第17話 ラジオ
食事を終えて、碧真とフィリアに部屋が与えられた。
農家の二階には、使っていない部屋が二つあった。布団は古いが、清潔だった。フィリアはベッドに横になった瞬間に、眠ったようだった。疲労が体に溜まっていたのだろう。ひどく細い体が、毛布に沈んだ。
碧真は眠れなかった。
窓から山が見えた。朝の光が木々の輪郭を縁取っている。どこかで鳥が鳴いている。こんなに静かな場所に来たのは、久しぶりだった。
燈哉のことを考えた。
あの笑顔。煙の中に消えた背中。「俺のこと信じろよ」という声。
信じたい。信じている。でも施設の火災の規模次第では、と考えたくない部分が脳の中で計算を始める。碧真の頭は、感情に関係なく確率を弾き出そうとする。それが時折、ひどく邪魔だった。
階下で、ラジオが鳴り始めた。
志狼が朝のニュースをつけたのだろう。碧真は立ち上がり、音に引かれるように階段を降りた。
志狼は台所に立っていた。ラジオは棚の上に置かれている。
ちょうどそのとき、アナウンサーの声が変わった。
――『昨夜未明、政府管轄下にある医療研究施設において火災および警報発報が確認されました。施設の警備員二名が死亡。また施設内で身元不明の焼死体が一体確認されました。』
碧真は動かなかった。
志狼もラジオを見たまま、動かなかった。
「……」
焼死体。身元不明。一体。
頭の中で言葉が繰り返された。焼死体。一体。施設内で。侵入者。
碧真の手が、テーブルの縁を握った。




