0日目ー③ 不協和音
クラスの空気が悪いのは全体じゃなく、だいたい数人のせい。
「十色高校は十人十色の生徒の個性を重んじる。ってわけだ。まあここは1つ頼むよ、桃岬。」
「先生、そんなふうに投げやりにされたって困りますよ…」
桃岬がそういうと、谷口は申し訳なさそうに頭をかいた。桃岬は、谷口という担任のことを尊敬していたし、教師として好きだと思っている。それでも、最近の先生はちょっといい加減だ。
「ごめんなぁ、桃岬。俺もクラス全員が納得できるように尽くしているつもりなんだが…何せ親御さんへの責任がある。俺は進学科27人の担任だ。お前たちの進路をサポートする責任がな。」
「けど…」
谷口は桃岬の肩をポンと叩いた。
「夏休みの間、普通科のみんなの家に家庭訪問に行こうと思ってるんだ。2学期には文化祭だ。このイベントでクラスが一つになればいいと思ってるし、俺も最大限のサポートをする。だから…桃岬も頼む、な?」
谷口はそう言って行ってしまった。桃岬は「あっ…」と声を出しかけ、あきらめてため息をつく。1学期最後のHRは、担任不在のまま学級委員に任されることとなった。
「(頼むって言われてもなぁ…気が重いよ。)」
教室に入ると、既にぴりついた空気が伝わってきた。男子の学級委員である奥田は、既に覚悟を決めたように教壇の前に立っている。
「桃岬くん、先生は――」
桃岬が首を横に振ると、奥田はあからさまに失望したような顔をした。
「舐めてんだよなぁ谷口は、俺たちのことをよぉ。」
話を聞きつけていたのか、緋井が周囲に聞こえるように不満を漏らした。
「えっと…じゃ、気を取り直して始めましょっか!先生がいないなら、私たちで比較的自由に決められるってことよ、文化祭の出し物!」
そうだ、このイベントを機にクラスを一つにまとめることが出来れば、きっとこの空気を払拭できる。これをその第一歩にするんだ―――
※※※
やっぱりこうなった。うまくいくはずもない。桃岬はすっかりお手上げ状態だった。
「奥田くん、これどうやって収集つければいいの…?」
「だいたいなぁ、2年の秋に文化祭になんて参加すること自体意味が分からねぇんだよ。文句あんならそんなもん中止だ、中止!」
「ふざけんじゃないわよ、何でイベントの時までアンタたち進学科に合わせなきゃいけないんだ!」
「ここは進学科だ!迷惑に割って入ってきやがったのはてめぇらだろうが!!」
「むっかつくわ~、その言い方はないっしょ。」
「…ふっ、騒がしい。ここは動物園か…」
「カッコつけてんじゃねぇよ紅姫!この薄らバカが!」
「ばっ、馬鹿ぁ!?私はお前よりテスト順位上なんだが!?進学科なんだが!?」
「テストが出来てもバカはバカなんだよ!それが分かってねぇんだから、バカも極まってやがんな!」
進学科の生徒で最も声高々に反論を展開しているのは蒼山で、時点で紅姫だ。それに応戦しているのは向井に、緋井と荒川らが筆頭である。普通科の生徒たちは、声を出すものは少なくとも、不満に満ちた表情で蒼山のことを睨みつけている。基本的に問題をこじれさせるのは、いつも彼だ。
「はい、ストップ!ストーーップ!君たち、ヒートアップしすぎだ!たかが文化祭の出し物で、そこまで熱くなる必要ないだろう―――」
「アンタらにとってはたかが文化祭でもねぇ!あたしたちにとっては大事なイベントなのよ!」
「そぉだそぉだ!がり勉の進学科にはわかんねぇだろうがよぉ。」
「そういう言い方やめろよ、荒川。癪に障るな。」
「ああ?何だよ、ホントのこと言って何が悪いんだよ?」
「被害妄想が激しいんだよ、お前らは。何が不満なのか知らないけど、俺たちに八つ当たりするのはやめろ。」
「最上くん、そういう言い方は――」
「んだとぉ、テメェ!!」
いよいよ荒川が机を蹴飛ばし、最上が応戦するかのように立ち上がる。最上の隣にいた水原が涙目で最上の袖をつかみ、荒川に続けといわんばかりに緋井も腰を浮かせた。
「ちょ、ちょっとやめて!もう、いい加減にしてみんな!」
「下がってろ桃岬くん!僕が止める―――」
その時、ゆっくりと立ち上がる影が見えて、騒然としていたクラスが一気に静まり返った。
「鬼銅…」
「…桃岬、奥田。谷口には話してたんだが、今日は私用があってもう時間がない。悪いが先に帰らせてもらう。」
「えっ、あ、ああ…そうか…そういうことなら仕方ない…うん…それじゃ、気を付けて。」
鬼銅はそれだけ言うと、クラスメイトに一瞥もせずに教室から出て行った。一度固まった空気を再び盛り上げようと荒川が最上の方へ行こうとしたが、縹が大きく咳払いしたことでそれを制する。
「萌葱…手伝ってやったらどうだ?」
「俺が?」
新田がそういうと、天王寺が賛同するように「それがいいですね!」と微笑む。
「俺たちも部活がある。出来るだけ早くまとめてほしいんだ。そのためには萌葱、お前が適任だと思う。」
「私たちからもお願いできる?萌葱くん…」
桃岬にそういわれると、萌葱は重い腰を上げて教壇へ向かう。
「それじゃ、さっさと決めてしまおう。決定の仕方なんだが、まあ手っ取り早いのは多数決なんだが――」
「人数の暴挙を許すな―、進学科の横暴反対―」
リが全員に聞こえるか聞こえないかギリギリの声でそう呟く。萌葱は短くため息をつくと、そのまま話を続ける。
「…まあ、そういう意見は出るだろうな。だったら、他の視点から見て解決していこう。分かりやすいのは予算だ。荒川の出した「ライブハウス」は…論外だ。そもそも誰が来るんだ?」
「ケッ、お前らみたいな田舎モンにはわかんねぇだろうけどな、ストレス発散になるんだよ。」
「設備のことも考えるとかなり小規模なものしか作れない。それに、他のクラスから苦情が来るだろう。気持ちはわからんでもないが、ここは折れてもらうしかない。」
「じゃ、お化け屋敷は!?私のお化け屋敷は予算もそこまでかからないでしょ!」
「まあ、候補の1つとしては可能性はあるな…装飾品の量や質にもよるが。それに、夏休み中に集まることが出来ないなら、時間の都合上間に合わない可能性が高い。」
「んなこと言い出したら、ほとんどの案が通らねぇだろうがよぉ。」
「だろうな。そもそも十色高校はクラスの出し物よりも、部活動や事前申し込みした個人の活動が主だ。」
「それなら、やっぱり青山くんの提案した食べ物屋さんで――」
「それが毎年の恒例なんだが…あいにく、今年からは火器類の使用が禁止されたからな。」
「IHでやるってこと?」
「そうだな。ホットプレートとか――」
「じゃ、ホットケーキでいいんじゃない?パンケーキ!」
「できれば一度に多く出来る方が効率がいいんだが。」
「じゃ、たこ焼きでよくね?」
奥田がほっとしたようにさらさらと意見を書き連ねていくのを、荒川たちは恨めしそうに見つめていた。
※※※
教室に残っている奥田を見つけて、紅葉はゆっくりと後ろから近付いた。声をかけると、若干疲れた様子で奥田は笑った。
「まだ帰ってなかったのか、もうすぐ完全下校だよ。」
「あっ、うん。ちょっと図書館で勉強しててね。奥田も、こんな時間まで何かしてたの?」
「いやぁ…我ながら情けなく感じてね。結局今日も、萌葱くんに頼り切ることになってしまった。彼も生徒会の仕事があったろうに。」
「気にすることないって。萌葱はその…ホラ、天才だからさ。この前の全国模試、また1位だったんだって。」
「まったく、頭が上がらないな…桃岬くんも心労が絶えないみたいだからね。日誌を付けて、文化祭の予算案を作っていたところだ。」
奥田は責任感が強い。それに、その真面目さから融通が利かないところもある。クラスのために一生懸命になっているのは伝わっているのだが、どうしても萌葱や桃岬の方がそつなくこなしてしまうのだろう。
「…ま、とりあえず穏便に済んでよかったじゃない。今日だって、もう少しで暴力沙汰になるところだったし。」
「そうだね。そこは鬼銅くんに救われたかな、ハハ。」
「明日でひとまず1学期は終わるし、何か困ったことがあったら言ってよ?私たちも出来ることはするし…2学期から、いろいろ大変だしさ。」
「うん、ありがとう。その時はよろしく頼むよ。」
「おーい、紅葉。黄櫨も部活終わったし、そろそろ帰ろうぜ。」
「あっ、白馬!うん、今行く!」
「黒崎くんか。」
奥田が白馬の声に反応し、日誌をぱたんと閉めた。まもなく完全下校時間になる。奥田も帰り支度を進めるつもりなのだろう。
「奥田も一緒に帰る?加世たちも一緒だけど。」
「いや、僕は電車だから、方向が逆だ。また明日会おう。」
「そっか、じゃあまた明日。」
「ああ、また明日。」
奥田が教室から出ていくと、通りざまに白馬に手を挙げて家路につく。白馬が隣にやってくるのを横目に、紅葉は奥田の背中を見送った。
「…何か、申し訳ないよね。クラスの問題ごとを、琴音や奥田にばっかりさせて―――」
「そうだな。なんか手伝えたらいいんだけど…。俺は普通科のやつらのこと、特別何か思ったことはないけど。」
「私だってないよ。でも、まあ…最近の荒川たちの言い方とか態度は、ちょっとどうかと思うこともあるけど―――」
「―――ま、2学期になればどうにかなるって!みんなで準備の居残りしたり、いろいろしてるうちにさ。」
「…もう、白馬ってそればっかりなんだから。」
それを心の底から言ってるんだから、楽観的というか、馬鹿正直というか――
「あら、翠田さんに黒崎くん!」
すると、階段から2つの人影が降りてくるのが見えた。声の主は、同じクラスの天王寺と松田だ。
「なんだ、お前たちも残ってたのか?何でまたこんな時間まで…」
「僕は谷口先生に呼び出されてて。ホラ、転校してから色々あったから、そのことでちょっとね。」
「私は、他のクラスの方たちとお話ししていたんです。すっかりこんな時間になってしまって…でも、今日はいいんです!このあと桃岬さんのうちで、お泊まり会があるんですから!」
「へぇ、琴音のところで?」
「はい、緑黄園さんと3人で!よかったら翠田さんも一緒にどうですか?」
「うーん、せっかくだけど、今回は遠慮しとこっかな。明日から勉強に大忙しだし、夏休みのことで色々計画立てなきゃ。」
天王寺が足止めされていた他クラスの生徒というのは、十中八九男子たちだろう。天王寺は学校でも1,2を争うくらいに男子から人気がある。彼女は彼女で人がいいから、ついつい話をしてしまうんだろう。
「それにしても、今日のHRは大変だったね。天王寺さん、桃岬さんのうちに泊まるっていうのも、もしかしてその話?」
「松田くんはいつも探偵さんみたいですね!そうなんです、2学期からの7組をどうしていこうかの作戦会議と、桃岬さんの慰労会なんです。」
「あ~…やっぱ、みんな考えてることは一緒なのねぇ――」
ここにいるのは、どれもが1年生の頃から進学科に在籍していた生徒たちだ。元1年6組の生徒たちはこんな時間まで学校にいることは滅多にない。緋井は野球部に所属しているが、他の生徒たちの多くが、部活動にも所属していないものたちばかりだ。
「こんなことは言いたくないけど、2組や3組じゃなくって6組の子たちだからね。悪い子ばっかりじゃないんだけど…やっぱり進学科とは合わない人の方が多いんだと思う。」
「確か、この学校は学力順にクラス編成を変えているんだよね?進学科の7組以外、つまり普通科は成績で1組から順に―――」
「そうそう、湾田なんてたまにびっくりすることあるもんな。アイツが1年の時にコンロ爆発させて、文化祭で火器類使用禁止になったんだ。」
「大変なのはわかりますけど、あそこまでケンカ腰になるのはよくないと思いますね。」
「まあ、蒼山くんや紅姫さんも言いすぎなところがあるけど…」
「そういう意味では、やっぱ奥田も桃岬も大変だよな。時間が経てば何とかなるって思ってたけど、結局1学期はダメだったわけだし。ま、俺は文化祭とかやってればそのうち仲良くなると思うんだけど。」
「そんな単純なことじゃないんだってば、もう。」
そんなことを話し込んでいると、不意に自分のケータイがなっていることに気が付く。画面を見ると、先に図書館から出た灰場からだった。
『おい紅葉、お前ら何してんだよ?俺たちもう外で待ってんだ、さっさと帰ろうぜー』
「あっ、ごめん。ちょっと話し込んじゃって。すぐに―――」
「おい、お前らまだ残ってたのか。」
三度、廊下で声をかけられて咄嗟にケータイを切る。十色高校は、学内でのケータイの使用は原則禁止だ。教師に見つかってしまうとマズイ。
「もう完全下校時刻になる。こんなところで何を油売ってるんだ。」
「あ、萌葱くん…」
声の主がクラスメイトの萌葱だと分かり、ほっと胸をなでおろす。萌葱は完全に紅葉のケータイを見ていたが、彼はそれ以上追求しようとはしなかった。
「もうすぐ門が閉まる。さっさと帰れ、お前ら。」
「萌葱くんこそ、こんな時間まで何してるの?」
「俺は生徒会の会議だ。職員室にも若干伸びることは報告してる。それにしても全員うちのクラスか…問題児の集まりだな、まったく。」
紅葉たちは顔を見合わせて、苦笑いをした。夏といえども、既に外はうっすらと暗くなろうとしていた。萌葱に先導されて外に出ると、部活動の練習を終えた生徒たちがぞろぞろと帰っていくのが見えた。
「…?まだ、誰か校庭に残ってるな。」
「え?」
目をやると、確かに校庭の隅に佇んでいる人影が見える。何だろう、どこか見覚えがあるような気がするが―――
「あ…あれ、渋染じゃないのか?」
最初に気づいたのは白馬だった。渋染であると分かると、萌葱は小さくため息をついて「どいつもこいつも…」とつぶやく。天王寺が「渋染さーん!」と呼びかけるが、彼女がこちらを振り返る様子はなかった。
「あれ?もしかして聞こえてないのかも。私、近くに行って声をかけてきますね!」
天王寺が走っていくのを見ながら、紅葉はなんとなくボーッと、渋染と校庭を見つめていた。あんなところで何してるんだろう。いや、何をしてたんだろう?
「例の病気か。」
「えっ?」
「黒崎、お前もだろ?時間把握障害…だったか。たぶんそれだ。こっちの呼び掛けに気が付いてない。いつからあそこにいたのか知らないが、きっとアイツにとって何か集中することがあったんだろう。」
「あっ…そういうことか。じゃあ呼び掛けてもあんまり意味ないや。俺、直接声かけてくるよ。たまにあるんだって。周りのこととか全然気にならないこと。」
「あっ、じゃあ私も一緒に。」
渋染に駆け寄っていく白馬と、なんとなく一緒に走る。ずんずんと近くなっていく渋染の背中を見て、不意に足が止まった。
「おい、渋染―――」
「っ!」
一瞬だった。先ほどまで呼びかけにも微動だにしなかった渋染が、白馬が彼女の肩を叩いた瞬間、渋染はまるで電流が流れた機械のように後ろを振り返った。紅葉には、それがどうにも奇怪なものに見えて、そして、次の瞬間には頭の中で考えがまとまらなくなっていた。
「あ…黒崎くん。」
「渋染。もう下校時刻だってよ。こんなところで何してたんだ?」
「…」
渋染は、しばらく白馬の顔をまじまじと見つめていた。時間にしては、ほんの数秒のことだったろう。紅葉には、それが何だか数分の出来事のように感じられた。あれ、もしかして私も、白馬と同じ症状にかかったってこと?
「…夕日を、見ていたの。」
「夕日?…もうとっくに沈んでるぜ?」
「うん、そうね…ちょっと―――ぼーっとしちゃってたみたい。」
「おいお前ら。時間だ。渋染も気が付いたのなら、さっさと帰れ。」
「あー、うん。今行くよ。」
萌葱の呼び掛けに、白馬が返事をして踵を返す。白馬がこっちに向かってきているときも、渋染はしばらく、また電気が止まった人形のように立ち尽くしていた。
暗くなってきていたので、渋染も一緒に帰るかどうか尋ねた。しかし、彼女はどうやら電車通学だったらしく、方向は別だと言って白馬の申し出を断った。別れ際に渋染は小さく微笑んでいたが、なぜか隣で見送っていた紅葉の顔は曇っているように見えた。
「明日終わったら夏休みだなー。勉強とかめちゃだるいけど、まあしょうがないかー。」
「…うん。」
「あ、俺明日は部活あるから、図書館は遅れていくわ。黄櫨も関東大会、近いんだろ?」
「うん。今年こそは表彰台に上がりたいから。今が踏ん張り時って感じ。」
「彩羽ちゃんはすごいね。大学から推薦も来てるんじゃないの?」
「えっと…まあ、声をかけられたことはあるよ。先輩も、私のことを大学に話してくれたりしてるみたいだし。」
「げ~、マジかよ!いいなぁ、受験いらずじゃんか!ずりぃぞ彩羽。」
「す、推薦でも受験自体はあるよ、灰場くん…それに、彩羽ちゃんは努力して結果を出してるし…」
「わかってるって、ちょっと言ってみただけだよ。昔っから冗談通じないなぁ、牡丹は。なあ紅葉!」
「…えっ?あ、うん。そうかも。」
「…どうしたんだよ?お前、さっきから変だぞ。」
「あ、いや…ううん。別に何でもないの。ちょっと考え事してただけ。ホントに大したことないから。」
「ふーん。ならいいけど…おい白馬、紅葉何かあったのか?」
「いや、別に何にもなかったと思うけど…大丈夫だって、好奇も心配しすぎだよ。どうせ模試の結果が悪かったとか、そんなんだよ。」
白馬が好奇にそう囁くと、紅葉が脇腹に肘鉄を入れてくる。じろりとこちらを見ていた紅葉だが、考え直したようにくすっと笑った。
「…ごめんごめん!ボーッとしてただけよ。白馬のが伝染ったのかも。」
「伝染る病気じゃねーよ。」
紅葉は笑った。好奇も、黄島も、東原も、黄櫨も。俺の大切なかけがえのない友達たちは、みんなどこか真面目だったり、物事を深刻に考え過ぎたり、融通が利かなかったりする。けど、人生ってのはもっと適当でいい気がする。その方がきっと生きやすいし、自分の心も軽く、楽になる。そんな他人から見れば「楽観的」と言われるような性格を、実は結構気に入っている。
「それじゃ、みんなまた明日な。」
「おう、最終日だからってサボるんじゃねぇぞ!」
「じゃあねー。」
4人が手を振って家路につくのを、白馬と紅葉は見えなくなるまで見つめていた。4人の背中が完全に見えなくなると、紅葉はポツリと口を開いた。
「ねえ、白馬。明日の学校なんだけど―――」
「ああ、ちゃんと起きるって。勉強道具も持っていく。サボったりしねぇよ。」
「……」
「紅葉?」
「…そうね!じゃ、また明日ね。」
「ああ、また明日。」
また明日。その言葉がなぜか口に残った。