容疑者
誰もが、僕を睨んでいた。
「僕じゃない」
思わず、叫んだ。
頭の中で、どこかで、見た光景が蘇った。
「僕じゃない!」
叫んでいた。
どこかで、同じ事が起きていた。
ここに来る前。
そうだ。
沙羅が転落した。
僕は、病院に連れて行こうとした。
車に載せたんだ。
大事にならないように。
親父が作品展の控えていた。
評論家も大勢集まる。
人間国宝とも、言われていた。
僕が、足を引っ張ってはいけない。
沙羅の事は、秘密裏に進めたかった。
「事故だったんだ」
「そうだよ。紗羅」
目の前にアレンが居た。
包帯が痛々しい。
「君は、悪くないよ。僕なんだね」
包帯だらけの顔で、僕を見下ろす。
痛々しい顔を、両手で覆い、その間から、除く僕を見つめる目。
僕は、あんな冷たい目をしているのか。
「君に冷たくした僕が悪いんだ」
その台詞は、僕がカロンをそそのかして、やったって事を言っている。
「よりによって、僕が、自分の顔を傷つけるわけないだろう」
僕は、叫んだ。
「アレンは、僕なんだ。僕が自分を傷つける訳ない」
周りの人達が、囁いていた。
誰も、僕を信じる訳がない。
ぐるぐる巻にされたカロンが横たわっていた。
棒で、叩かれ傷だらけのカロン。
「カロン・・・大丈夫か」
僕は、声を掛けた。
「沙羅・・・ごめん。捕まった」
何て、事を言うんだ?
「沙羅の仇を打ちたかったんだ」
「カロン。何を言うんだ。僕は、頼んでいないよ」
「沙羅・・・本当の事を言おうよ」
「違う!僕は、何も担でいない」
「沙羅。本当の事を言って。君は、傷つけたかったんだろう?」
「傷って・・・」
僕は、混乱した。
頭の中に沙羅の悲しい目が浮かぶ。
僕は、何をした?
ここではなくて・・・・。
元いた世界で。
沙羅は、階段から落ちただけなのか?
カロンは、何を言わせようとしている?
「君は、傷つけたんだ。認めてよ」
周りの温度が、急に下がっていくのを感じた。
他者を傷つけるのは、誰であっても、許されない。
城主の花嫁であっても、同じ事だ。
「人を傷つけたのなら・・・両方共」
「海に落としてしまえ」
誰かが、叫んだ。
皆、一斉に、その方向を見た。
城主だった。
ようやく、姿を見せた。




