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「そう未来!なんかすごいリアルな感じだからさ、予知夢じゃないかなって思って。昨日見たやつも。」
「へー?」
「普通の夢とは違くてさ、マジですっごい予知夢感がハンパないんだよね!もうガンガン来る感じ。」
「…何が?」
「予知夢感が。」
「なら町子の能力それじゃね?」
「!」
「ハニワみたいな顔してんよ。」
「かなり安眠妨害なんだけどー!やだ~!」
いつものように下らない話をしていたら、すっかり話が進まずに二人はそのまま教室に戻る事になった。
放課後になり、真奈美と町子はなるべく帰宅する人数が多い高校生グループに近づき、同じペースで歩き出した。
「男子が5人。」
「こんだけいれば手出さないでしょ~。」
自分の身を守るため、二人はなるべく襲われない状況になるよう注意していた。
「毎日気ぃ張るのしんどいね。」
「あと2カ月我慢だよ。」
「なんだっけ?相手の探知能力?がなくなる的な事言ってたよね。」
「ビミョーに違う。なんか能力発芽した直後の人を探知できる能力って言ってたよ。2カ月ぐらいで発芽直後じゃなくなるから探知が難しくなるって事だったよね。」
「そうそう、そんな感じだった。あれ、なんで発芽って言うんだっけ?聞いたっけ?」
「んーなんだっけ、何か種とか言ってなかったっけ?昨日は興奮?緊張?状態でササッと説明されたからよく覚えてないやー。」
「あっそうそう!確か能力の種みたいなもんを植え付けられて、それが発芽した人を探知する能力がある人がいるって言ってたね!植物に例えて発芽って言ってたのかな。」
「ねーなんか発芽する人は少ない、とかも言ってたよね。」
「ま、今度詳しく教えてくれるって言ってたし、そん時にちゃんと聞いとこう。」
駅に着き、真奈美と町子は別れを告げてそれぞれ別の電車に乗り、地元の駅から家までの間も一人にならないように気を付けて帰宅した。
数日が経ち、日が落ちる時間が早まり朝晩と日中の気温に差が出るようになった仲秋の候に、町子は学校に向かう電車の中でぼんやりと考え事をしていた。
今朝もまた夢を見た。
おそらくこれから起こりうる未来の出来事であろうそれは、町子の思考力を奪うのに十分な衝撃、恐怖、とまどいを与えた。
しかし、町子が今までに見た予知夢であろういくつかの夢は、いまだ一つも現実のものとなった夢はなかった。それが唯一の救いとなって不安に悩む町子を支えていた。
自分の見た夢はまだ現実に起こると決まったわけではないし、望まない結果は変える事が出来るかもしれない。ただの取り留めのない夢であってほしいと町子は願っていた。