後悔と懺悔
僕は、焦っていた。
正常に判断できると思う?
救急車!と思った。
携帯を探したけど、見つからない。
誰かに知らせなきゃと思った。
が。
僕と紗羅の関係を誰も知らない。
その日、
非常階段の防犯カメラが、故障している事を、僕は、管理人から聞いていた。
誰も、
見ていない。
だとしても、
こんな事で、僕の人生、最後まで、残念だった事にならないのか?
紗羅を引きずって、
下の駐車場まで、降りた。
沙羅は、出かける気だったんだろう。
話があるって、
外で、話すつもりだったのか?
車のロックが、解除された。
「とりあえず、病院に行かなきゃ」
沙羅は、死んでいない。
そう、今の所は。
僕は、ハンドルを握った。
いつしか、降り出した雨が、強くなってきた。
ワイパーが、フルに動く。
紗羅とのマンションは、景観の良い、海辺の近くにあった。
一番、近い病院に行くには、九十九折りの細い道をくだらないと行けない。
「早く!早くしないと」
事故なんだから。
紗羅は、バランスを崩して落ちた。
頭から出血をしているが、死んではいない。
そう思った。
親父に捨てられた母。
壊れた母を見て育った。
周りに裏切られ、捨て鉢になっていた。
何一つ、得たものなんかない。
僕は、いつの間にか、アクセルを強く踏んでいた。
思い起こすと、
つまらない人生だった。
「こんな事で、終わりたくないよ」
紗羅。
君を怪我させた罪を問われるのだろうか。
雨は、強く、僕から視界を奪っていった。
「あ!」
カーブの先で、大型のトラックが真っ直ぐ、突っ込んでくるのが、見えた。
「やばい」
ハンドルを切った。
その先。
カーブの先に、
道はなかった。
「!!」
僕は、助手席の紗羅と一緒に、崖から下の、海へと落ちていった。