っている生徒たちをぐるりと見まわして、声をかける。

集まった7組の生徒13人が、一斉に白馬へ視線を送る。


「みんなに頼みがある。ここを全員で切り抜けるために、全員で協力したい。今戦おうとしてるやつらを止めたい。そのために、力を貸してくれ。」




※※※




私って、どうして今ここにいるんだっけ。

紅姫桜は自分の身を出来る限り縮こませながら、そんなことをふと思っていた。

「シロ」陣営の黒崎たちを罠にかけようと勢い勇んだまでは良かったものの、そこからは怒涛の衝撃展開。灰場は蒼山に殺されるし、あれよあれよと死亡アナウンスが聞こえてくる。フラッといなくなってしまった湾田も、ついさっき死んだとの知らせが入ってきた。


「(バカめ。私と一緒にいれば、殺されることもなかったのに…)」


強がりを言う元気もなくなっていた。状況はさらにカオス。

黒崎たちは桃岬らと合流し、何やら今後の作戦を立案するらしい。ここに自分がいてもいいのだろうか。そんな居心地の悪さを感じた。


「具体的には?具体的にどうやって結託し、どうやってこの状況を生き抜く?」


麹塵は変わらず、厳しい姿勢を崩そうとはしなかった。気の強い女だ。

自分が納得のいく答えを得られるまで、絶対に納得などしないだろう。


「まずは、戦おうとしてるやつらを止める。具体的には鬼銅と渋染。それから蒼山。好奇を殺したのは蒼山だ。」


「それはさっき象牙から聞いたよ。だけど、昨日枝野が説得しても3人は応じようとしなかったじゃない?今日になってその姿勢が変わるとは思えないけど。」


「ああ、蒼山と渋染は、たぶん説得は無理だと思う。だから、力づくで何とかするしかない。」


「それって、2人を殺すってこと?」


檜皮の質問に応じた黒崎の答えに、桃岬が困惑したような声を漏らす。

檜皮は麹塵と似たり寄ったりだと思っていたが、どうやら少しずつ性格に違いがみられるようだ。麹塵が一本筋が立つことを好むのに対して、檜皮は案外柔軟である。


「最終的にはそうなるけど、俺も人殺しはしたくない。だけど、無力化するだけなら命まで奪わなくても済む。徒党を組んで挑むことが出来れば、不可能じゃないと思う。」


「確かにそうかもしれないけど、それって「鬼銅・渋染・蒼山を止めるまでの休戦」ってことに変わりないんじゃないのか…?」


「違う。3人を止めた後は次だ。この島から脱出する目的が、まだ残ってる。」


「それって、主催側と対立するってこと?」


「そうだ。俺たちが争う必要はない。戦うべきは、このゲームを主催した連中だ。」


「正論だが、それを実現する手立てはあるのか?」


「枝野の言ったことと同じだよ。」


そう言って、黒崎は合流組へ説明をはじめる。

まずは、先ほど仲間内で話していたことの繰り返し。

ゲームを主催する以上、参加者の命を主催側がいたずらに奪ってしまった場合、ゲームがそもそも成立しなくなる。だからこそより大人数で結託し交渉に出ることで、主催側との一騎打ちを果たそうというのが黒崎の提案だった。


「それを相手が受け入れると思うか?」


「受け入れさせる。俺が何としても、その交渉を成功させてみせる。」


麹塵は眉をひそめた。到底納得しないという表情だった。


「あえて言わせてもらう。最低拘束・または殺人を提案された3人は、陣営で言えば私たち「クロ」の生徒たちだ。お前たちに裏切られたとすれば、私たちは一気に劣勢になる。」


「白馬たちはそんなことしない!」


「そう思っても、確証や相応のリスクを負ってもらわないと、交渉とは呼べない。」


微妙に空気がぴりついているのを感じる。黒崎たちと桃岬らは休戦協定を結んだといっていたが、それでも互いに手放しに信頼できないような、見えない壁を感じる。


「それでいうと、私が主催側なら黒崎の交渉を呑むと思うけど。」




※※※




緊張状態が続く中で、白馬に助け舟を出したのは意外な人物だった。


「桜ちゃん…それってどういう意味?」


「だ、だから桜ちゃんって呼ぶなって…」


「それより言えよ!何でお前が主催側なら、一騎打ちの話を呑むんだよ!」


「いや、だって…そっちの方が面白そうだから。」


答えを聞いて、全員が怪訝な顔をした。

表情を崩さなかったのは白馬ただ1人。紅姫は空気に吞まれたかのように言葉を詰まらせたのを察すると、雄黄がすかさずにフォローに入った。


「まあまあ!まずは桜ちゃんの話を聞こうぜ?ていうかみんな、さっきから異様にピリピリしすぎ―――」


「そうね。聞かせて、紅姫。」


紅葉も語気を強める。怒っているのだろうか。さっきのことはもう謝って、済んだ話だと思っていたが。


「ぜ、前提として…こんなゲームを主催する時点で、目的なんて「楽しい」からに決まってんじゃん。高校生を拉致して、殺し合わせて、メリットのある人間なんていないし。」


「そりゃあ、言われてみればそうだね!さっすが桜ちゃん。そんで?」


「監視カメラが無数に、異常なくらい取り付けてある…これって、いわばデスゲームを視聴させてるってこと。つまり、主催側には「顧客」がいて、いわば私たちのデスゲームは「商品」ってこと!」


「だから、私たちがゲームを「放棄」したら、商品の価値が超下落する。殺し合わないデスゲームなんて面白くもなんともないし、逆に見てて不快だし。」


「お前、なんつーこといいやがる!」


「腰折るなよ龍星!桜ちゃんは客観的な話してんだよ!」


雄黄の必死な掛け合いによって、紅姫は徐々に上機嫌になっているように見えた。


「つまり!私らにつけられた首輪は、それを抑制するための「脅し」の役割を担ってるってことだ!「こっちに逆らえば命はないぞ。それなら殺し合った方がマシだろ?」ってな具合にな!」


「つまり?」


「つまり、その脅しに屈しないという意思を相手が感じれば、交渉の余地は十分にあるってこと!」


ここまでの説明を受けて、黄櫨はようやく頭の中の回路がひとつに繋がった。


「シロ」陣営の生徒たちは、松田一行がリを殺害した以外に、まだ誰も殺人を行っていない。一方の「クロ」陣営側はというと、実際は鬼銅・渋染・蒼山の3人が率先して動いているのみ。2日目も後半に差し掛かっているというのに、今現在のゲームはかなり「消極的」であると判断することが出来る。


「私たちは、危害を加えられない限り「シロ」側を攻撃しようなんて意志はないし、紅葉や加世、白馬たちと争うつもりもない…」


「俺たちも、お前たちに危害を加えるつもりはないし、これからもないと断言できる。」


生存者が26名となったと今、生存者の半数以上である14人がゲームを放棄した場合どうなるだろう。まず間違いなく、明日最終日のゲームは機能しなくなる。そのまま両陣営が行動を起こさないままに期限が過ぎてしまえば、全員まとめて死亡…それは、主催側視聴者側の両方にとって、「面白くない」結果になる…


「桐山のところには、俺が交渉に行く。俺たちが休戦を結んでいる今だからこそできるんだ。これ以上疑心暗鬼になって協力できなくなったら、今度こそおしまいなんだ。だから、今すぐに決めたい。今すぐに動き出したい。」


桃岬と黄櫨は、様子を窺うように麹塵のことを見た。


「…分かった。それで、渋染と蒼山を止める役割はどうする?それから、一番の問題の鬼銅は?」


「ここにいるメンバーを選抜して、徒党を組んで動きたい。迷惑をかけるかもしれないけど…敬二や龍星には、手を貸してほしいと思ってる。鬼銅のことは…ちょっとだけ、待ってくれないか?」


「あったり前だ!俺にどーんと任せとけ!」


「あー……まあ、善処するよ、ハハ…」


「よし、私はそれでいい。だけどその代わり、討伐には私もついていく。」


麹塵がそう名乗り出たのを、檜皮は黙って見つめていた。


黒崎白馬くんは、

一応今作の主人公格の1人なんですが、

彼周りの話はどうしても書いててつまんないんですよね~

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