僕が僕を救うために
少し、笑う。
僕が、後妻になっている話。
見窄らしくて小汚い娘が、城主の婦人になるなんて、
ありえない。
あるとしたら、その生き血を啜るか、余程の変わり者か。
あってもないのに、
決めつけるのは、どうかと思うけど。
紗羅の頭の中には、とても、優しい城主の姿が、焼き付いていた。
あながち、
恋愛感情があったのかも。
歳も離れて、
釣り合いも取れない2人が、夫婦になるのか。
沙羅の若さが目的なのか。
そう考えた。
その方が良かった。
優しい城主に惹かれているなんて、知って、
奥は、少し、嫉妬した。
沙羅は、誰にも、モテてはいけない。
僕が、仕方なく、愛情を施す相手でなくてはいけない。
城主が、しばらくぶりに、帰ってくると、
おばさんは、張り切って、厨房の侍女達に声を掛けて、
豪華な食事を用意させた。
僕は、浴室に押し込められて、
体の隅々まで、現れて、
精一杯の支度をさせられた。
貧しい、ガリガリな少女を、
無理矢理、貴婦人に仕立て上げた。
筈だった。
鏡を見て笑った。
やっぱり・・。
無理がある。
痩せすぎてるのと、
そばかすだらけの中にある、一重の目。
白目がちで。
鼻は、丸い。
どう頑張っても、
綺麗とは、程遠い。
沙羅は、そういう女だ、
教室の隅っこにいる。
目立たない。
文学少女。
異世界に飛ばされてからって、そう、変わらない。
こんな少女に、興味が湧いたのか。
とんでもない、珍しいやつだ。
城主との食事の時間が迫る前に、
カロンに会った。
だいぶ、具合は、良くなっている様だ。
「君は、信じている様だけど」
カロンは、息をするのも、やっとなのに、
「気を付けて」
ようやく、そう告げた。
「何があったの?」
答えようとしたカロンは、何かに怯える様に、口を注ぐんだ。
「君は、変わったよ」
そう言って。
「変わった?」
そうだよ。僕は、沙羅じゃない。
「ここで、生きていくなら、変わるしかないよね」
「そうだけど・・・」
カロンは、口の中で、何かを呟いた様だった。
「沙羅。君が、沙羅でないのなら・・・助けてほしい」
「え?」
僕は、気が付かないふりをした。
まだ、カロンが、僕の味方か、わからなかったから。
「君の中に、誰かが、いるような気がしたから・・・」
「そう?」
僕は、小窓から、おばさんが、僕を探している様子が見えたので、
慌てて、長いドレスの裾を摘み上げて、駆け出していった。




