2日目-⑭ 不穏
PM.2:12
黄櫨たちは白馬を、白馬たちは黄櫨との合流を急いでいた。
麹塵は移動中も見つけた監視カメラをすべて取り外し破壊する。
檜皮は自らが先陣を切ってグレーゾーンを進み、左右の索敵に雄黄と鴇が務める。
黄櫨は集団の最後尾を担当し背後からの奇襲に備え、中央に朽葉と桃岬、東原が並んでいる。
当人たちは気づく余地もないが、現在様々な分裂や対立が進んでいる中、
島内の集団として最も安定した布陣が彼らとなっていた。
「つっても…白馬たちを見つけるのも楽じゃねぇな。島の中のどこかにいるのはそうだけど、安全地帯にいる可能性だってあるだろ?」
「そうだな。灰場が殺されて過敏になってるに違いない。桃岬、実際こうやって黒崎たちと合流することは、実現性はあるのか?」
「うん…一応、考えた結果として可能性は高いと思うの。」
考慮した最も大きな部分は、やはり黄櫨と東原の存在だった。
黒崎と翠田、黄島は黄櫨たちと中学からの友人関係。
そして、黒崎・翠田・東原・灰場は小学校からの幼馴染だ。
「灰場くんの訃報を彩羽ちゃんたちがアナウンスで知ってる以上、何よりも最初に様子を確認したいと思うの。紅葉ちゃんや加世ちゃんも、灰場くんが死んで不安になってると思う…だから、休戦協定を結んでる私たちと合流しようっていうのは、十分考えられると思う。」
「3人のほかに一緒に行動してるのは、確か最上と水原だったよね?」
「も、最上が嫌がるんじゃないの?アイツ、昨日の夜も私たちクロ側に敵意むき出しって感じだったし…」
「そこまで意固地じゃないと思うけどね。状況が状況だし。」
檜皮は交差点の左右を確認しながら、ちらりと黄櫨の様子を確認した。
先ほど渋染から受けたダメージは、ほとんど後遺症もなく回復しているようだった。
「(けど、東原の精神状態はまだ良くはない…早いところ翠田たちと合流したほうがよさそうだね。)」
「おーい、お前ら。寄せ集まってどこ行くの?」
ふと、どこからか声が聞こえてきた。
東原が「きゃっ」と小さく悲鳴を上げ、朽葉がびくっと身をすくませる。
「おーい、こっちこっち。」
頭上から声が聞こえてきて見上げると、そこには屋根の上でしゃがみこんでいる象牙の姿があった。同じ「クロ」陣営、それも緊張感のない彼の顔を見て、全員の警戒心が薄れる。
「アンタこそ何やってんのさ、そんなとこで…」
象牙が「よっ」と掛け声を上げて屋根から飛び降りる。
「何って、お前たちと一緒だよ。お前らは監視カメラ壊し、もうやんねーの?結構楽しかったのになー。」
「私たちは、遊びでやってたわけじゃない。」
「そうなの?麹塵だけたまにまだやってたから、ストレス発散でやってるんだと思ってた。」
「なるべく私たちの動きを監視できないようにしようと思って…象牙くん、ずっと1人で行動してたの?」
「いんや。朝はリと一緒にいたよ。それから、一瞬だけ蒼山とも会ったなぁ…それからは屋根を伝って移動してたから、お前らや他の奴らを見てはいたけど、会って話したりはしなかったよ。」
象牙との思わぬ遭遇だったが、桃岬はこれを機に知っていない情報を聞き出そうと思い立つ。
「ね、学くん。ずっと屋根を伝って移動してたなら、遠くの様子もある程度見えてたんじゃないの?今日この島で起こったこと、何か知ってたりする?」
「んー?起こったことって?」
「わっかんねぇ奴だなぁ、誰が誰を殺したのか、そういう情報だよ!目撃してねぇのかって話!英雄の敵が誰か、確認をだな…」
補足を受けて、象牙はようやく質問の意図を理解する。一瞬苦虫を嚙み潰したような表情をしたかと思ったが、すぐにすらすらと話し出す。
「まー、知ってることは知ってるよ。暇だったし、音がするところにはひとしきり見物に行ってたから。」
「それじゃ、順番に行こうか。」
2日目で殺されたのは、勿忘、灰場、縹、枝野、リの5人。そのうち4人が「シロ」陣営で、「クロ」陣営はリの1人のみである。
「勿忘を殺したのは、誰か分かるか?」
「そりゃあ分かる。だって俺の目の前で殺されたんだからよ。殺したのは蒼山だよ。」
「アイツか!クソッたれ、罪のないやつを殺すなんて許せねぇやつだぜ!」
「いや、むしろあいつは俺らのこと助けてくれたんだって!あのオカマが俺らに襲い掛かってきたんだから。蒼山は俺の命の恩人だぜ。」
「オカマ」というワードはふさわしくない…といつもなら象牙のことを窘めるべきなのだろうが、今はそんな余裕はない。桃岬が切り出す前に、麹塵が「早く続けろ」と急かす。
「それで、灰場を殺したのは?銃声が聞こえたタイミングからして、鬼銅だと予想してたんだが。」
「あー、たぶんそれも蒼山。直接は見てないけど、枝野達と蒼山が揉めてんのが聞こえてきたから。」
「そっか、蒼山くんが…」
「あと、縹も誰が殺したのかはわかんねぇ。けど、枝野を殺したのはたぶんだけど鬼銅っぽい。銃で撃ち合ってる音を頼りに見物してみたけど、最終的に枝野がぶっ倒れてたから。」
枝野を殺害したのは鬼銅瞬。その事実を改めて確認した時、8人の表情が曇った。
このゲームのルールに則るのならば、今の状況は「クロ」陣営は優勢になっているといえる。
ゲーム内で殺人を行ったのは「クロ」陣営の3人のみ。このままゲームが進んでいけば、
勝ち残るのはクロ陣営であると考えるのが自然だ。
「けど…私たちだけ生き残るなんて、そんなの嫌だよ。」
「分かってる。こんな風に、向こう側の思い通りに行くのは私も嫌。早く合流しましょ。私たちの気持ちも、あっちに伝えないと。」
黄櫨は桃岬の気持ちを即座に汲んでくれた。朽葉は若干乗り気でない様子だが、全員が頷いてみせる。
「ん…よくわかんねぇけど、お前ら鬼銅のこと怖がってんのか?だったら多分心配ないぜ。だって、さっき萌葱が鬼銅と話をしてたから。」
「えっ…?」
萌葱海斗が鬼銅瞬と接触していた。
それは桃岬の思考を停止させるには十分すぎる情報だった。
「いや、けど、そんな…そんなの、あり得ないんじゃないかな?だって、萌葱くんはシロ陣営で…」
「だから、鬼銅のことをやっつけようと思ったんじゃねーの?」
「じゃあ何で鬼銅も萌葱も死亡アナウンスが流れてないんだよ、間抜け。」
麹塵が辛辣な言葉をこぼす。
「おい、そう聞いたなら雲行きが怪しくなってきたぞ。シロ陣営の萌葱が鬼銅に接触を図るとしたら…何か画策してると考えるとしか思えない。」
「けど、あの萌葱が…何か考えがあるんだと考えたほうが自然じゃない?」
黄櫨はあくまで冷静だった。それは檜皮も同じ。萌葱という人物像を考慮した時、
彼がほかの生徒を出し抜いて何かしでかすような人物には思えなかったからだ。
「ねえ象牙。萌葱は鬼銅と1対1で話し合ってたの?」
「いや、誰かと一緒にいたと思う。あれは海松じゃねぇのかな?」
「だよね。初日も縹と海松の3人で行動してたから、たぶん縹が死んだことをアナウンスで聞きつけて動いた先で鬼銅に出くわしたんじゃない?それで、身の安全のために何か問答をしてたとか…」
「そう考えることも出来る。だが、萌葱のことを信用しすぎるのも禁物だ。私らはあくまで敵同士。その前提を見て分析する必要がある。」
「ま、まああの萌葱だしな…俺たちが考えも至らないようなこと思いついてるのかも…なあ、琴音ちゃん?」
「……」
「…琴音ちゃん?」
「えっ!?あっ、うん。そうかも。萌葱くんだしね。」
あり得ない。
そんな考えが一番最初に浮かんできて、そのあとすぐに黒い感情が浮かび上がる。
「あの萌葱くんが」。そんな言葉が、自分の心の中を蝕む。
一度抱いてしまった疑惑は、そう簡単に拭い切れるものではない。
「と、とにかく!今は白馬たちと合流しましょ。それから、出来れば松田たちの話も聞いておいたほうがいいかも―――」
その時、象牙があからさまにひきつった顔をした。
「お、お前ら何で敵と合流しようとしてんだ?」
「そうも言ってられないんだよ。1人でも多く生き残るためにも、残されたみんなで結託していかないと。象牙も一緒に行こうぜ、俺たち今から白馬たちんとこ行くんだ。」
「じ、冗談じゃねーや!お前ら知らないからそんなこと言えるんだ!知ってるか?リのこと殺したのは松田たちだぞ!」
新たな証言。心の休まる時間がない。
朽葉はヒステリックに声をあげる。
「中止よ、中止中止!やっぱりあいつらも私たちのこと殺すつもりじゃない!」
「リが何か仕掛けたんじゃないの?それで、やむを得ず殺してしまった可能性は?」
「そんなんじゃなかったよ!確かにアイツのこと俺も嫌いだけど、ただ喋ってただけなのに新田が弓矢でぶっ殺したんだ!あいつらに会うなんて嫌だぜ俺!」
「どうしよう、琴音。」
黄櫨の気持ちは汲んでやりたい。東原の精神も不安定なままだ。
黒崎たちとの合流は、彼女たちに安心感を与える材料になることは変わりない。
「だ、大丈夫。少なくとも紅葉ちゃんたちとは、休戦協定を結んでるんだから。松田くんたちのことはとりあえず、後回しにしよ。どっちにしたって、このままの状態が続いてもお互いにいい結果になったりはしないよ。」
「げぇ~~…俺は嫌だかんな。行くならお前らだけで行けよ。俺はいいや。」
「それじゃあ、お前にカメラ破壊を任せたい。屋根を飛び移れるんなら、私たちが漏らしたカメラも壊せるかもしれない。」
麹塵がそういうと、象牙はあっさりと「OK」と二つ返事をした。
「いいよ、カメラぶっ壊すの俺は楽しいし。けど、お前らも殺されないようにしてくれよ?だって、俺たちが出来るだけ多く生き残らないと勝てないんだろ?」
「じゃなくて、どっちかが全滅にならないと参加者全員死ぬんだよ。」
檜皮の忠告はもうすでに耳に入っていないようだ。象牙は「そんじゃ」と手を振ると、そそくさとどこかへ行ってしまった。あそこまで楽観的な彼を見ていると、この状況だと逆に羨ましく思ってしまう。
「問題を解決するはずが、問題が増えた気分だ。」
「だね。萌葱のことと、松田のこと。」
麹塵と檜皮は顔を見合わせた。それとほぼ同時。誰もが思ってもみなかったアナウンスが、島に響いた。
「湾田山吹、死亡!湾田山吹、死亡!」
※※※
PM.3:34
リの遺体は、一本道の真ん中に放置したままになっている。
「その方が敵に対してのけん制になる」という新田の発案だった。
立ち去る前にリの身体を調べてみたとき、ポケットの中には毒物の説明が書かれた小瓶が見つかった。結果的には新田が主張した通り、リはこちらに罠を仕掛けていた可能性が高かったわけだが、奥田は「結果の問題ではない」と一切譲らなかった。
天王寺たちの制止で何とか収まったものの、公民館廃館の中は、シンと静まり返ったぴりついた空気が流れていた。1時間ほど前に聞こえてきた湾田の訃報も、その重苦しい雰囲気に拍車をかけていた。
「な、なあ奥田。いい加減に機嫌直せって…」
「煉瓦くん。君は新田くんのしたことが正しいことだと思うのか?僕はああして遺体をないがしろにしていることも納得してない。はっきり言わせてもらうが、この状況は間違ってる。狂ってるといってもいい。」
「このゲームに巻き込まれた時点で狂ってる。狂った状況なら、俺たちも狂わなくちゃ生き残れない。奥田、お前の言ってることは綺麗事だ。俺がリを射殺してなきゃ、今お前はこうして生きてないんだぞ。」
「それは結果論だ。けん制して追い払うことも出来たはずだ。毅然と対応して口にしなければ何の問題もなかったはずだ。君の言い分は、自分の殺人を正当化するための言い訳に過ぎない。」
「…どういわれようが、俺は自分が間違っていたとは思わない。」
「2人とももうやめるんだ。過ぎたことをいつまでもいがみ合っていても仕方ない。」
「過ぎたこと…?」
どちらの言い分も一理ある。天王寺はそう思うがゆえに、この問答に口出しは出来なかった。
「(松田さんや新田さんの言うことは合理的…あくまでゲームを勝ち抜くことを考えるなら、リさんを殺害したことを咎めることは出来ない。でも―――)」
「松田くん、君は人の命を軽視していないか?僕たちは神でもなんでもない。人の生き死にを左右する権利なんて、持ち合わせているはずもない。」
「そんなことはわかってるよ。」
「分かってない。君が「過ぎたこと」と割り切った命は、家族に育まれ、周囲の人間に良くも悪くも影響を与えたかけがえのないものだ。替えの利かない、たったひとつの命だ。」
「それは俺たちの命も同じだ。」
「そうだ!だからこそ―――」
「それでも優先順位をつけることは必要だろ。」
新田もまた、ひるむ様子はなかった。煉瓦はおどおどとしていて頼りなく、緑黄園と天王寺のことを交互に見た。
「お、おい止めなくていいのかよ…?このままやらせとくとマズイんじゃ…」
「いいえ。必要なことです。ここで思いのたけをぶつけておかないと、ダメなんです。」
そうでないと、決戦の時に必ず足枷になる。天王寺はそう確信していた。
「優先順位が必要とは、どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。見ず知らずの人間と身内の人間、優先順位がつくのは当然のことだろうが?」
「今はみんな平等なクラスメイトの命だ。」
「俺はシロの命をクロの命より優先する。当然のことだ。」
「僕も新田くんと同じ意見だ。決してみんなの命を軽視しているわけじゃない。だけど、全員を救うことは出来ないんだ。それは奥田くんだってわかってることでしょ?」
「それは―――」
「確かに新田くんのしたことは少し過激だったかもしれない。けど、結果的にはリくんは僕たちを貶めようとしていた。わかってる。わかってるよ。あくまで「結果論」だ。だけど、結果は何よりも大事だよ。新田くんは僕たちを危険から救ったんだ。」
「…君たちは、どう思ってるんだ?」
奥田が矢印を向けたのは、傍観を貫いていた天王寺たち。
「私は松田さんと新田さんに同調します。結論から言うと、今時点だとその意見は変わりません。」
きっぱりとした口調。自分自身の意志もここで明確にしておかねばならない。
「前提として「鬼銅さんを止めるまで」、ですけど…私は、桃岬さんや黄櫨さんたちと一緒に生き残ることを諦めてません。でも、鬼銅さんと渋染さんを止めないと何も前に進まないことは事実だと思うんです。それから、他にゲームに積極参加している人たちも…」
全員助けることは出来ない。非情だが、受け入れなければならない現実。
「全員で助かる」というのなら、その道はすでに潰えているのだ。今まででもう15人もの生徒が犠牲になっている。しかもそのうち、分かっているだけでも半数以上が鬼銅と渋染の2人によって命を奪われているのだ。
「奥田さん、おんなじ気持ちなんです。私も、こんなことしたくない。でも誰かがやらなくちゃいけないんです。そうだとしたら、私は自分で切り開きたい。誰かを頼って震えてちゃ、ダメだと思うんです。」
「…仮にそうやってこの島から出られたとして…君は胸を張って生きていけるのか。」
「分かりません!だけど、やらずに後悔はしたくないです!」
奥田の視線は緑黄園と煉瓦に移ったが、2人は結局俯いたまま、答えることは出来なかった。その沈黙を穴埋めするように松田が言葉を紡ぐ。
「現実問題、もう始まってしまってるんだ。理不尽かもしれない。だけど、実際に起きてしまった以上動くしかない。君もそう思ってくれたからこそ、僕たちについてきてくれたんだろ?」
「それは違う。」
今度こそ、きっぱりと拒絶の言葉がこぼれ出た。
「松田くん、僕は君のことを危うい存在だと思っていた。トリガーが外れれば取り返しのつかないことに踏み込んでしまいそうな、そんな危うさ、向こうみずさが。」
「…」
「灯台で話したこと、覚えているかい?僕は君の考えは素晴らしいことだと思う。君は今この瞬間も、生き残るための順応をしようと必死になってる。それは、この状況下においては素晴らしいことだ。そして…僕には出来ないことだ。」
だからこそ、彼らにとってのブレーキになれるように。
誰かが足を踏み外しそうになった時、受け止めてやれるように、立ち止まらせてやれるように。
「…君たちを身勝手な人殺しにしない為に、僕は同行したつもりだった。だって、君たちは大事な7組のクラスメイトだ。死んでほしいわけがない。だけど僕にとって、リくんも同じくらい大切で、かけがえのない命だったんだ。僕はクラス委員なんだ。みんなのことを、同じように心配するんだ。現実を見ろと君は言うけれど、現実はやってみないと分からないじゃないか。」
それだけ言い切って、立ち上がる。
「僕はここを出る。君たちと意見が一致しない以上、ここにはいられない。君たちにとってもリスクを背負うことになるだろうし、僕はそれを望まない。」
「奥田くん…!」
「天王寺くんのいう通りだ、緑黄園くん。僕はこの集団の士気を下げかねない。君たちがやろうとしていることは、視点を変えれば自己犠牲の素晴らしいものなんだろう。だけど…僕は自分が人殺しになる覚悟が…非情さが、ない。」
言い残して立ち去ろうとする奥田の前に、新田が立ちふさがった。
「これを持っていけ。」
そう言って、小さな短刀を差し出す。大きく意見の衝突していた新田だったが、その表情と声は穏やかだった。
「勘違いするな。俺だって殺しをするのに躊躇がないわけじゃない。俺のことを糾弾してくれて構わない。だが、お前が俺のことをどれだけ軽蔑しようが、俺はお前のことを大事な仲間だと思ってるんだ。丸腰で外を1人で歩くのは、自殺行為だ。」
「…好意として受け取っておくよ。」
そう言って差し出された短刀を受け取ると、今度こそ奥田は歩いて行ってしまった。
依然オロオロとしている煉瓦は、全員の顔を伺うように視線を泳がせる。
「い、いいのかよ?本当に出て行っちまうぞ?」
「意見が割れた以上仕方ないだろ…お前もついていくなら今のうちだぞ、煉瓦。」
「なっ、なんだよ!?俺も実は邪魔者だって言いたいのか…!?」
「んなこと言ってない。流れでここに残ってるのだとしたら、お前が苦しいだけだって言ってんだ。」
「そ、それは…俺だって、今更ここ動くのはおっかないし…」
言いながら心配そうに窓の外を見下ろしたとき、煉瓦の動きがピタリと止まった。
かと思うと、今度は小刻みに震えだす。まるで発作を起こしたかのように、まるで何か、恐ろしいものを目撃したかのように。
「え、え、何で?何で―――」
「…なんだ、どうしたっていうんだ?」
しびれを切らしたように新田が窓の外を見ると、同じように動きが止まる。
外をのぞき込んでみたとき、緑黄園はその違和感に気が付いた。
「リくんの死体が…消えてる。」
奥田派と松田派、
自分ならどっちの立場になるのかな~…
いや、煉瓦の位置に落ち着きそう。




