第18話 誤解という名の可能性
「侵入者の焼死体.....」
碧真は声を出した。自分でも驚くほど、静かな声だった。
「施設への侵入者、となると……燈哉は収容者として入ったわけじゃない。外から入った、ということになります」
志狼は振り返った。碧真の顔を見た。
「燈哉は報知機を鳴らして、煙の中に消えた」碧真は続けた。「侵入者の焼死体が一体。もし燈哉が侵入者として扱われているなら」
言葉が止まった。
論理的に組み立てれば、一つの結論に辿り着く。燈哉は侵入者として施設に入り、火災の中で残った。焼死体が確認された。
それが意味することを、碧真の脳は既に計算し終えていた。しかし口から言葉にしたくなかった。言葉にした瞬間、それが現実の輪郭を持ってしまう気がした。
二階で物音がした。フィリアが起きたらしい。階段を下りてくる音がする。
フィリアが台所の入り口に立った。碧真の顔を見て、それからラジオを見た。
「聞こえていました」フィリアは言った。
「フィリア」
「……燈哉さん、ですか」フィリアは静かに言った。声に感情はなかったが、それがかえって、言葉の重さを際立たせた。
碧真は何も言えなかった。
志狼が低く、「座れ」と言った。二人に向けて。
「全部話す。燈哉のことも、俺のことも、この施設のことも。お前たちには知る権利がある」
碧真は椅子を引いた。フィリアも向かいに座った。
外では鳥が鳴いていた。のどかで、場違いなくらい穏やかな音だった。




