表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IRSー内象再現性血症候群ー  作者: やはうぇ
第2章 別離と逃走
13/23

第13話 走る

 暗い道を走りながら、碧真は燈哉が渡した紙のことを考えていた。

 今は取り出せない。ポケットの奥に折り畳んだまま入っている。ただ、その重さだけが確かだった。

 背後のフィリアは声を出さなかった。細い体で風を受けながら、ただじっとしていた。

 市街地から外れていくにつれて、道が細くなった。街灯が消え、山の輪郭だけが空に黒く浮かんでいた。碧真は速度を落として、脇道に折れた。

「目的地は知っていますか」フィリアがかすかな声で言った。

「まだ確認していません」

「今確認しますか」

「もう少し距離を置いてからにします。追跡があれば、止まるのは危険だ」

 フィリアは返事をしなかった。しかし碧真の背中から手が離れなかった。それが何となく、碧真には意味があるように感じられた。怖い、というよりも、ただここに居場所があるという確認のような、そういう触れ方だった。

 三十分ほど走ったところで、脇の農道に入った。人家は見えない。エンジンを切る。静寂が戻る。虫の音と、遠い水音だけがある。

 碧真はポケットから紙を出した。

 折り目を開くと、燈哉の字で短く書いてあった。

 ――山城郡、廃村、天城農場。

 それだけだった。

「……天城」碧真は呟いた。

「知っている場所ですか」フィリアが聞いた。

「苗字が、燈哉と同じです」

 フィリアは少し黙った。「関係者ですか」

「わかりません」碧真は紙を折り直してポケットに戻した。「でも燈哉が指定した場所だ。行く理由にはなります」

 エンジンをかけ直した。道を地形から読みながら山の方向へ進んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ