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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
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"黄昏と钢琴"

掲載日:2026/07/22

先生はいつも放課後、夕陽に打たれながら音楽室でピアノを弾いて居る


先生は音楽の先生では無いし、

眼鏡をして白衣なんかを着て居るし、

男性で背が高くて、指が長くて色白で、

そして人間では無いし、

授業に使うのとは、違う方のピアノを弾く


僕だけが、先生から教えられたから知って居る

あのピアノの弦を叩くハンマーは、男の子の骨で造られたのだ



その子供は僕の親友で

垂れ眼気味の優しい顔をした、同じ歳の僕からしても愛らしい子だった


恥ずかしいから誰にもこんな事は言って居ないが、僕はあの子に視られると何時(いつ)も胸が苦しくなり、落ち着いて居る事が出来なくなって居た


恋なのかも知れないね、と他人なら云うかも知れないが、そんな事が有るのだろうか

それでも僕は授業中、後ろの席から彼の唇や手を視てしまう事がたまに有った


触れたら、どういう感覚なのだろう



しかし、其れを確かめる機会は永遠に訪れず


あの子は先生と恋に堕ちて、死んで、骨になって、

削られて、ピアノの弦を叩くだけの存在になった


だからといって、僕は先生を憎んだ事は無い

夕方の音楽室の昏さも在って、ピアノの内部を鮮明に視る事は出来ないが、僕は今の彼を『綺麗』だと考えて居たし、今日此処に来たのは先生にお願いしたい事が有ったからだった



「先生」



呼び掛ける


演奏が止まる



自分の躰の内側で、爆発しそうな動悸が少しずつ迫り上がって来るのが解る

演奏を止めてまで話し掛けた以上、本題に入る必要が有った



「先生は」



「………此のピアノの弦も、人間から造りたいと思って居るんですよね」



先生は少しだけ驚いた顔を視せた後、直ぐに微笑むとそうだよと答えた


我慢する事が出来ない

僕はボタンを引き千切ってシャツを脱ぐと、先生の足元に、口付ける様に(ひざまず)いた



「僕を、使ってください」


「人間の子供の肉なら良い弦になると思うんです」



「なりたいんです」



「お願いします」


気が付けば僕は涙を流して、事前に言うつもりだった言葉以上の言葉で先生に懇願をして居た


先生がピアノの椅子の横に在る、キャスターの付いた銀色の台からメスを拾って、僕の胸に()てる─────






こうして、僕はピアノの弦になった


毎日が充実して居ると、思って居る

先生がピアノを弾く時間になると、毎日の事なのに、僕は悦びで死んでしまいそうになる程だ


もちろん、死んだら此の快楽は終わってしまう

だから、どんな事をしてでも僕は生き続けたいと思って居る



───先生がピアノを弾き始めた


大好きな男の子の骨が、逃げる事も出来ずに僕の躰から採った筋を、機械の様に叩いて居る

 

事実として、僕たちはこうやって交わり続けるだけの器械になったのだ



僕はしあわせだった

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