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僕と言う薄っぺらな男

鏡に映った僕の姿に、息を呑んだ。


つまらない女。


僕は、どうやって、沙羅と出逢ったんだっけ。


どんなに、思い返しても思い出せない。


その位、僕にとって、印象の薄い女だった。


よく知っている筈の沙羅の身体中は、紅い筋が幾つもついていた。


貧相な身体を包む、粗末な下着は、薄汚れ、


ますます沙羅の身体を惨めな物にしていた。


これが、今の僕の体だ。


目を落とす両手は、ひどく荒れ、老婆の手の様だった。


「沙羅って、こんな手をしていたのか?」


彼女が、どんな顔をして、どんな身体を持っていたのか、


長い時間を過ごした筈なのに、覚えていない。


「大事な話がある」


そう言ったよな。


鏡の中で、沙羅は、困った顔をしていた。


髪は、乱れ、


元の世界にいた時より、


醜く僕を見つめていた。


僕を罰する為に、沙羅の身体に押し込んだのか?


だとしたら、本物の沙羅は、何処にいるのか?


「支度は、終わったのかい?」


おばさんが、着替えを持ってきた。


「お嬢様は、時間に遅れると機嫌が悪くなるからね。気を付けるんだよ」


優しく僕に言う。


「キッチンに、デザートを用意してあるから、時間通りに届けるんだよ」


「あの・・・メレンゲおばさん」


口をついで、名前が出てきて驚いた。


「メレンゲでないよ。ヘレン・・」


おばさんが、コホンと咳をした。


名前を間違えるなんて、沙羅らしい。


沙羅の事を少し、思い出した。


それくらいだ。


カタカナをよく間違えてた。


僕は、イライラして訂正していた。


「いいかい。お嬢様には、気を付けるんだよ」


お嬢様には、気をつけるのか・・・。


どちらかと言うと、アレンには、気をつけろと言うべきだろう。


自分と同じ顔なのに、


アレンに警戒しろなんて、


僕が、僕に注意しろなんて、どれだけ、僕が嫌な奴なのか、知ってる訳だ。


趣味ではない、硬い生地の衣服に袖を通し、


僕は、髪をすいた。


今度、時間があったら、この髪も手入れしてやろうか。


確か、庭にハーブがあった筈だ。


髪を洗って、トリートメントしたら、少しは、マシになるかな。


僕は、簡単に髪を束ねると、幾つかのデザートを皿に盛り付けた。


花の様に色とりどりのスイーツが、いい香りを立てている。


思わず、お腹がなって、シェフ達が、一斉に僕を見つめた。


「あはは・・・失礼しました」


「沙羅?お腹が空いているんじゃないか?」


「あ・・・大丈夫です」


時間に遅れてしまう。


「いいから、少し待っていなさい」


そう言いながら、テーブルの隅にあったパイを持ってきた。


「誰にも、見つからないように食べなさい」


無理やり僕のポケットに押し込んできた。


「食べないとダメだ」


シェフの好意に甘えている間に、予定していた時間が過ぎていた。


シャイルニアお嬢様。


品良く綺麗な顔立ち。


僕だったら、絶対、狙っていただろうな。


その時の僕は、何も知らなかった。

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