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これが異世界の闇

聞き慣れた声。


甘く甲高い声。


似つかわしくない声の主は、


カロンだった。


ドラゴンの幼体。


「どうして、屋根裏に?」


慌てて、窓から、屋根裏に飛び出ようとしたが、沙羅の身長では足りなかった。


窓を開ける事も叶わない。


「手を貸してくれ!」


僕は、叫んだ。


「伯爵!」


掴んだレンガが、ドロドロしていて、指の間が滑った。


爪の間に何か、入る。


当惑した伯爵に抱え上げられて、ようやく窓の枠に立った僕は、突き出した屋根に手をかけた。


「おおい!危ない事するな!」


「聞こえるか?」


この声は、ただならぬ事が起こった証拠だ。


カロンの短い悲鳴。


空気が震えてる。


他に声もなく。


ただ、気配だけが、波打っていて、


何かが、起こった事を物語っていた。


声を押し殺し、カロンを襲った奴がいる。


「人間のくせに、何処まで、やるんだい?」


「人間?人間だったかな」


僕が、向こうにいたとき。


もちろん、向こうとは、元いた世界だけど。


「最低な奴!」


「あなたなんて、獣以下よ!」


数々の罵声を浴びてきた。


僕は、人間性を否定されてきた。


のに、


人間の癖にだと。


何かの罰みたいに、


僕は、沙羅の中にいる。


短い突き出した、窓の雨よけに手を掛け、僕は、屋根裏へと這い上がった。


「カロン・・・どこだ」


闇が降りていた。


陽が沈んだ後の西の塔には、闇が訪れる。


おばさんが、言ってた。


窓から、上は、存在を消してしまった様に、闇が辺りを包んでいた。


「カロン・・・どこだ?」


屋根を這い回る音が聞こえる。


瓦の一枚一枚が、音を立てて、何者かが、移動していくのを伝えてくる。


その気配。


一つや二つではない。


それと共に、


鉄臭い匂いが、鼻をつく。


「嘘だろう」


この臭い。


僕は、ハッとして気がついた。


さっきから、指の間、爪の間に入り込んだ物が、何なのか。


ぬるっとした液体。


この臭い。


「無事なのか?カロン」


嫌な予感がした。


屋根一面に、何かが、広がっていた。


それは。


夥しい血の海だった。


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