立ち位置は決まった
思いつくままに書いてみました。
誤字脱字ありましたらお知らせください。
霧崎君は優秀だ。
霧崎君は運動もできるし勉強だって校内トップクラスだ。
霧崎君はリーダーシップを持つ男5人兄弟の末っ子だ。
彼に出会ったのは高1になったばかりの、春。
桜舞い散る木の下で彼と目が合った――
なんて甘い恋物語が始まるはずもなかろう!!
確かに彼の第一印象は良かった。
初対面の同世代相手に臆せず話しかけていく姿に素晴らしいとも感じた。
私の中で彼の印象が変わり始めたのは一番初めの実力テスト明け。
「こんなテストで90点取れないなんて、人間の恥ですねー」
こう言い放った。
ん?
今のは聞き間違いかな?
空耳かな?
確かこのクラスで90以上を取ったのは霧崎君と田端くんだけだったはず……
私を含め38人が恥の塊だとでも?
うん、きっと私の耳が遠かったんだろう。
彼は歌が好きなようだ。
口ずさむ、程度ではなく教室に響き渡る大音量で熱唱なさる。
よほど好きなんだな。
でも彼は選択授業で音楽を選ばなかった。
知識欲があふれているのだな、見習おう。
できれば授業中にマイワールドを展開なさるのはやめてほしいな。
さて、そんなこんなで一学期が終わる頃には、一見完璧にも見えた彼の仮面は剥げまくっていた。
霧崎君は優秀だ。
霧崎君は俺様だった。
霧崎君は極度のナルシストだった。
「はーい、テスト返すよー」
おい、霧崎君よ。
それはあなたの役目じゃないだろう?
「伊藤さん62点ー。勉強したの?」
なぜに点数を読み上げる。
そしてあなたのコメントを添付しなくて結構です。
「ちょっとー早く取りに来てくれませんかー」
おう、速攻行くからお前もホームしろ。
(選択授業中)
「ではみなさん、この絵画を描いた作s「so you know-......」
あらあら霧崎君ここはあなたのお家ではなくてよ?
「my heart glow......」
歌い手気取りですか?
素晴らしいイントネーションだこと。
「……みんな静かにしてくださーい」
アナタ記憶飛ビマシタカ?
脳内スクランブルさんなんですか!?
説明しよう!
今の今まで先生の話を遮り授業を滞らせていたのは、貴公の口から発せられた聞くに堪えない音付きの言葉だ。
それともあれか?
自分のすんばらしい美声をクラス中にデリバリーサービスしてくれようとしてたのかな?
お心使いあざーっす!
受け取り拒否者多発です。
物事を客観的にとらえることも大事だぞー。
なぜ彼はこんな風になってしまったのだろうか。
私はこう考えた。
彼は言わずと知れた5人兄弟の末っ子だ。
末っ子とは甘やかされて育つ。
当然兄たちもそれなりに大きくなり弟を可愛がるはずだ。
つまり一番甘い蜜がすすれるのはこのポジション。
彼中心で物事は動く。(俺様一丁上がりっ!)
彼は周囲よりもより可愛がられる。(隊長!ナルシストの芽が出ましたっ!)
霧崎君生産工場が発現した――。
プラスして我々日本人は一般的に気が弱い。
彼のようにリーダーシップもどきを持っている人間がいればそれについていく。
奴は調子に乗る、羽目を外す。
悪いのは彼じゃないな。
環境が整いすぎてたんだな。
少し自己中なくらい、ナルシなくらい、どうってことないじゃないか。
そういうキャラも大事さ。
ちょこっと直せば某ラノベの逆ハーに入る素質だってあるはず。
むしろ彼の言動を見、陰でほくそ笑むサイドに入ろう。
お……いいんじゃね?このアイデア。
ナイスだ私!
ポジティブ思考で行こう。
大いにニヤニヤし肩を震わせようではないか。