自殺班ルドリの憂鬱
「どうして俺が異世界に行けないんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
引きずられながら叫ぶ男を見る僕の心には悲哀も侮蔑も無く、あぁこいつも身の程を弁えずにここに来たんだろうなぁとただただ無が広がっていた。
この自殺班に来る方たちは大体どこから湧いて出たのかわからないほどの自信に満ちた目をしている。自殺したのに。
異世界に行けると疑わない。自殺したのに。
いや、まぁ一応こういう部所が設置されるという事は行ける人もいるんだろうと思う。
ただ、ここに配属されて三年は経つがそんな人一人として見たことがない。
所詮クズしかいないからな、と言いかけた言葉を飲み込み次の人を部屋の中に入れる。
「よ、よろしくお願いします。」
まただ。パターンは違うが同じ臭いがする。
口調は自信なさげだが目からはどうせこの人も自分を助けてくれるだろうといった他人任せな生き方をしてきたことが一目でわかる。
ただこっちも仕事だ、一応質問はしなくては。
「どうして貴方は異世界に行きたいのですか?」
「か、可愛い子と旅がしたいからです。私は小さい時から女の子と接する機会がありませんでした。なので、異世界に行けばこんな僕でもヒーローになれるはずなので異世界行きを希望しました。」
どうしてこうもこの類の方たちは早口なのだろう。聞く気が失せてしまう。
無論、最初から聞く気などありませんがね。
「不合格で」
この一声で係りの人たちが目の前のゴミを片付けてくれる。この仕事唯一の良いところだ。
引きずられていく彼は小さな声で「どうして、どうして」と呟いている。
どうしてって…
まぁそれがわからないからこんなところに来てるのかと自分で自分を納得させて次の人を部屋の中に入れる。
今、思えばこの時もっと心の準備をしておけ、と昔の自分に言いたかったが無理な話だし言っても聞かないだろう。