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彼女の事情

最近、彼女の様子が違う。


見窄らしく、誰からも、見下されていた。


汚れた髪の間から、覗く瞳は、オドオドしていて、


顔を見るとイライラしていた。


自分とあまり、変わらない筈。


城主である父は、同じくらいで、遊び相手になればいいだろうと言う単純な考えで、


連れてきた。


影の薄い大人しい彼女を何かと、気にしていた。


「ちっぽけで、小汚い」


父親が気にかける都度、あたった。


「お前の厄落としだよ」


父は、そう言った。


魔が好む年に生まれたシャイルニアには、厄除けが必要だった。


沙羅は、まさにそれだったのだが、


彼女が父親の愛情と勘違いする程、歪んでいた。


魔が好むとは何か。


僕は、それが、この西の塔だと考えた。


翼のある爬虫類達。


ドラゴンの幼体。


遠くからは、そう見えただろう。


神聖な生き物は、棲みつく事は、この世界の人達にとって栄誉だ。


だが。


魔が棲みつくのは。


沙羅は、シャイルニアの身代わりで、連れてこられた。


全ての謎は、この西の塔にある。


近寄る誰もを、拒否続けたそうだが、


僕は、最も簡単に、潜り抜けた。


扉の向こうに、蠢くのは、長い絨毛に包まれた一つ目の怪物だった。


「驚かないのか?」


ドアの隙間から、顔を出した骸骨が、カタカタを音を立てた。


「悲鳴くらいあげてもいいぞ」


「用があったから、呼んだんだろう?」


僕は、視線を合わす事なく、答えた。


と言うより、目の前の怪物から目が離せなかった。


絨毛は、蠢きながら、地を這っている。


「呼ばれていると思った?」


骸骨は、肩をすくめた。


「今まで、誰も辿り着けなかった。なのに、僕は、たどり着いた。それは、僕をここに呼んだからだ」


「変な事を言う女だ・・・いや・・おやおや、不思議な魂の色をしているね」


骸骨は、窪んだ目で、僕を見つめる。


「器を間違えたかな」


「そうみたいだ・・・わかるかい?」


骸骨は、くるくると僕の周りを回った。


「違うぞ。違うぞ。どこから来たんだ?」


「君らの知らない世界から」


僕は、怪物に一歩、近寄った。


一瞬、怪物の表面に漣が立った様に見えた。


動く度に、生臭い臭いが満ち、吐き気がした。


「あまり、近づくなよ」


その瞬間、絨毛の中から、一本の職種が動いた。


細長い職種は、自在に伸び、僕の体を捉えると中へと、引き摺り込んでいった。


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