第十九話 世の中には綺麗な物があれば汚い物もある
屋敷で生活を始めてから早一ヶ月。
途中これといったトラブルもなく平和に過ごしていた。
「それじゃ、行ってくるよ。」
馬に跨りレイス達に留守を頼むように伝える。
実は今日から三日間ギルドの仕事で村の護衛に着くことになった。
他に高額の依頼が無くほっとけなくて受けることにした。
その村は最近近くにやってきた山賊に警戒して国のお偉いさんに報告したらしいが応援が少し遅れるらしい。
そのため臨時に雇うことにしたらしい。
本当ならケルベロス達も連れて行きたかったのだが。
まだ実践に出すのは早いので今回は家で待機だ。
レイス達に手を振りながら目的地に進む。
街から外れているので結構かかる。
「今回は護衛だもんな。今までとは違うやり方が必要だな。」
俺はどっちかと言うと、守るより攻めるタイプ。なので周りに目を向けなければならない。
「それに、あまり人外の力を出すわけにはいかないしね。」
これも要注意の一つだ。
今までは目撃者が少なかったのであまり気にはしていなかったが。
今回は何十人と竜也の戦いを見せるので慎重に闘う必要がある、のだが。
「まー、魔法でいいよな。」
あまり深く考えていないようだ。
「しかし、以外と成功するもんだな。」
乗っている馬に視線を向ける。
この馬は普通の馬では無い。
式神なのである。
竜也の神力で作っているので消えろと念じるか一定以上のダメージを負うと元の紙に戻るようになっている。
疲れ知らずで主人に忠実、しかも意思の疎通もできるので偵察にも出せる。
もし、お偉いさんが聞いたら何としてでも手に入れるだろう。
それほどの物なのである。
「他にも色々作ったからな。機密を守るために特殊な守りが必要だな・・・。」
そう。
式神以外にも危ないものがある。
それはこの間作ったもの。
「生産の壺」である。
この壺は増やしたいものを壺に入れると一晩でいっぱいになるという消費社会の日本からは涎唾の対象になる品物だ。
これでお金を増やしたり、貴金属、肥料の生産を行っている。
他にも武器や防具など世間に出まわったら大変なものがゴロゴロある。
「まあ、それは警護しながら考えればいいか。」
他人から見ればふざけているとしか思えないよな。
そんなことを考えながら進んでいると前方に黒い煙が上がっていた。
しかも一つじゃない。
見えるだけでも7つ見える。
(火災か?でもあの方角は・・・。)
嫌な予感しかしない。
竜也は村に急いだ。
「何だよ・・・。これ。」
まるで戦闘の跡だよ。
いくつもの家が全焼したみたいで崩れ落ちている。
殆ど鎮火しているが、まだ燻っているところがある。
近くに人が倒れている。
竜也は慌てて駆け寄った。
「おい!しっかりしろ!?」
だが。
「・・・。」
もう死んでいた。だが、焼け死んだのが直接の原因ではない。
背中に斬られた跡があった。
そこまで確認したときもう一人。
小さな女の子が手を伸ばして死んでいた。
伸ばした先には焼け焦げた人形があった。
「おい、こんなところにまだいたぜ。」
「変な奴だな、全身鎧何て。」
何処からか身なりが小汚い奴らが出てきた。
容姿は様々だが共通しているのは全員剣を持っていた。
抜き身で何本かには血が付いていた。
「・・・貴様らが。」
「あん?」
「貴様らがやったのか?」
「げははは!ああ、ここの村は中々いい獲物が沢山あったからな!」
「まあ兄ちゃんの鎧もいいな、置いてってくれよ。」
何の罪もない小さな女の子まで殺した。
平凡な村に自分の欲を満たすためだけに襲った。
奪い、犯し、焼き払い、殺した。
竜也は自分の中の血が急激に熱くなる感覚を覚えた。
マグマのようにグツグツと。
血が沸騰する位に。
竜也は・・・。
「ウオォォォォォォォッッ!!!」
吠えた。
一瞬で身体能力を限界まで上げ、麒麟を取り出し奴らを斬り裂いた。
山賊達は何が起こったか分からないまま死んだ。
比較的無事な小屋から女性の悲鳴が聞こえた
扉を蹴破る。
ドカンッ!
そこには全裸の若い女性が山賊達に凌辱されていた。
手近にいた山賊の首を刎ねてUSPを取り出し奥の奴を射殺する。
バン!バン!バン!バン!
眉間に撃ちこまれ、倒れる。
一人の山賊が飛びかかって来るがけりで倒す。
ボギッ!
首が折れて死んだ。
最後の一人はやっと事態に気づいたのかにげだそうとした。
しかし、扉は俺が入ってきたところの一つしかない。
「ひっ!!おおお願いだ助けてくれ!!」
その傲慢すぎる物言いが無性に腹立たしい。
「そういって助けを求めた人にお前は何をした?」
男は顔面を蒼白にさせ横をすり抜けて逃げたが・・・。
バン!
後ろから銃弾を撃ち込まれ死んだ。
溜息もつかずに女の方による。
暴力をふるわれた者や足の腱を折られた者。
一人として無傷な者がいない。
そのことにイライラしながら話しかけた。
「他に生き残りはいないか?」
「あ、あの。あなた様は?」
体を隠しながら聞いてくる。他の女性も同じだ。
「俺はギルドからの依頼でこの村の警護をしに来たものだ。」
「・・・。もう、遅いわよ。」
ボロボロの女性はこっちを睨みつけながら言い放った。
他の女性からも憎しみの混じった視線を向けられる。
「あんたがもう少し早く来てくれれば!この村は襲われなかった!私の母も旦那も息子も殺されることは無かった!!!」
女の悲痛な叫びが響く。
ここで竜也を責めるのは間違っている。
命を助けてもらったのだから感謝こそすれ罵られることは無い。
だが、この襲撃で皆何かしら大事なものを失った。
そのせいで感情が爆発したのだ。
「・・・。すまない。」
竜也には謝ることしかできなかった。
「す、すみません!助けていただいたのに・・・。」
先ほどの女性が謝って来る。
「他に二人。荷物運びをさせられているはずです。」
「そうか。山賊の正確な人数は分かるか?」
「お、おそらく二十人程だと思われます。」
さっき倒したのを合わせれば十七人。
残り三人。
「ここに隠れていろ。すぐに終わらせる。」
そう言うと小屋から飛び出し、探査魔術を使い反応を探る。
反応を見つけると隼のように向かった。
はい、今回は暗い話になっております。
この話は書いていて気が重くなりました。
やっぱりグダグダな話や楽しいことを書いているほうがいいです。