別の顔と鞭
城の屋根に群がる爬虫類とは、別に、城の中は、華やかだった。
どうやら、僕は、雑用係で、それプラス、シャイルニアお嬢様の使用人もやっているらしい。
聞いた話だと、僕。つまりこの沙羅は、奴隷市場から、買い取られたらしく、あまりにも、幼かった為、親の顔さえ知らなかったらしい。
あのおばさんが、僕の母親がわりだったらしい。
そっと、彼女の部屋のドアを開けると、真っ白な天蓋が見えてきた。
この時代、レースは、高級品であろう。
ふんだんに、使われているのを見ると、城主に愛されているんだと思った。
人が羨むような美貌とスタイル。
きっと、話す声を、心地よい声なんだろうな。
「お前!」
突然、後ろから声が上がった
「忘れてないか?」
ドスの効いた声だった。
振り向くとそこに、麗しきシャイルニアが立っていた。
「お前!」
恐ろしい声は、その口から、流れていた。
「あれほど、ドアをノックしろと言ったよな」
反射的に、体が、ビックとした。
「一体、いつになったら、覚えるのかね」
「す・・・すみません」
僕は、持っていた菓子を床に落としそうになった。
「こら!落とすんじゃない」
本当に、この声は、シャイルニアなのか?想像していた声と違う。
「何か、言いたい事あるのか?」
「ふん・・・」
シャイルニアは、鼻を鳴らすと、僕の持っているトレーに手を伸ばした。
「え?」
手掴みで、菓子を次から次へと、口に放り込む。
「腹が減って、敵わぬ」
「気をつけて」
「邪魔するな」
いきなり、僕は、蹴り倒され、思わず、床に両手をついた。
「おっと、いい格好だね」
「あ!」
嫌な記憶が、僕の頭をよぎる。
「そのままで、いるんだ」
取り出したのは、乗馬様の鞭だった。
「す・・すみません」
反射的に謝ってしまった。
彼女は、表と裏の顔を持つ。
上品ぶった生活の中で、ストレスが溜まると沙羅を叩く。
「安心しな!顔は、叩かないから。まぁ、たいして綺麗な顔ではないがな」
ムチは、次々に振り落とされる。
「卑しい癖に・・・よくも、アレンと」
「許してください・・・ごめんなさい」
僕は、全身の裂ける痛みに声を上げた。
アレン?と。僕の顔をもつ男と沙羅が、何かあったのか?
「醜いくせに、私の許嫁に色目を使うんじゃないよ」
アレンと沙羅が?
そりゃぁ、当然だよ。
沙羅は、僕の事が好きなんだから、魅かれて当たり前だろう。
てか・・・あれ?
アレン・・・は、沙羅の事を思っているって事か?
僕らしくない。
そう思っている間にも、ムチの雨は、降っていた。




