第十五話 うまい話にご用心
「ここか。」
目の前にはちっちゃい城という感じの建物(成金と言っても可)がある。
最初はどっかの趣味の悪い貴族かと思ったが他の人に聞いたら苦笑いを浮かべてここだと言っていた。
成金屋敷と周りは呼んでいたそうな。
「大丈夫かな?」
不安を覚えながらなりk・・・ではなく、ギルドに入って行く。
「次の方どうぞ。」
そういった受付嬢が隣にある数字の書いた布(卓球やバレーボールで点数をカウントするやつに似たもの)をぺラットめくった。
その番号が俺のと一致したのでその受付に向かう。
「いらっしゃいませ。」
見事な営業スマイル。俺が店長だったら花マルです。
「家を買いたいんですが?」
どんな家があるかな?
「希望は何かあります?」
そうだな。
「まず、町からちょっと離れたところで、それなりに大きくて庭付きのが良いですね。」
内は道場と言うだけあって広いには広いがまあぼろいからな。単純に大きな屋敷に興味があるし。
「はい、分かりました少々お待ち下さい。」
すたすたと奥に歩いて行く受付嬢。
2~3分待つと一枚の紙を持ってきた。
「お待たせしました。お客様の要望に全てかなっているのはこの屋敷ですね。」
どれどれ、フムフム。どうやら豪商の屋敷だったらしく中々広く豪華であるとのこと。
竜也は二つ返事で受けた。
「それじゃ、この屋敷でお願いします。」
「えっ!よろしいのですか?」
なんで驚いてんの?
「ええ、それでいくらですか?」
多少高くてもそれを買おう。
「はい、その・・・白金貨千枚です。」
高いなんてもんじゃないですぜ。
「ちょっとまっていてくれ。」
金庫からお金を引っ張りだし袋に詰める。まあ、白金貨一万枚作っておいたからそんなに大した出費ではないし。
「はい、白金貨千枚。」
どさり!!
千枚も集まるとかなりの重量になる。
「は、はぁー?それでは数えさせていただきます。」
釈然としない顔で数えていくが次第にどんどん顔が白くなっていく。
「しょ、少々!少々!!お待ち下さい!!!」
さっきとは違って慌てて奥に引っ込む。どうしたんだろ?
すぐに帰ってきた。
ってもう一人いる。
「お客様。こちらに別室をご用意いたしております。」
なんだろ?
「お客様、失礼ですが何のお仕事を?」
挨拶もそこそこに聞いてきたのは職業。素直に答える。
「傭兵です。」
「なんと、傭兵ですか!しかし、あれほどの大金いったいどこから?」
あっ、それで。
なんとなく今後の対応が浮かぶ。
カンッ!!!
なぜか試合のゴングが鳴った気がした。
「あれは、親の遺品を売れるだけ売って得たお金です。別にあやしくないですよ。」
まずは牽制。
「しかし、あの額は一般の物をどれだけ売ってもそんなになりません。」
牽制を避けられてカウンター。
「はい、何でもカラストナの作品だったとか。」
カウンターを受け止めてボディに一撃。
「なるほど、しかしいかにカラストナの作品でも一番高いので白金貨百枚ですよ?」
おおっと。あえて真正面から受けて決めのアッパー勝負をする。
「…実を言うと、ギャンブルで賭けたらそれがもう大当たりで。」
危機一髪!ぎりぎりで避けきって後退したが、ダッシュで向かってくる。俺も力一杯いダッシュ。
「なるほどギャンブルですか。」
走りながら殴ってきた。
「ええ、そうなんです。」
対する俺も殴り返す。
勝負は一発。
「ふむ。」
「ふう。」
ゴンッ!!
両方に拳が入る。
「なるほどそうでしたか。疑って申し訳ない。」
倒れたのは相手選手!
「いえいえ、普通は疑うものです。」
勝者は竜也!見事なクロスカウンターでした。
「それで、家具などの方はよろしかったらこちらの方で手配しますが。」
な、なんと倒れた選手が不死鳥のように立ち上がった!!
「いえ、それは結構です。」
竜也選手、見事な踵落としで相手選手を粉砕!
「そうですか。しかし、屋敷は広いですから何かと手間がありますよ?我々の方で紹介いたしましょうか?」
だがしかーし、それでも立ち上がる!
「うーん。」
これには流石に怯む竜也選手。
「いえ、やはり結構です。必要になったらまた来ますので今日のところは。」
これは、竜也選手が今にも倒れそうな体を支えています。今ここに友情が生まれました!
「そうですか、それではお待ちしております。」
カンカンカンッ!!!!!!!
試合終了のゴングが鳴った。
あれ?
なんで格闘技?
しかも漫画風に?
「話が長くなりましたな、それではお屋敷の方に案内しましょう。」
まあ、いいや。
町から出るとちらほらと家が建っている。
案内人にモンスターに襲われないのか聞くと。
「確かに、この前にもそういうことはありましたが。でも出てくるのは比較的に弱いものが主ですので、村人が2~3人集まれば簡単に退治できるので心配はいりません。」
やっぱ出るんだな。うん、その辺の対策もしておこう。
ここまで来る間に色々なことを聞いて今後の屋敷の改造に思考を巡らせていた。
快適に過ごすためには元いた世界と同等の物にするために考えていた。
「あっ。そろそろ見えてくるはずですよ。」
馬車の窓から外を見る案内人。
ちょうど今は少し高低差のある丘を登ろうとしていたとき窓からそれは見えた。
「・・・大きいな。」
というかあれはもう豪商の屋敷ではない貴族の方だ。
見えた屋敷は遠目でもその姿がはっきり見える。
少々古い感じがあるが直せば使えないこともない。
馬車が屋敷の方に進路を向けたため見えなくなったが、期待に胸が膨らんだ。
思っていたよりも良いところだった。
「この辺りはモンスターもあまり寄り付かないところなので安心です。」
テンションがハイになっていなければ意味深に言った言葉に気がついたがハイになっていたので気がつかなかった。
「さあ、着きました。ここが今回お客様が購入されたお屋敷でございます。」
(うわ、なんか緊張してきた。)
めったなことでは緊張しないが今回ばかりは緊張した。
馬車を降りていざ、マイハウスに・・・。
・・・。
アレ?
ナニコレ?
「お疲れさまでした。ここがお客様の購入されたお屋敷。「妖精の園」です。」
いや、何言ってんのこの人。
竜也の目の前には「妖精の園」の名前とは真逆のおんぼろ屋敷があった。
どうも作者です。
偶にありますよねこいう話。
いわくつきの物件とか。
そいうのは格安というのが常ですけどね。
皆さんもうまい話には気お付けてください。