崖の上に立つ城は、事故現場と同じだった。
僕の住んでいる城は、海の側にあった。
見下ろす様に、眼下に海が広がり、反対側には、奥深い森が広がっている。
海の側だから、
何処からともなく、
羽のある物が、飛んできて屋根に住みつくのか。
異常な位、
ドラゴンの幼体や、見た事のない生き物がいる。
その端の西の塔に、灯りが灯る時がある。
「知らなかったのか?」
おばさんが言った。
「あそこには、行ってはならないよ」
使用人の誰もが行きたがらない。
それは、城主も同じ。
あの意地の悪いシャイルニアでさえ、使用人を使わす事はしなかった。
「呪われるらしいよ」
この世界には、呪いなんて、存在するのか。
僕は、笑いそうになった。
いやいや・・・。
僕が沙羅の体に、乗り移るくらいだから、
ありえる話だ。
「誰か、住み着いているんじゃ・・」
「そうだよ。住み着いている」
おばさんは、言い切った。
「ドラゴンを従えた魔女がね」
「魔女?」
十分な魔女がいるじゃん。
シャイルニアって言う、性悪な女がね。
僕は、鼻を鳴らした。
「おまえ・・・」
おばさんは、ポカンとした顔で言った。
「そんな子だったかね・・・。もう少し、素直だった筈だけど」
「いえいえ・・・気になった事は、その場で、聞こうかと」
「ふん・・・・そう言えば、最近、綺麗になったね」
おばさんも、とりあえず、女だ。
沙羅の変貌に、少なからず、気づいたようだ。
以前は、沙羅を綺麗にしようなんて、考えた事なかったけど。
僕が、ここにいる限り、冴えないままでは、置けない。
他の使用人達が、捨てようとしていたカーテンやシーツを譲ってもらい、
自分で、着れる様に、縫い付けた。
意外と、僕は、器用だった。
親父の器用さを受け継いだ様だった。
「あそこは、行ってはいけないよ」
忙しいのか、おばさんは、そう言うと、僕に箒を投げつけた。
「余計な事を言っていないで、庭でも、掃きな!」
僕は、中庭へと走り去った。
「西の塔には、何があるの?」
夜に、部屋に訪れたカロンに聞いた。
「何もないよ・・・」
しばらく黙っていたが、ようやく、口を開いた。
「何もないのに、灯りが灯るの?」
「灯りは、いつも、灯るわけではないよ・・・。月のない夜だけ」
「月のない夜?闇夜って事?」
「う・・ん」
僕が、崖から転落したのも、月のない夜だった。
そう、
この崖の上に立つ城。
僕らが、崖から、転落したのだ。




