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もう一人の君と出逢う

何も変わらない。


今まで、面倒だった沙羅の存在が消えていた。


あの異性界でも、沙羅は居なかった。


正確には、僕が沙羅の中に居た訳だが。


沙羅の魂は、どこにも存在しなかった。


ふと、


あの怪物に呑まれた時、


沙羅に触れた気がした。


だけど、


それは、一瞬で、僕は、ここにいた。


数多くの検査をして、


結果、擦過傷だけで、済んで僕は、退院した。


不思議だった。


珍しく親父が迎えに来た。


僕は、風邪気味で、薬を飲み過ぎてしまい、運転を誤り崖から転落した。


と。


聞いた。


途中、大きな木達が、車が転落するのを防いで、


通りかかった路線バスの運転手に助けられたと聞いた。


乗っていたのは、僕だけだった。


「沙羅は?」


誰に、聞いても、沙羅の事を知っている人は、いなかった。


それどころか、


彼女の存在は、消え。


彼女の済んでいたマンションは、


僕が住んでいるマンションへと変わっていた。


そして、


僕は、どうしようもない夜の繁華街の住人ではなく、


ただの学生になっていた。


この世界は、


元の世界とは違う。


それとも、


沙羅が存在しなくなった事で、


変わったのか。


僕に、関心のなかった父親は、


子供思いの親へと変わっていた。


何が、起こったのか。


「悩んでいるなら、正直に言うんだぞ」


僕が、言って欲しかった言葉をこの人は、言ってくれた。


「僕は、明日から、どうしたらいいんですか?」


父は、不思議そうな顔をした。


「どうしたらって?思い詰めているのか?」


「そうじゃなくて・・・」


何かが違う。


父親は、僕を心配しながら、今日は、窯出しがあるからとか言って、


僕を残して、出かけて行った。


寂しくて、


気が狂いそうだったあの頃。


そばに誰かが、居てくれたら、


こうも、僕は、違うのか。


華やかに見えていた僕も、


ここでは、目立たないただの学生だった。


ポケットの中の携帯が、揺れて、ようやく、


僕にも、友達がいる事に気づいた。


「思い詰めていたの?」


明るい声だった。


「え・・と」


名前を確認しないで、出てしまった自分を恥じた。


「誰?」


「ヤダ・・・まじ?」


向こうで、弾ける様に、笑う。


「沙彩」


「沙羅?」


「誰?それ、どこの女?」


声は続く。


「思い詰めていたって、私のせいじゃないよね?」


その声は、まるで、僕が、彼女に失恋したかの様だった。


「重いよ・・・全く」


この世界では、僕は、情けない男になっていた。

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