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残暑の折、灰色の地に揺らめく熱気に蒸し焼かれ、吾れ涼やかな憩いを乞い願う
夏休みが終わり始業式を迎えて数日が経ったまだ暑さ残る日に、怠い体を引きずりながら真奈美は高校へ向けて歩いていた。
とても休みたい気分だったが、先ほど母に早く学校に行きなさいと背中をぐいぐい押されて家を出てきたところだった。
むわっとする暑さの中で真奈美は、だって今日は星座占いも下の方だったし、夏休み明けで朝がきつくて超眠いし…学校なんてめんどくさい、と心の中でぶつぶつと不満を漏らしていた。だが、それでも外を歩き出し通勤通学の風景を眺めているうちに、自分も遅刻しないように少し早く歩こうという思いが出てきた。
ようやく気持ちが上向いた真奈美が、歩くスピードを上げて電柱を避けると後ろから来た人にぶつかってしまった。
「あっすいません!」
「いえこちらこそすいません。」
真奈美はすぐにスーツを着た男性に謝っていた。
少しぶつかった程度だったので、男性は軽く謝ったあと先を歩いて行った。今の衝撃で眠さと怠さが一気に吹っ飛んでいった気分だった。
その後真奈美は冷房で冷えた電車に乗り3駅先の駅で降りた。高校へ歩いて向かっていると仲のいい友人の町子と出会った。二人は挨拶を交わし取り留めのない会話をしながら校門を通り抜けた。
「真奈美~、鏡貸して。」
「いいよ、はい。」
「ありがと。さっき人とぶつかって鏡落としてさー割れちゃったんだよね。」
「マジで?あたしもさっきリーマンとぶつかった~眠気覚めたよ。」
教室に着いた真奈美と町子は、仲のいい友人達のもとに行き女子4人で話をしていた。
「そんでさ~!丸美が1人フードファイトしだしてさ~、かなり顔ヤバかったよ!」
「だって失恋したらヤケ食いって決まってるじゃん?もー食べまくった!」
「え~どんだけ食べたの?」
「駅前の中華料理屋で4人前ぐらいいってたよ。丸美の顔テカってて激ヤバかった。」
「うそ~!あたしテカるとかムリー!」
「え?4人前はいけるの?」
「もぉ~どっかにぽっちゃり好きのイケメン転がってないかなー。まなちゃん紹介してよぉ。」
「今度ねー。」
丸美はぽっちゃりじゃなくてどっしりだから転がってるイケメンを踏みつぶしそうだな、とかなり失礼な事を考えながら真奈美はチャイムが鳴ったため自席に戻っていった。
一日の授業が終わり、部活に向かう丸美と佐渡子を見送って真奈美は町子と帰り道を歩いていた。
「じゃーね~また明日ー。」
「明日ね~。」
乗る電車が違う二人は駅のホームで別れて家に帰宅した。