虚無
掲載日:2026/03/24
その名の通り、からっぽなSSです。
俺は虚無である。
俺は毎日家のドアを開けるが、俺の声がただ虚しく響くだけ。1人きり、いつか無になることを祈られて。
棚の半分だけが何も置かれていない。
日常にぽっかりと穴が開く、実に空虚な生活だ。
今日の黄昏時、俺は完全なる虚無となる。
その全てが俺であり、俺がその全てである。
人々が虚無に祈りを捧げる。
人々に声をかけるも、何も返ってこない。
しかし、俺は確かに息をしている。存在している。
しかし人々は俺が見えない。
解説
俺はとある因習村の村民。
この村には1年に1人、虚無にならなければならないというしきたりがある。
虚無になるには、日々のぽっかりと何かが抜け落ちたような感覚を広げ、落とすことで虚無になれると言われている。
上記の事をするためには、指定日に村民皆で祈りを捧げる。
祈りと言っても、捧げる相手が何もない虚無なのだから、中身のない何も考えずにポーズをとっているようなもの。
俺は虚無になる村民で、最終的に虚無となった。




