魔除けの像と腰痛持ち
炎が揺れている。
おばさんが渋々出してくれた蝋燭は、すり減っていた。
「こんなんで、使えるの?」
僕は、口をへの字に曲げた。
「やっと、くすねたんだ。我慢しな」
そう言いながら、僕に耳打ちする。
「また、あの膏薬、作ってくれないか?」
「効くのかい?」
「すーすーして、いい感じだよ」
おばさんは、腰をさすった。
ハーブで、湿布薬を作るなんて、難儀な事ではない。
いくつか混ぜて、古い布に、たっぷりと塗り付け、おばさんに差し出した。
ユーカリといくつかのハーブを混ぜた。
「お前に、こんな才能があるなんてね・・」
おばさんは、僕をまじまじと見ていた。
「今までとは、大分、違うよな」
「これが、本当のあたしなの」
僕は、笑った。
本当の私。
元に戻ったら、僕は、沙羅とお別れする。
中途半端に、関わってきた僕が、悪い。
あの時、沙羅は、本当に、死んでしまったのだろうか。
大量の出血だった。
応急処置は出来たはず。
怪我が大丈夫だとして、
僕らは、崖から転落した。
沙羅だけでなく。
僕の体も魂も、存在してないかもしれない。
考えると、ゾッとする。
いやいや・・・ちょっと待て。
きっと、大丈夫だ。
今まで、何とか、生きてきた。
裏社会の人達に、しばかれた事もあった。
杏奈ちゃんに手を出して、ボコボコにもされたっけ。
それでも、生きてきた。
きっと。
今回も大丈夫。
僕は、西の党への螺旋階段を登っていた。
闇夜だ。
この世界、星明かりがないと、吸い込まれるように、暗い。
蝋燭に照らし出された僕の影だけが、揺れる。
蝋燭の匂い。
誰かに見られている気配を感じながら、塔の一番上にある部屋を目指す。
「なんだよ」
所々、蜘蛛の巣にかかる。
沙羅は、そんなに、背が高い訳ではない。
蜘蛛の巣がかかるって事は、誰も、通らないって事だ。
妙なカビ臭さが漂う。
ドラゴンの幼体だろうか。
時折、叫び声が上がる。
「ドラゴンの幼体だったか???」
僕は、頭を捻る。
思い出せ。
本当にドラゴンの幼体だったか?
爬虫類の頭に、羽のある生き物。
それだけで、拒否反応が起こる。
本当に、爬虫類の顔か?
「魔除けの像だよ」
城の入り口に、同じ物があった。
「ドラゴンじゃないの?」
「似てるけど、全く、逆の物さ」
おばさんは、箒で、埃をさっと落としていた。
そうだ。
ドラゴンの幼体とは、違う。
魔除けと言った。。
なら、何故、カロンは、一緒に居た?
そう、気づいた頃、僕は、一番上の部屋に辿り着いていた。
長い間、誰も、辿り着けなかったのに、
簡単に僕は、辿り着いた。
なぜだ。




