感謝と恐怖と
カロン。ごめんな。
僕は、夜中にそっと、馬小屋を出た。
朝まで、怖がるカロンの側に居たかったけど、
他の人に怪しまれるのは嫌だったし。
城主が帰宅したらしい。
城の雰囲気は、変わっていた。
とにかく、恐ろしい奴なんだろうな。
沙羅の中の記憶を辿っても、どこにも、城主の記憶はなかった。
誰かが、僕の不用意な行動で、傷つけられたら、困るから。
僕は、いつもの通りに、食堂裏の入り口から、そっと入った。
「どこいっていたんだい?」
後ろから、声をかけられて、僕は、飛び上がった。
「え・・と」
「西の塔には、行っていないだろね」
「も・・・もちろん」
「行くと、すぐ、わかるんだよ。あそこの蝋燭には、特別な香料が仕組まれているから」
「ははは・・・」
「そんな馬鹿では、ないよね」
「お嬢様に頼まれて・・・えっと、探し物に」
「頼む訳ないだろう?」
「言う事を聞かないと、また、叩かれるかと」
「頼むとしたら、あれかい。あの小さな幼獣を連れて、来いってかい」
「幼獣?」
「喰うのさ」
「喰う?」
「そうさ。自分が、あのままの姿でいる為には、食わなきゃダメだ」
「ちょっと、待って!」
僕は、目眩がした。
あの綺麗な顔をしシャイルニアが、ドラゴンの幼体を食べる。
西の塔にいる骸骨や怪物といい、
まともな、人間なんて、いなさそうだ。
「無事に捕まえたのかい?」
おばさんの口元が、耳まで、避けそうだ。
「おばさんも、怪物なの?」
「私かい?どう思う?」
「姿や、形が違っても、僕は、変わらないよ」
そう言ってから、はっとした。
僕は、何を言っているんだ。
見た目、重視だったよな。
「そうかい。そうかい。」
おばさんは、何かに、納得するように、うなづいた。
「主人が来るから、さっさと、部屋にお入り。」
おばさんは、早く、部屋に戻るようにせき立てた。
「そうだ・・・」
思い出したように、振り返る。
「お嬢様が、どうして、お前を嫌ったか、わかるかい?」
「いいえ・・・」
「後添いに、お前を選んだからだよ」
「え?」
「そう言う事だから、気を付けるんだね」
おばさんは、意味ありげに、含み笑いするのだった。




