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シロクロゲーム  作者: 竹取翁
14/44

1日目ー⑩ 探り合い

後進遅れて申し訳ありません。諸事情で少し落ち込んでおりました。ですがきっちり更新はしていきたいと思ってます。これからもよろしく。

AM.0:00


 枝野が持っている武器は、その場にいる全員を固まらせるには十分すぎるほどの威圧感を放っていた。見知ったクラスメイト、そうであっても戦慄する。加えて、彼女の胸についているのは「シロ」のワッペン。先ほどまで嬉々として饒舌に話していた蒼山も、口ごもって枝野のことを見つめていた。


「大丈夫、戦うつもりも傷つけるつもりもないんだってば。だから、そんなに身構えないでよ。」


「…はん、疑わしいもんだな。じゃあ何でそんなものを持ってる?ただ護身したいだけっていうなら、そこらに落ちてるナイフで事足りるはずだ。」


「そうかもね。だから、これは護身用じゃないって言っておく。」


蒼山は依然として疑わしそうに目を細める。一方で、黄櫨にとって枝野との接触は思わぬ幸運だった。あっちから敵意がないことを示しながら、何かを伝えようと来てくれた。向こうの事情を、紅葉たちのことを聞くチャンスかもしれない。


「それで…どうしたの?何か話があってここに来たんでしょ?」


「ああ、うん。そうだった。みんなに相談があってきたんだ。この銃はそのこととは今関係ないから。」


枝野はその場にちょっと腰かけると、声を潜めて話し出した。


「今夜、みんなで集まれないかな?島一番のビルの下に。これからのことで、ちゃんと話がしたいんだ。」


「さっきから話が堂々巡りなんだよ。どういう話をするのか、ここではっきりと説明しやがれ。」


「これからのこと、だよ。このまま2つに分かれて殺し合い続けることなんて、誰も望んでることじゃないだろ。」


「そりゃあ、願ったりかなったりの話だけど―――」


檜皮がそう呟くと、朽葉が「信用できないわ!」と口をはさむ。


「そ、それが罠だって可能性も、十分にあるじゃない!「敵意はない」なんて言っておいて、そんな銃を持ってたんじゃ説得力がないわよ!」


「そこの朽葉バカの言う通りだ。あからさまな罠だとしか思えねぇな。お前たち陣営が定めた位置に誘導されて、一網打尽にされる可能性だってあるだろうが。」


「それは…まあ、信じてもらうしかないな。他のみんなにもまだほとんど伝えられてない。さっき、象牙とリに会った。その前には牡丹に。全員に了承してもらえたよ。「シロ」の生徒とは――」


「牡丹に会ったの!?どこに?どこにいたの!?」


牡丹の名前に黄櫨は即座に反応した。ゲームが始まった3時間以上、大切な親友の1人は、今も1人で震えているはずだ。


「アンタらは…牡丹と同じチームだからね。教えてあげたいのは山々だけど、あいにく詳しい場所は覚えてないんだ。家の中で1人で隠れてた。外に出ることは断られた。けど、夜の集まりには来てくれるって言ってた。」


「どいつもこいつもバカばっかりだな…そもそも、声をかけているのが「クロ」陣営の奴ばかりってのが、そもそも怪しさ満載だ。それで信用されるとでも思ったのか?」


「ちょっと待ってよ、私は枝野さんがそんなことを考えてるなんて思わないし、何か怖いことにはならないと思う。」


「ああ?何を根拠に…」


「枝野は「夜に」集まろうと提案してきた…「今すぐ」ではなく夜に集まるんだ…意味があることだって思わないか?」


麹塵がそう言うと、蒼山は「ああ?」と怪訝な顔をする。しかしすぐに目を丸くすると、何かに気が付いたようにつぶやいた。


「そうか、「レストタイム」に集合を―――」


「うん、夜の時間は、お互いに戦いが禁止されてる時間帯…枝野さんは、その時間を狙ってみんなと安全に話をしたいと思ってるんでしょ?」


桃岬がそう尋ねると、枝野が頷いた。


「はーん、そういうことか…だが、結局集まることにメリットは感じねぇな。何の話をするのか知らねぇけど、俺たちがお前の言う通りに行くとは思わないことだ―――」


「…とにかく、一度集まってよ。出来れば、道中であった人にもこのことを伝えてほしい。全員が集まれればそれが一番いいけど、1人ではなかなか難しいから。」


「分かった。わざわざ話に来てくれてありがとうね。」


誰かが返事をする前に、檜皮がそう返答した。蒼山は枝野が本当に敵意がないことを察したのか、小ばかにしたようにその場を離れていった。


「アイツ、ちゃんと来るのかな?」


「来るだろう。本当は気になって仕方ないはずだから。自分だけ情報を得られないなんてこと、アイツが許すはずがない。」


「だねー。それで、浅葱ちゃんはこれからどうするの?」


雄黄が気を遣ったように枝野に声をかける。枝野は銃をしっかりと背負いなおすと、「私はもう行くよ。」と黄櫨たちに背を向けようとする。


「他のみんなにも、出来るだけこのことを伝えなくちゃいけないから。アンタたちも、出来るだけ他の子に伝えてくれると嬉しい。」


「ひとりで行くの?どうせやるなら俺たちと行こうよ。」


「いや…やめとくよ。見てる方(・・・・)も、違うチーム同士がつるんでるのを面白く思わないだろうから。」


枝野はそう言って、今度こそ1人で歩いて行ってしまった。桃岬が不安そうに家屋を見上げるが、檜皮が「聞こえてたでしょ、紅姫あのこにも。」と彼女のことを諭した。


「…私たちも行こっか。牡丹のことを探さないと。どこかに隠れてる、って言ってたけど…やっぱり心配だから。」


「だな、そうと決まればさっそく―――」


雄黄が動き出そうとした時、麹塵が彼の襟首をつかんだ。彼女の視線の先から、かさかさと何かが動く音が聞こえた。




※※※




PM.0:06


茂みから顔を出すと、見知った顔ぶれが立ち尽くしているのが見えた。麹塵が拳を構えたのをみて、萌葱はさっと手をかざして「やめろ」とだけ声をかける。こちらの姿を認識して、彼女たちの表情も変わった。


「萌葱くん…!」


「よう、朝ぶりだな。無事でよかった。」


「ひぃ!で、出た!最終兵器だ!熊殺しだ!!」


「雄黄、その噂は事実無根じゃあ。儂とてクマを素手では殺せん。畑に降りてきた熊を追い払ったまでよ。」


「いやだからそれで普通の人間認定されないから!」


萌葱に続いて海松と縹も姿を見せる。黄櫨たちは彼らの姿に安堵したのか、緊張を解いて歩み寄る。その中で、ひそかな視線が家屋の中から向けられていることに、萌葱はなんとなく気づいた。


「誰かいるのか?」


「ん?ああ…気にしなくていいよ。紅姫が隠れてるだけだから。一応言っとくけど、あそこの道は通らない方がいいよ。紅姫が電流流してるから。」


「電流?…なるほどな、そんな武器もあったのか。」


紅姫は「クロ」陣営で、ここにいる連中と同じチーム。様子から見ても、嘘を言っているようには見えない。つまり、少なくとも檜皮は俺たちのことを信用しているということだ。


「それよりも…お前ら、ここにいるのはあまり安全とは言えないぞ。ここは「グレー」のエリアだからな。お前たちの「安全地帯」は向こうの方角―――」


萌葱はそう言いながら、懐から地図を取り出した。


「あっ、それって―――」


「「シロ」陣営で地図を与えられたのは俺だった。見ろ、お前らの安全地帯は、ここからもっと西の方角だ。」


「い、いいのかよ?敵の俺たちにそんなこと教えて。」


「関係ない。俺にとっては別のチームだろうが、そんなのはどうでもいいことだ。」


「あ、えっと…大丈夫なの!こっちのチームで地図を持ってるの、私だから!」


桃岬がそう言って、ポケットからはみ出していた地図を引っ張り出す。それを見ると、縹が驚いた顔をした。


「こりゃあ驚いた。それならお前ら、なぜこんなところをうろちょろしとるんじゃ?」


「まあ、もろもろ事情があって。そういうアンタらは、何でここにいる?地図を持っていて「グレー」ゾーンをうろついてるのは、そっちも同じだ。」


麹塵が若干訝しむようにそう尋ねる。やはり、どれだけきれいごとを言っても敵同士。こちらに疑念を抱くのは仕方のないことだろう。


「それは…」


「調べたいことがいくつかあったからな。それから、武器も仕入れておきたかった。何か不測の事態が起きた時に対処する必要がある。」


正直に打ち明ける方が信用を勝ち取りやすい。それに、内野にいる面倒なやつにもブレーキをかけることが出来る。もちろん、隠しておきたいところはしっかりと隠しておきながら…こちらのカードを残しながら。


「何を調べてたんだよ?」


「萌葱が、殺された連中の様子を見たいと言いおってな。こうして「グレー」ゾーンであった連中に地図を見せた方が効率がいいという判断だった。」


「まあ、そういうわけだ。」


その後、一瞬の沈黙が続く。クラスメイトが二分化されたことで、自分たちの置かれている微妙な立ち位置が浮き立ち気まずい空気が流れていた。


「えっと…そうだ、さっき枝野さんがいたみたいだね!」


「そ、そうそう!話の内容はさ―――」


「そこで聞いていた。説明しなくても大丈夫だ。」


雄黄が説明しようとするのを、萌葱が遮った。再び重い沈黙。それを断ち切ったのも、また萌葱だった。


「…枝野がどういう話をするつもりなのかは分からないが、とにかく俺たちも夜に集まってみようと思う。島のビル…だったな?積もる話はそこでしよう。今ここで話すには、お互いに気が張っている部分が多いだろう。」


「そ、そうね。私たちもちょっと疲れてるところもあるし…気を遣ってもらってゴメン。」


黄櫨は自然と謝罪していた。萌葱と話していると、常に自分が間違っていて、その間違いを諭されているような気になってしまう。なぜなら、これまで見てきた萌葱海斗という男は常に正しかったからだ。


「それじゃ、俺たちはこれで。もしお前たちさえよければ、「シロ」の連中を見つけた時に地図を見せてやってくれ。危険人物には近づかないに越したことはないが…今のところそんな奴はいないと思うから。」


萌葱が踵を返して、縹もそれに続く。海松が小さく手を振って、先に歩き出した2人について行くと、桃岬が小走りで3人の後を追った。


「も、萌葱くん…!」


「桃岬…どうした?」


「あ、いや、なんていうか…ごめんね?麹塵さんも、別に悪気があってああいう態度を取ったわけじゃないと思うの。ただ、やっぱりこういう状況だから警戒して―――」


「わかってるさ。むしろ、そういうやつが1人か2人いた方がいい。さっきの頼みも、出来る範囲でいい。お前も苦労するだろうが、頼む。」


「…っ、うん……」


萌葱たちの背中を見送りながら、桃岬は拳をぎゅっと握りしめた。


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