魂の略奪
その声は。
僕は、目を見張った。
初めてだ。
この世界に来て、
驚いたのは。
陸の孤島の城。
空を覆い尽くす太古の鳥類。
屋根を覆い尽くす爬虫類。
壁には、蔓草が多い茂り、
陰鬱な世界。
城主は、どんな人なんだ。
この世界の沙羅の脳裏を調べても、浮かんでこない。
あるのは、嫌悪感だけ。
そうだよ。
城主が、こうだから。
あの高慢なシャイルニアでさえ、美しいのに、
実の親子とは、思えない程、
城主は、化け物だった。
ひきがえる?
思わず、言いそうになった。
「人を傷つけたのなら、置いておけない」
話すたびに、裂けた口の中で、舌先が揺れる。
「あの・・・」
僕は、沙羅の夫となるべき城主の顔を見上げた。
「少しは、僕の話を聞いてくれませんか?」
「ふ・・・ん。話には、聞いていたが、だいぶ、雰囲気が変わったんだって?」
城主は、白目がちな目で、僕を見下ろした。
「見た目は、大分、小綺麗になったが、なんだか、中身が厚かましくなった気がするな」
臭い息を吹きかけた。
「儂は、汚いのは、好かん」
「あの・・・城主様。沙羅も、嫁ぐ日を楽しみにしていたかと・・・」
「やめい。こんな表面だけ、取り繕った奴は、好かん」
城主が、話す度に、空気が振動する。
「何度も、言うが。人を傷つけるのだけは、だめだ」
城主が、首を振ると、周りの人達が、カロンの小さな体を持ち上げた。
「小さい内に、躾をしておかないとな」
「城主!カロンは、理由もなく、人を傷tける事なんて、しない」
「お前が、原因だろう?」
人々が、口々に叫ぶ。
「僕は、アレンがどんな奴が、知っている。傷つけてまでとは、思わない」
「沙羅。そんなに、僕の事を憎んでいるなんて、知らなかった」
アレンが息も絶え絶えに言う。
「そこまで、僕を憎んでいたなんて」
誰かの手が、僕を捉えた。
海に落とそうと言うのだろう。
アレンに、僕は、何かをしたのだろうか。
あの世界でも、沙羅が、僕に何かをした事なんて、なかった。
僕が、どんな事をしても、彼女は、変わらなかった。
だが・・。
もしかしたら。
沙羅は、僕の見えない所で、苦しんでいたのか。
「待って!アレン。君は、僕の事を、どう思っていたの?」
アレンと目があった。
「いい子だと思ってたよ」
いい子。
ふ・・・。
僕は、笑った。
僕も、そう言っていた。
誰かに聞かれると、
「沙羅は、いい子だよって」
爬虫類より、怖い顔をした城主の一言で、僕らは、海に叩き込まれた。




