不幸は、繰り返す
「困るのよねー」
僕の鼻先を沙彩の髪がかすめる。
この香。
そう。
僕は、異世界で、使っていたハーブと同じ香。
「深刻にならないでほしい」
彼女は、持っていた紙袋を僕に放り投げた。
「同じの、たくさんあるから、こういうのいらない」
紙袋の中は、高級ブランドの財布だった。
「貰ったからって、彼女と思われたら、迷惑」
それは、昔、僕が、沙羅に言った台詞だった。
「まさか、これが原因で、自殺未遂したの?」
「自殺未遂?」
何言ってるの?と言う顔の沙羅。
「車で、事故ったんじゃなくて、自殺未遂だったって聞いたけど」
「僕が、そんな事する訳ないだろう」
自信満々の沙羅。
金持ちの娘で、着飾って、
そこそこの容貌だったが、化粧やエステで、見違えるように、綺麗になっていたが、
中身は、最低の女になっていた。
彼女の話から、察すると、僕は、この沙彩に失恋し、自殺未遂したらしい。
こんな女。
僕が、惚れるか?
あの沙羅とは、全く異なる性格。
容貌は、まずまずだが。
中身がいただけない。
「見た目は、良くなっても、中身は、最悪だな」
思わず、言葉が、口をついで、出てしまった。
「なんですて!」
白目をむいて、怒り始める。
プライドは、高いのだろう。
見れば、似つかわしくない衣服は、
お姉様方が着る、年齢に合わないブランドだった。
素朴で、一目ではわからないブランドを着る彼女が、懐かしい。
「あなたは、綺麗だと思っているかもしれないが、全く、似合わない」
彼女と話すのは、時間の無駄だと思う。
放り出された紙袋をそのままに、僕は、カフェを出た。
僕が、みすぼらしい立ち位置になっているらしい。
彼女に見下され、こんな思いをしているのは、
僕が、彼女にしてきた事への仕打ちなのか。
怒って、席を立つ僕に、沙彩は、何かを言いながら、つかかって来た。
「バカじゃないの!」
掴み掛かる沙彩を避けようと、僕が、身を翻した瞬間。
「あ?」
彼女が、小さく叫んだ。
「え?」
彼女の体は、僕の肩先を擦れ、頭から床面に落ちていった。
「沙羅?」
倒れた沙羅の頭から、真っ赤な液体が、広がっていった。




