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7. 実はまだ着いてない?

道のりがのんびりな割にはこの先の進展速度は速かったりする。



「リョーンさん」

「……」

「リョーンさん? 何を周りをきょろきょろと見回してるんですか?」

「奴がこの近くにいるのか……?」

「ヤツって誰ですか、リョーンさん」

「……、あぁ、そう言えばリョーンってのは俺の事か」

「俺の事か、って他に誰がいるんですか」

「そもそもリョーンは偽名だ。そしてリョーンとは具体的に言えば変人でトチ狂った痴女だ」



◇◆◇



「くしゅん」

「大丈夫?」

「ええ、はい。大丈――くしゅんっ」

「風邪?」

「そんなわけある筈がないじゃ、しゅんっ!」

「……本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫です。きっと誰かが私の噂でもしてるんですよ。ふふっ、私も罪な女ですね」

「……、そうか?」



◇◆◇



「痴女って……襲われたんですかっ!?」

「何をそんなに驚いている? ……いや、寸でのところで逃げおおせた。だが一歩間違えば襲われていたのは間違いないな」

「そ、そうですか。……よかったぁ」

「ああ、本当によかった。だがそこで何故お前が安堵する必要がある?」

「え、えとそれは……そ、そうでしたっ。ほら、もうすぐシャルナーサが見えてくると思いますよ?」

「露骨に話題をずらしたが敢えてそれに乗ってやろう。ありがたく感謝しろ」

「何でそこまで上から目線なんですか……?」

「それはお前の自意識が過剰なだけだ」

「……絶対、違うと思う」

「それよりもシャルナーサはまだか?」

「ですからもう少しで――」

「待て」

「――て、はい?」

「……出てこい。それだけ魔力を放出しておいて隠れているつもりか?」


「よく見破ったな。小人の分際で」


それは蒼い瞳と青い髪の男達だった。……十人ほどいるか。

髪と瞳の色が鮮やかな同色――ある種族の特徴でもある。


「龍種……? でも何でこんな所に……」

「見ればわかるだろうが。こんな簡単な事も判らないとはお前バカか?」

「バ、バカってそれは酷いんじゃないですかリョーンさん!?」

「馬鹿をバカ呼ばわりして酷いと言われるのは甚だ心外だ。お前たちもそう思うだろう、盗賊ども?」

「とう、ぞく……? やだな、リョーンさん。何言ってるんですか。龍種の人たちが盗賊なんてするはずないじゃ――」


護衛対象の女を引き寄せる。


ひゅっ


間一髪、と言ったところか。

女の鼻先三寸を目の前の龍種の男の振り下ろした剣先が過ぎていく。


「――な、ぃ?」


女はまだ死にかけた事に気づいていない。


まあ、三神十二使徒に続いて尊いとされている龍種が、しかもこんな使徒のお膝元で犯罪行為なんてありえないとも勘違いするか。

だがこの考えには二点、抜けているところがある。

一つは当然今が混乱時だと言う事。知っている者からすれば犯罪もクソもない。

もう一つに、龍種が小人族如きの存在を気にするはずがない、と言う事。


――大方、こいつらは犯罪と言うよりも遊び感覚の方が強いんじゃないだろうか?


「小人風情が舐めた口を利く」

「ふんっ。龍種如き、しかも落ちこぼれの分際でほざくな。お前らこそ口を噤め、耳が腐る」


どうせこいつが何十人集まった所で、『昏白の神殿』を襲った【小厄災】たった一人にも勝てはしない。


「俺たちを、落ちこぼれだと……?」

「どうした、図星をつかれたから頭にきたか、この落ちこぼれども?」

「きさ――」


≪Crash――切り刻め≫


『――っ?!?!』


一瞬で体中から血を流して平伏した龍種たち。

「俺に屑に構っている時間はない」

「リョーンさん、なに、を……」

「いいから行くぞ。時間が惜しい」

「あ、ちょっとま、リョーンさん、手、引っ張らな――」


聞く耳を持つ気はない。


小さくだが魔力を使った所為で身体が麻痺しだしてきている。正直いつ倒れてもおかしくない。


くそっ、この程度で倒れるようじゃ、“あいつ”を殺すことなんてとても……


「ぁ、でも強引なところもちょっと素敵かも……」


――戯言を聞く気はもっとない。



◇◆◇



「待ちなさい」

「――」

「あ、あのリョーンさん?」

「そこの二人、貴方達の事です。少々話を伺いたい。待って下さい」

「ちょ、リョーンさんっ、待って下さいって、ほらっ?」

「――あ?」


拙いな、歩くことだけに意識がいってた。仮に敵に襲われていたかと思うとぞっとしない。


見た感じ男――先頭は万が一女の可能性も無きにしも非ず――数人に囲まれていた。

服装からして神殿関係者だな。一見小人族にも見えるが…いや、こいつらは妖精……鬼族、お堅い戦闘種族か。しかも雰囲気から並大抵の実力じゃない気もする。

と、するとこいつらの狙いはおそらくさっきの龍種ども。ちっ、拙いな。


「一応確認しますが、貴方達はこの街道をまっすぐと来たんですよね?」

「はい、そうですけど……?」


って、何素直に答えてやがるんだこの女。まさかこの女、これを機に俺をこいつらに売る気か?

まさか、どこかで俺の事を知って、それで今まで安全に切り捨てれるタイミングを計って……。

流石にここまでは疑りすぎだろうが、……どうする、やるか?


いつでも行動できるように僅かに魔力を奔らせて、


「っ」

「……大丈夫ですか、そちらの連れの方。かなり辛そうですが?」

「リョーンさん!?」

「心配、ない。それよりも何の用だ? 俺に気を遣うつもりならさっさと用件を話せ」

「……そうした方がよさそうですね。では聞きますが、貴方達この道を通る際に龍種に会いませんでしたか?」

「えと、あのその……」


女が見苦しく慌てる。と、言うよりお前は目障りだから何もするな。

目でそう伝えると何故か頬を赤くして俯いた。何か間違ってる気もするが取り敢えず大人しくなったし、いい事にする。


聞いてきた男の方も女の態度から察したのだろう。こうなったらもう知らぬ存ぜぬで通すのは無理か。


「確かにいたな。それがどうした?」

「大丈夫でしたか?」


何が大丈夫か、だ。しらじらしい。普通のヒトがあの腐れ龍種ども相手にして無事でいるはずがないだろうが。

だがそれより何より、こいつらの眼は節穴か?


「お前、馬鹿か?大丈夫かどうかなんて見てわかるだろうが」

「それは、そうですね。それにそれだけ達者な口が聞けるのなら大丈夫なのでしょう」

「それで用件はそれだけか?俺達は先を急いでるんだ。もう用事がないんだったら行かせてもらうぞ」


「私は別に、もうちょっとゆっくりでもいい、かなぁ?」


脳の腐った戯言が聞こえたが無視だ、無視。それに相手にするだけつけ上がるに決まっている。


「ええ、龍種と会って、でも何の問題もなかったのならそれでいいんです。お時間をとらせて済みませんでした、私たちからの質問は以上です。ありがとうございます」

「いえっ、そんな……お礼を言われるほどの事じゃ」

「いえいえ、お時間を取らせてしまって申し訳ない」


馬鹿か、こいつは。単なる社交辞令だ。

それに……ふん、この偽善者め。一見して穏やかそうな感じがするが、その顔の裏じゃいったい何を思ってるんだか。俺が魔力を発した瞬間、変わった表情を見逃すものか。

厄介な奴に目を付けられたとみるべきか、はたまた俺にとっては都合がいいと言うべきか。どちらにせよ……っ


「それよりも先ほどから気になっているのですが、彼、本当に大丈夫ですか? 今にも倒れそうなほどに顔色が悪いのですが?」

「しつこい。心配される云われはないとさっきから言




この終わり方で問題ないです。

決して途中で変に途切れてるとかじゃないです。



主人公、瀕死中。

リョーンさんは…と、言うよりも昔の人はこう、勘違いしてばかりの奴らしかいないのか…(汗)


我らが主人公が『リョーン』と名乗ったのはきまぐれではなく、彼女に罪をなすりつけるための工作とお考えください。


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