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「行け!」
その途端、薄茶色の猫がグンと大きくなり虎のような獰猛な獣に変化し、二人に襲い掛かってきた。
「!」「っ!」
真奈美も町子も驚き過ぎて声も出ない。
襲い掛かってくる獣を避けるため、直前に足を向けていた横道に倒れこむように逃げ込み、態勢を崩した真奈美を町子がひっぱりながらも前に進もうとした時、いきなり後ろから腕をつかまれグイッ!と引っ張られた。
尻もちをつき声を上げようとした二人だったが、突然目の前が灰色一色になりそれからすぐにシャボン玉のように透明で所々虹色に光る膜のような物が灰色を塗り替えて目の前を覆っていた。
二人は呆気にとられポカンと口を開けていた。
目の前が透明の膜に変わり周りが見えるようになったが、呆然としているうちに先ほどの獣と男二人が目の前を通り過ぎていった。その時真奈美は急いで後ろを振り返った。
真奈美が見たのは通り過ぎた男たちの後ろ姿を緊張した面持ちで見る気の弱そうな男だった。
一方通り過ぎる男二人を見ていた町子は、道の先で虎のような獣が小さくなり薄茶色の猫に戻る様子を見ていた。猫は元に戻るとキョロキョロと辺りを見回し男達には目もくれず別の方向に歩いていった。
町子が後ろを向いた時、気の弱そうで病弱そうな男が二人に向かってまだ静かにしているようにと言った。
真奈美は町子と顔を見合わせた。お互い興奮し強ばった顔をしていた。町子はまだぎゅっと真奈美の腕を握っていた。
しばらくして、気の弱そうで影薄そうな男がスマホを取り出し誰かと電話をし始めた。
「…はい、無事に救出しました。…そうです。今近くには…?」
「…わかりました。ありがとうございます。」
気の弱そうで幸薄そうな男の電話の様子を聞き、どうやら助けてくれたらしいと町子はほっと息を吐いた。
が、真奈美は男を警戒するように鋭い目で見つつ、すぐにも逃げ出せるように態勢を整えていた。
「お待たせしました。とりあえず、先ほどの彼らはもう近くにはいないそうですよ。」
電話を終えた気の弱そうで繊細そうな男が話し出した。
「あの、私達はなんで?えっと、何が…ってゆうかあなたは助けてくれたんですか?」
「はい、私はあなた達を助けに来ました。ちょうど駅の近くにいたのですぐに来る事が出来てよかったです。」
町子は今起きた事全てについて聞きたかったが、とっさに言葉が出てこずしどろもどろになりながら男に尋ねた。