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次の日の朝、真奈美と町子は朝早く学校で待ち合わせをし、あまり人が来ないような場所で話合っていた。
「朝大丈夫だった?」
「いつもの時間よりちょっと人は少なかったけど、まぁ大丈夫だったよ。」
「昨日のさ、あの気の弱そうで軟弱そうな男の人が言ってた話本当なのかな~。」
「…軟弱ではないと思うよ、つーか一応恩人なんだし名前で呼びなさいよ。」
「え~と、オケ屋さん。」
「野田口さんだよ。全然ちげーよ。」
そういえば真奈美は軽い男嫌いだったなと町子は思い出していた。
昨日気の弱そうな男野田口に助けられた後も真奈美はまだ何かに警戒しているようだったが、あれはもしかして野田口に対して警戒していたのかもしれないなと考えた。
町子は、まぁその真奈美の男に対する警戒心のおかげで不審な男達に早めに気づけたんだしなー、普段は普通に男とも喋ってるから忘れてたけど、まだ治ってなかったんだ。つーか男嫌いって治るの?と、一瞬考えこんでいたのだが、
「で、町子は思い当たる事あった?」
と、真奈美に話しかけられ現実に引き戻された。
「え?あ、ごめん聞いてなかった。」
「あ!あたしも何も言ってなかった。」
「…。」
「いや、昨日野田口さんが言ってた事でさ、なんか能力が発芽したら襲われるって言ってたじゃん?猫を虎みたいのに変えたりシャボン膜張ったりとかさ、あたしはそういうものが使えるようになった感じはないけど町子はどうかなって思ってさぁ。」
「言葉にしてない部分が長すぎるでしょ。ってかシャボン膜ってなに?野田口さん遮断膜って言ってたよ?」
「シャボン膜のがぽくない?」
「ぽくなくはないけど。…まぁ、能力にすぐに気づかない人の方が多いって言ってたしそのうち分かるんじゃない?」
町子は冷静にズレそうになった会話を戻した。
「ホントにそんなの使えるようになってんのかな~。あたしお金を生み出す能力がいいな!」
「偽造紙幣?犯罪じゃん。」
「そっかー、じゃあ金の延べ棒を生み出す能力!」
「錬金術師?あたしの分もよろしく。」
「町子はどんな能力がいい?」
「あたし~?選べるんだったらいいけどさー、なんの脈絡もない能力が発芽するんでしょ?」
「そんな感じで言ってたね。」
「ん~変なのだとやだなー。あ、そういえばまた夢に真奈美出てきたよ。」
「え?前髪伸びてた?」
「伸びてた。たぶんもうちょっと先の未来だったんだね。」
「え、未来?未来見たの?」
町子は真面目に言っていたが、真奈美は冗談だと思い笑いながら町子に聞いていた。