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1 プロローグ的な何か


行間開けてないので読みにくかったり、逆に読みやすかったりしたら言って下さると宜しいです?


大きな声をあげて家の中に入る。

そして出迎えてくれるのは、俺の唯一の家族。


「ルナー、ただいまー」

「ルナ、じゃないでしょ。お母さん、お母様、もしくは母上、カカ様でも可。とにかくその内のどれかで呼びなさいっていつも言ってるでしょ。ちなみにママは駄目よ」

「でもさ、ルナはルナじゃ、うぐー」

「口答えするのはこの口か? ほらほら、どうしましたぁ? もう一度だけチャンスをあげるから今度は正しく言ってみましょうねー?」

「……っ、痛ぇじゃねえか、ル――母、さん」

「よしよし良くできました。偉いわねー」

「うわっ、ちょ、止めろよ。髪がぐしゃぐしゃになるだろっ!!」

「わー、いっちょまえに照れてやんの。可愛いー」

「だから止めろって。胸押し付けるな、胸っ。くる、苦しいんだよー!!! ……ぶっ」

「ふふんっ、この胸の良さを分からないなんてまだまだ子供ね」

「子供相手に言ってて恥ずかしくないのかよ?」

「全然?」

「あ、そう。たっく、やってられるかよ。……で、飯はまだかー?」

「はいはい、今持っていくわよ。この食いしん坊め」

「いっぱい遊んでいっぱい動いたからその分疲れてるんだよ」

「本当に生意気に育ったわね。誰に似たのかしら?」

「ん」


ルナを指さす。


「「……」」

「私に似たらもっと聡明でお淑やかになってるはずだわ」

「ありえねぇ!」

「「……」」

「ふふふふふっ」

「はははははっ」


二人で笑い合った。なのに何故かルナの笑い声が怖く感じる。何故だろうか――?

直ぐにゲンコツが飛んできた。


「痛ぇ!! いきなり何しやがるんだよっ!?」

「喧嘩なら買ってあげるわよ!? 特安で!!!」

「……せこ」

「節約上手と言いなさい、節約上手とっ」

「……はぁ、もういいよ。何か気が抜けた。それよりもさっさとごはん食べようぜ?」

「それもそうね。冷めたりしたらただでさえ腕の悪い料理がもっとまずくなるものね」

「自覚してるならちょっとは上達して見せろよ」

「……あのね、ヒトには相不相応が決まっているのよ。はっきり言えば、私には無理ね。これ以上の成長は人として見込める余地はないわ」

「……それで本当に女かよ」

「ふっ、ほんとにまだまだお子様ね。こんなにいい女どこを探しても絶対いないわよ」

「……マジかよ」

心底思った――ならこの世の女は全部が碌なものじゃないな、と。



この夢は……



「なあ、ところでひとつ聞いていいか?」

「何?あと相変わらず言葉遣いが悪いから今すぐ改めなさい。そして私を敬いなさい」

「不可能な事を口にするなよ。でさ、さっきから気になってたんだけど、そこにいる奴は誰だ?」

「そこ……?」

「ああ、だからさっきからじっと俺を見て笑ってる気味悪ぃ女だよ」

実際に指差してやる。

「ほら、悪口言ってもまだ笑ってる。こいつ誰だよ?」

「――あんた」

「な、何だよ。そんな真剣な顔して。もしかして大切な客なのか? それとも触れちゃまずい話題だったのか?」

「今すぐ医者に行きましょう。大丈夫、ちょっと悪い病気にかかってるだけだから、すぐによくなるからね。私は信じてるわよ」

「ちょ、てめぇ、何言ってやがるっ。あとその生暖かい目はやめろ、つか俺はいたって正常だよ!!」

「……本当に?」

「本当だよ。て言うよりもあの薄気味悪い女が見えないのかよっ!?」

「……やっぱり医者に見てもらうべきね」

「だから――っ」


『無駄ですよ。愛しきヒトの子よ。そのモノに私の姿は見て取れない。声も届きはしない』


「……マジかよ。なあ、ルナ」

「なに? 何か欲しいものでもあるの? 買ってあげるわよ?」

「いらねぇよ。つかいきなり優しくするな気色悪い」

「何よー、人が下手に出てりゃつけ上がりよってー!!」

「どこが下手だよ、どこがっ。……じゃ、なくてだな。俺、本当にやばいかも知れない」

「……ようやく理解したのね」

「あぁ。変な女の幻覚が見えるんだ。それに幻聴まで聞こえてきやがった」

「大丈夫よ。私がついてるからね。ちゃんと心をしっかりもつの。分かったわね?」

「あ、ああ。分かったよ」

こう言う時、親の暖かさが身に沁みると理解できる。


『……私は幻覚でなければあなたの妄想でもありません。私は神です。ですので安心しなさい、異界の愛しき堕し子』


「やべぇ。ルナ、俺もう駄目みたいだ。女が誘ってくるんだ」

「大丈夫よ。大丈夫だから、私を信じなさい」

「あぁ、信じる。俺ルナを信じるよ」

「そうよ。そうやって気をしっかり持ってれば必ず大丈夫だから」

「ああ。……ああ」


『私は誘ってなどいないし、嘘をついてもいないのですが。あなたがそう望むのであれば、ええ、私も覚悟を決めましょう』


「……ぶっ!?」

「ど、どうしたの?」

「い、いや。なんでもない」

何を思ったのか(自称)神様が着ている服を脱ぎだした。あ、今度は流し目でこっちを見てる。

「……さ、誘ってる。ヤツは俺を誘ってやがる!!」

「大丈夫よ!しっかりしなさい!!」

「あ、あぁ。ああ、ああ、あああぁぁぁぁ」


『――おいで?』


「うがああああああああああああ」

何か、キレた。

「ちょ、いきなり……」

「ルナっ!!」

「は、はい!?」

「やっぱり俺疲れてるみたいだから今日はもう休むなっ。いつもの剣の訓練は休みで良いかっ!?」

「ええ当然。良いわよ!!」

「お休み!!」

「ゆっくり休みなさい!! ……本当にゆっくり休みなさいよー」

最後の一言は聞こえない振りをした。



止めろ。これ以上進むな…進むんじゃ――



「で、お前何なんだよっ!? あといい加減それは止めろっ、服も今すぐちゃんと着ろよなっ!!」

『む? 私の身体は気に召さなかったか。どこが気に入らない? 今すぐ直すとしよう』

「全部だ! 全部!!」

『そ、そうか……そうか、全部か』

「うっとーしいっ。落ち込むならどこか俺の視界に入らないところでしてくれっ。……いや、ちょっと待てよどこに行こうとしてるんだ!?」

『いや、お前がどこかに行けと言うから……』

「何でそうなる!? ……はぁ、もういいよ。それと取り敢えずちゃんと服着てくれ。さっきから目のやりどころに困るんだよ」

『うん、やはりお前は優しいな。しかし……そうか、困るか。そんなに私の身体は見るに耐えないほどに醜いか』

「じゃ、なくてだなっ。俺みたいな子供にどんな反応しろって言うんだよっ!?」

『お、襲うのか?』

「……襲うってナニ? それにそこで恥ずかしがるなら最初から止めてくれよ」

『むぅ』

「それで結局お前は何なんだよ、この痴女めっ」

『神だ』

「はぁ、カミサマですか」

『そうだ。最初から神だと言っていただろう』

「そんな、部屋の隅で服着ながら『私は神だ』とか言われてもなぁ…。どんな反応返して欲しい?」

『いや、特に反応は期待していない』

「あ、そう」

『うん』

お、服を着終わったか。

「で、ならそのカミサマは一体なんの用があって俺の前に現れたんだよ?」

『私は――私はお前がこの世界に落ちてからずっとお前を見つづけてきた』

「俺の生まれたときから……つまりあれか、お前は自称神のストーカーか」

『私は本物の神だ。三神が一柱、女神シャトゥルヌーメとは私の事だ』

女神シャトゥルヌーメと言えば三神十二使途の内の女神の名前だった。……本当に本物?

「…で、神様はどうして俺なんかを見続けたんだ?そりゃこの黒髪と黒瞳はちょっとは珍しいだろうけど、そんなお偉い神様が一々気にするものでもないだろ?」

『いや、だから最初から言っているであろう。愛しき異界よりの堕し子よ、と。お前はこの世界に満ちる下らぬ私たちの創造物どもとは根本から違う』

「……いきなりそんな事言われてもなぁ。確かに俺は孤児だったけど、そんなの珍しくもないだろ?」

『お前は孤児などではない。この世界ではない異界から落ちて来た稚児だ。決して私たちの創造物ではないのだ。どうだ、凄いのだぞ?』

「……う〜ん、つまりは俺は直接あんたたちの作ったものじゃない。だから逆に愛着がある、って事か?」

『そうだ。分かってくれたようで嬉しいよ』

「いや、全然分かってない」

『け、けど今――』

「今のは取り敢えず言ってみただけ」

『そ、そうなのか。……そうなのか』

「で、だ。俺としては自分がどこで生まれようと気にする気はないんだけど。とにかく神様としては俺が気になるわけだ」

『その通りだ。あと神などと言わず、お前には特別にシャトゥルヌーメと呼ぶ事を許そう』

「嫌だよ、そんな長い名前。だいたいそれならシャトゥで十分だろ?」

『――お前、神の名前を何だと思ってるんだ?』

「単なる名前だろ。それにシャトゥの方がなんだか可愛らしくて良いじゃないか」

『そ、そうか。お前が気に入ったのならそれで良いだろう。うん、許そう』

「ああ、ありがとな。……第一本名じゃ長いし面倒だしな」

『うん、そうか。可愛いか、そうか。……ならいっその事名前をシャトゥに改名するか? いやしかし……困るな、困るよ』

自称神さん、何か心底どうでもいい事を真剣に悩んでた。

自分で言っておきながら本当に名前なんてどうでもよさそうだ。

「で、シャトゥ」

『ひゃい!? ……あ、あぁ、私の事か』

何か顔を真っ赤にして照れてらっしゃる様子。

心底どうでも良いが。

「シャトゥは俺が気になったから俺の前に姿を現した、それは良いか?」

『うん、いいぞ』

「じゃ次だ。シャトゥは俺の前に姿を現して、それからどうしたかったんだ?」

『これからも傍でずっとお前を見ていたい』

「断る帰れこのストーカー」

『神に向かってなんて暴言だっ!?』

「だいたいな、シャトゥの姿が俺にしか見えないって事も問題なんだよ。お陰でさっきはルナに変な勘違いされたじゃないか」

『ルナ? あぁ、さっきの小人か。そんな事どうでも良いじゃないか』

「よくねぇよ。……はぁ、明日なんて言い訳しよう?」

『どうしてそんなにあの小人の事が気になるんだ?』

「どうしてって、そりゃ仮にもルナは……俺をここまで育ててくれた、親だからな。気にならない方がおかしい」

『育ててくれたから、だからあの小人が気になるのか? あんな、できそこないの創造物が?』

「オイこら待て」

『な、何だ?』

「お前いまルナの事、なんて言った?」

『出来損ないの創造物の事か?それがどうか――』

「――ルナの事を馬鹿にするな」

『な、何を』

気が付くと、シャトゥに掴み掛かっていた。

「ルナは俺の家族だ。家族を馬鹿にする奴は許さない」

『――あのでき……ルナとか言った小人が大切か?』

「ああ」

『……私よりも、大切か?』

「当然だ。今日はじめて会ったばかりのお前となんかじゃ比べ物になるかよ」

『――そうか。…………帰る』

「……え?」

『いったん帰る。すぐにまた来るけど、一度帰る』

「あ、あぁ」

何か拍子抜けした。

怒った事に対して怒り返すでもなく、落ち込むでもなく、ただ淡々とした様子のシャトゥ。

『本当に、またすぐ来る。けど帰る』

「ああ、分かった」

『また来る。すぐに、本当にすぐにまた逢いに来るから。だから、それまで待っていて下さい――私の愛しき、異界の堕し子よ』

「――」

言い残して、シャトゥは消えた。

はじめからいなかったように、あるいは最初から自分ひとりの妄想だったように。



頼む、頼むからこれ以上は……

シャトゥ、止めてくれっ!!!!



翌日、不意に目が覚めた。

「昨日の幻覚は実に変なのだったなぁ。確か、シャトゥ……忘れた。まあ、シャトゥで良いか」

しかし痴女のストーカーの妄想って一体なんだよ、って感じだな。

またすぐ来るって言ってたし。

言動はともかく一々反応が面白い奴だったからまた来るのが、まあ結構楽しみかも――


眠気は、そこで一瞬で吹き飛んだ。


部屋から一歩出た瞬間。充満する臭いに気がついた。

それは咽るような血の臭いに似ていた。

どっ、どっ、と心臓の音が激しく聞こえる。何でこんなに緊張しているのか自分でもよく分からない。

分からないけど、分かる。きっとよくない事が起きた。だから、


――それ以上進むな!


「……っっ」

先に進む。向かう先は、一階の部屋。そこにいつもと同じ、ルナが朝食を作って待っていてくれるはずだから。


――それ以上何も見るな!!


「……」

唾を飲み込む。最後のドアに、震える手をかけた。


――そのドアの向こうを見るんじゃないっ!!!


ドアを、開けた。

そこに、いたのは。


血塗れの、俺の、大切な、

――ヒト…………………………だった“モノ”




「ルナァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

目が、覚めた。

当然ながら最悪の目覚めだった。

「……ちっ」

この悪夢はそれほど昔の事じゃない。

だけど、ここで目が覚めたのはまだ“まし”だったと言えよう。

最後の、本当に最後の悪夢を見なくてすんだのだから。

胸に手を当てる。

「――」

身体の奥底で感じられる熱い力の塊――“あいつ”から与えられた力の半分。

害意もないくせに身体を内側から壊そうとしているヒトには過ぎた、まさに神の力。

窓の外を見る。

視線の先にあるのは神殿――神を祭った、十二使途が司っている十二宮の内の一つ、『昏白』の神殿。

「……待ってろ、今すぐ行ってやる」

やっと、ここまで来てやったのだから。


物語&登場人物紹介


本編のすべての起源。神様や使徒様たち、龍種も存在していた時代の物語。

…まあぶっちゃけてしまえば主人公は同一人物だけどね(笑)ただ多少は?やさぐれてたりする。

あぁ、あの頃は自分も若かった、と回想をする我らが主人公くん。


ルナ

母親。故人だが、結構はっちゃけた人だったらしい。腕っ節も強い。


シャトゥルヌーメ

女神様。何故このような性格に…?

次第に性格が破壊されていくのが続きを書いてて怖い。



取り敢えず、ぷろろーぐ的な何か。書き方もチョイ違うので反響を見てみる。


ちなみに作者は極度のハッピーエンド&大団円好きです。たとえ途中でどのような展開になろうとも全員 (ほぼ) 同等に救いと幸せを用意します。

暗い展開にはならないのでそう言うのが嫌いな人はご安心を。


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