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「っはぁっはぁ!」
町子はどこだかわからない建物の中を必死に逃げていた。
(早く、逃げないと!)
もつれる足を必死に前に出し、建物の廊下を走る。横には真奈美がいた。真奈美も必死に走っている。階段を見つけて町子はすぐに下へ降りようとしたが、同時に真奈美は上の階段を登ろうとしていた。
「真奈美!上は逃げ場がないよ!」
建物はそんなに大きくなく、せいぜい4~5階程度の大きさのようだ。追ってくるのは一人じゃなく複数いるようだから、上に追い詰められたら逃げ場がないと瞬時に判断した町子は、真奈美と共に急いで階段を駆け下りた。
(息が苦しい、でも立ち止まれない!)
下に降りる階段をとにかく早くと2段3段、4段飛ばしで飛び降りてようやく1階にたどり着いた。
階段のすぐそばは外に面した物置場のような場所になっているようだった。外は薄暗く少し雨がふっている。向かい側にも同じぐらいの大きさの建物があった。二人は足を止めて崩れるようにうずくまり息を乱しながら周囲を窺った。
「っはっは、外に出たら、私達見つかるかもっ。」
「っはぁ、どこから見てるか、はぁ、分かんないしね。」
「でも、ここでじっとしてるうちに確実に追いつかれてる。」
二人は焦る気持ちと荒い息を落ち着けて、次にどうするべきか考えていた。
「とりあえずっ、この敷地から出たいから、っふぅ、建物の陰に隠れて移動しよう。」
町子と真奈美は今隠れている建物を壁伝いに移動し、出口に近づいていった。
あともう少しでここから脱出できる!という時にいきなり真横から男が飛び出して二人に襲いかかってきた。
「っあ!」
「真奈美!」
ガタン!
町子の体を衝撃が襲い、明るい日差しと大量の人の声が聞えてきた。町子は人波に揉まれながら駅の改札口を通り、通いなれた高校へ向かう道をぼんやりと歩いていた。
町子は先ほど電車の中で今朝見た夢を思い出していた所だった。
(あの時、どうすれば良かったんだろう。どうしていたら二人とも無事に…。)
ただの夢ではあるが、とてもリアルで本当に体験したかのような気になり、朝起きた後もしばらく息を乱して呆然としていた。
あそこはどこだったのか、なぜ追われていたのか。町子は授業中も気づけばぼんやりと今朝の夢の事を考えていたのだった。