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知らない事ばかり

初めて、沙羅の夢を見た。


向こうにいる時も、沙羅の事なんか、思い出す事がなかったのに。


初めてで。


起きた時は、汗びっしょりだった。


夢の中で、僕を詰っていた。


「どうしてなの?」


答えられるか?


「もう、忘れたの?」


彼女の姿を探そうとしない、僕を責めているのか?


夢の中でも、彼女は、儚げで、今にも、消えそうだった。


「探そうとしていない訳ではない。」


それは、確かで。


あまりにも、こちらの世界にいる沙羅の環境が受け入れ難くて。


忘れた訳ではない。


ここで、生き抜こうとしているだけ。


僕が、沙羅の中にいるって事は、


僕の姿をしているアレンの中に居るはずなんだけど、


見る限り、


アレンが、沙羅の可能性は、低く。


ただ。優しいだけの罪深い男だった。


側から見て、


それは、彼に好意を持つ女性にとって、残酷なだけだと思う。


アレンは、誰にでも、優しかった。


どんなに、貧しい女性にも、どんなに、醜い女性にも。


その優しさは、老いた人にも。


好意を持たない女性は、おらず、


誰しもが、好意を抱き、


アレンの屋敷の門を叩いた。


城の庭で、泥だらけになって、働く、僕にも優しく、


その瞳で、見つけられると、


僕は、不思議な気持ちになったものだ。


「大丈夫?」


尖った草刈り鎌で、指先を怪我した僕に、


アレンは、傷薬を差し出した。


「あぁ・・大丈夫さ」


僕は、慣れた手つきで、よもぎ草を刷り込んだ。


「いちいち、気にしなくていいよ」


「君は、冷めてるな」


アレンは、笑った。


そりゃ、そうだ。


僕の体なんだから。


自分に言い寄られて、喜ぶか。


反応の薄い僕に、アレンは、拍子抜けしている様だった。


誰しもが、赤くなると思うなよ。


僕は、向こうの世界で、そんな男だったか。


「城主の後添いになるって言うのに、人使いは、荒いんだね」


「そういう人だって、聞いているけど」


城主は、自分以外に興味がない。


僕と同じに。


「僕なら、君にそんな事はさせないのに」


そんな歯の浮く事を、簡単に言うか。


僕は、鼻で笑った。


その時、


あれほど、注意していたのに、カロンが、ふらふらと現れた。


「カロン?」


怪我をしているのだから、隠れて居ろ!と言ったはずなのに。


それも、アレンのせいだった。

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