第十六話 思いついたら即行動って結構危ない
そろそろ休みも終わりです。
草ぼうぼうの庭。
所々壁が剥がれおちている屋敷。
窓は、珍しいガラスで開閉できるようになっていたが穴が開いている。
まごうことなきぼろ屋敷である。
これで屋根の上にカラスがいたら、ぼろ屋敷からお化け屋敷にランクUPだ。
「おい、こんな話聞いてないぞ!って、あれ?」
隣にいる案内の人に文句言おうとしたらいつの間にかいなくなっている。
見れば馬車も無くなっている。
「や ら れ た。」
これから苦情を言おうにも街から離れているので、今から行けば夜になる。
あきらめてここに住むことにした。
「庭とかは後回しにして。今はこの屋敷の改修かな?」
屋敷に入る前に探査魔法をかけて欠損しているところとかを探す。
「結構多いな。」
調べ終わったら屋敷に入り中の確認をする。
厨房や使用人室。
エントランスホールもあった。
「うへ、ほこりまみれ。おまけにカビ臭い。」
どうやら随分ほったらかしていたみたいだな。
破れたカーテンや床に落ちて半分割れている花瓶などまるっきり化け物屋敷だ。
片づけを後にして、修理に向かう。
最初に床が腐っているところは比較的無事な木材を複製し取り換え、剥がれた壁には作っておいたセメントで塗り固めた。
雨漏りしているところは屋根に上り取っ換えたりし修理したりした。
その他色々やって全て終えたら夜になっていた。
「もうこんな時間か。寝る部屋だけ掃除して後は明日やろう。」
竜也の寝室は二階の西向きの部屋だ。
広く元々寝室として使われた跡があったのでそこにしたのだ。
箒で掃いたり雑巾で拭いたりして部屋が綺麗になったら食事をした。
台所が無かったため野宿用の物しか作れなかった。
食事が終わるとベットを作って寝た。
なんだ一日で色々あったためその疲れが来たのだった。
ほどなくして眠りの世界に旅立った。
次の日。
竜也は早起きして身支度を整えたら本格的に掃除を開始した。
客室。
厨房。
武器庫。
様々な場所に行っては部屋の汚さに癖々した。
それでも手を休めなかったのは綺麗にしないと病気が蔓延する可能性があったからだ。
最後の部屋に来た時に違和感を覚えた。
扉が少し開いている。
掃除は順番に行っていた。
最初に見たときはこの部屋の扉は閉まっていた。
(強盗?いや、山賊か?)
不思議なことではない。
ここは長いこと空き家だったのだ。
山賊などの無法者が根城にしてもおかしくない。
銃を取り出し部屋に探査魔法をかけ中の生命反応を確かめる。
どうやら生物はいるようだが少々反応が小さい。
銃をしまい静かにドアを開ける。
ワンッ!
ワンッ!
ニャー!
ミャー!
中には犬と猫が二匹ずつ。
よく見ると一匹の猫はまだ子供で怪我をしていた。
それを庇うかのように犬が立ちはだかっている。
(犬と猫が仲良くしているのは珍しいな・・・。)
これでは掃除が出来ないので猫の怪我を治すことにした。
「ケアル!」
見た感じたいしたことなさそうだし軽い回復魔法で十分だな。
子猫の怪我がふさがっていく。
ものの十秒もしないうちに傷が塞がる。
子猫は立ちあがって竜也の足元をちょこちょこ駆け回る。
どうやら俺が悪い人物ではないと判断したみたいだ。
他もこっちに少々警戒しながら近寄る。
「ほら、こい。」
しゃがみ込んで手招きする。
竜也は動物好きで元の世界では野良たちには秘密で餌をやっていたこともあった。
そのことで完全に警戒を失くし駆け寄って来る。
(さてこいつらどうしようか?)
別にここで住まわしても構わないのだが仕事が多くなるのは得策ではない。
まだまだこの世界の知識が足りない。
色々調べたいことがあるので長時間家を空けることはできない。
しかし、餌や外に出ないかを監視しなければならない。
どうしたものかと考える。
そこであることを思いつく。
「・・・始めてやるけど大丈夫だよな。」
掃除をいったん中止してホールに動物たちを誘導する。
(さて、やりますか。)
想像具現化である魔法陣を想像する。
すると動物たちに一匹ずつ足元に同じものが現われる。
やがて全身を光に包まれて動物たちは人の形になった。
術式は成功した。
使ったのは「擬人化の魔法」。
全員ちゃんとした人になった。
しかし、ここで問題が。
「ブッ!!」
素っ裸だったのだ!
考えてみれば当然のことだった。
彼らは元々動物。
身にまとっているものは無い。
しかも、全員女子だった!!!
「わー!人間になっている!?」
「今のは一体?」
「うーん?何かスースーする。」
「何よこれ!?」
四者四様。
「と、とりあえず服を着てくれ!!」
あの後。
俺が服を作って渡したけど服の着方を知らなかったため、目隠しして服を着せた。
ちなみに目隠しでも着替えさせることが出来たのは心眼を使ったからである。
服は全部同じなので着方を覚えてもらって自分たちで着てもらった。
館の掃除より疲れた。
それで今は俺を含めて全員がホールにいる。
「あー、うん。とりあえず自己紹介しよう。俺は本条竜也。竜也って呼んでくれ。」
さっきのこともあり目が合わせられない。
「私たちに名前は無い。」
私も私もと声を上げる。
のっけからつまずいてしまった。
「ねーねー、竜也お兄ちゃん。さっき一体何したの?」
竜也お兄ちゃんだと!?イカン。何か気が遠くなる!
「さっきのは魔法だよ。君達を人間の姿と同じにするね。」
何とか根性で耐え。質問に答える。
「しかし、何故そんなことをした?」
何か威厳を感じる声だな。リーダーみたいだ。
「皆に聞きたいことがあってね。」
「あら、何かしら?」
一番グラマーな人が聞いてくる。
「うん。僕の使い魔にならないかな?」
「何よそのツカイマって?」
気が強そうな娘が聞き返してきた。
「使い魔っていうのは・・・。」
懇切丁寧に教える。
「ふむ。簡単にいえば臣下みたいなものか?」
「まあ、そんな感じ。」
皆真剣に考えている。
「ちゃんと三食つくし、服とか必要な物は全部買うし。」
ここぞというときにアピールしまくる。
「・・・ならば頼もうか。」
「私も。」
「あたしも。」
「しょ、しょうがないわね。だったら私も・・・。」
なんか一人ツンデレがいたような・・・。
くだらないことを考えながら、「契約の魔法陣」出して皆と契約した。
その時に名前を付けてあげた。
白髪の幼い女の子には「月光」。
元々は子猫だったみたいだから一番小さい。
見た目十四歳。
茶髪の凛々しい娘には「ティンダロス」
元犬で前までは皆をまとめていたみたいだ。
紅髪のグラマーな女性は「不知火」
元猫で中々頭がいい。
最後は俺と同じくらいの年齢で同じ黒髪の「ケルベロス」
元犬で直情型だがいつも前に出て皆を守っていたらしい。
「皆これからよろしくな。」
「「「「はい、よろしくお願いします。ご主人様!」」」」
最後の一言で俺のライフは0になった。
ここで使い魔登場。
長かった。
この娘達を出すのには結構苦労がありました。
使用人的な人を出そうにもただの人ではいけません。
何か人には無いもの。
人とは若干違う考えの人とかしか竜也君の仲間になりません。
話は変わりますが、今回の内容は結構強引なところが見受けられますがスルーしてくれると幸いです。
それではまたの機会に。