第2節 【皇女様の願い】
今回は少し短いですが良ければどうぞ。
まだこの国が美しかった時代、壊す事しか出来ない男と人々から忌み嫌われた女がいた。
女の名前はミーシャ、その時代最も繁栄していた皇国の皇女であり、常に民のことを考えて行動していた。
しかし彼女にはこの世界で力の源である聖力を封じ込める能力を持っていたが故に、人々から恐れられていた。
ある日、ミーシャは一人の男と出会った。
男の名前はルキウスといい、その時代一番の聖力の持ち主だった。
ルキウスは優しく、そしてミーシャに唯一、普通に接してくれる人でもあった。
ミーシャはそんな彼に徐々に惹かれていった。
「どうして貴方は私を怖がらないの?」
「君みたいな優しい人をなぜ怖がる?」
「貴方はおかしい人だわ」
「そうだね。確かに普通ではないかな」
「ねぇ?貴方はこの国は好き?」
「・・・・。どうかな」
「嫌い?」
「嫌いではないよ。ただこの国は少し寂しい」
「そう・・・。私はこの国が、いえ、この世界が
大好きよ」
「君がこの世界を愛しているなら僕も、この世界
を守ってみせるよ」
ーーなら私のそばでずっと一緒にーー
それから数日後、彼は姿を消した。
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「リアンナ?どうして・・・」
「貴方は腐敗の王なの?ルド」
「この力を見た後じゃ信じられないかもしれない
けど違うんだ。僕は腐敗の王じゃない」
「私は、貴方を信じると誓った。でも今は貴方を
信じる事は出来ない・・・。」
「・・・そうだね。君の気持ちはわかるよ」
「でも今、救われたのも事実よね」
「この力はひどく醜いだろう?こんな力を持って
人々を救いたいだなんて夢のまた夢さ」
「確かにこの国を滅ぼした力と同じ。だけど貴方
はその力を人々のために使った、そうでしょ
う?」
「・・・・」
「その力を見たときは正直、信じられなくなった
わ。でも今はその力ではなく貴方を、貴方の心を
信じるわ」
「ありがとうリアンナ」
リアンナはそういうと、少女の方に振り返った。
「これ以上、無益な争いはやめにしましょう」
「この世界を壊した男が目の前にいるのにやめる
わけないでしょ!」
少女はルドナフを睨みつけそう言った。
「確かにこの力は腐敗の王と似てるけどこの人は
そんな事ができる人じゃない」
「そんなのわからないでしょ!本気で殺しにいけ
ばその男も本性を現すかもしれない!」
今の少女に何を言っても聞きそうにない。
だがそんな少女の後ろから、一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。
「ナリア。やめなさい」
「ラルナーク様!?どうしてこんな所に!」
少女は後ろからきた女性を見た瞬間、我に返りすぐに頭を下げた。
「ナリアがとんだご無礼をしましたね皇女様」
「貴方は・・・?」
すると女性は一礼し、こう名乗った。
「私は、妖精族の女王をしているラルナーク・テ
ィターニアと申します」
「何故、貴方のような方がここに?」
「風の妖精たちから聞いたのです。ナリアが人間
たちと争っていると」
「そうだったのね」
「ええ、それで来てみればナリアが皇女様に粗相
をしているのが見えて止めに入った次第です」
そんな中、ナリアが口を開いた。
「ラルナーク様!ご無礼を承知で申し上げます」
そう言うとナリアはルドナフの方を指差してこう言った。
「この男こそ、我々が倒すべき腐敗の王です!」
するとラルナークは少し間を空けて言った。
「彼は腐敗の王ではありませんよ。私は一度だけ
本物の腐敗の王に会ってますから」
ラルナークはそう言うと三人を見て微笑みまた口を開いた。
「少し、昔話をしましょうか」
まだまだ続きますよ!