表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/74

第10話 二本の妖刀

 隼人から報せを受けた十蔵は、深刻な表情で思案している。


「――まことに怨鬼の妖刀か?」

「刀で魔剣に属するものと言えば妖刀のみ。他に妖刀はあれど、素人でも斬れ味を保ってられるのは〈怨鬼〉が打ったものぐらいでござるよ。拙者ら〈怨の一族〉は封じた〈怨鬼〉の力で、それらを破壊――この世に残す、二本を始末することが役目でござる」

「今もなお破壊できておらぬ、〈恨〉と〈滅〉か……。しかし、あれらは城に保管され、仮に持ち出せても、琴が何かしら報告をしてくるはずだが」

「琴殿の管轄は商業都市〈ワジ〉の港方面でござる。船を寄せるだけなら岸辺も、目が届かぬ場所などいくらでもあるでござるよ。それに以前、刀が持ち出されたと言う事件もあったでござるし」


 ふむ、と十蔵は宙を見つめる。

 するとそこに、後ろからシェーシャが「いいかしら」と、障子の枠をノックしながら現れた。


「申し訳ないけど、立ち聞きさせてもらったわ。――ござる、アンタさっき魔剣の持ち主を『エルフの剣士』って言ったわよね?」

「そうでござる。〈狂剣士〉と名乗っているらしいでござる」

「おかしいわ。エルフはそんなダサい通り名は付けたがらないし、何より闇に染まった武器とか持ちたがらないもの」


 心の腐食は恐ろしく、オークになるのを懼れる。――と、長い寿命と歴史による経験を語る。


「ダークエルフなる、戒律を持たないなもいると聞くでござる」

「あいつらはただの日焼けよ。南の島に逃避・バカンスに行ったのが始祖なんだし。ここは誰かと決めつけず、まずそいつが何者か調べてからのがいいと思うわ」


 力を誇示するように魔剣を振り回すなら、必ずどこかで見つかる。

 シェーシャが言うと、十蔵は腕を組みながら頷いた。


「確かにその通りだ。ちょうどカシュヤパが琴の屋敷におるし、魔剣の類いの留意点などを聞いておくよう、琴に伝えておこう」

「堅物な父とアンタの妹が? ……ああ、輸送の経路とか徴税についての協議とかあるわね」

「それもあるが」


 十蔵の珍しく楽しげな表情を浮かべた。


「絶縁状態と言えど、やはり娘の寿(ことほ)ぎは喜ばしいものだ」


 まさか、と二歩、三歩と後ずさりしたシェーシャは、


「嘘でしょ……?」

「突然の報せに、あちらも大慌てなようだ。よかったな」


 突如としてくるりと、猛ダッシュで屋敷を飛び出した。

 頭の中で『余計なことするなクソ忍者ッ』と、呪いながら――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ