第十二話 悩みは人それぞれ
まいった。
本当にまいった。
何でまいったかと言うと。
「ここどこ?」
はい、絶賛迷子中です。
「って言うかそれらしき建物が全然見当たらない。」
情報屋から建物の外観を聞けばよかった。何かこっちの世界に来てからドジになって無いか?
何て事を考えながら歩いていたから前方をあまりみていなかった。
ポスッ!
「キャッ!!」
ドスン!!!
特性のおかげで衝撃を感じなかったが。
ぶつかっちゃった人は驚いて足をもつれさせて、結果。
転んだ。
(何というか、ドジっ子なのかな?)
心の中で大変失礼なことを思いながら慌てて助ける。
「うわ!ごめんなさい!!だ、丈夫ですか?」
「あっ、いえ。こちらこそ。ご迷惑を。」
声の高さからして多分女の人だよな?ローブを着ていてフードをしているから顔が見えない。
手を差し伸べる。
おずおずとその手を取り立ち上がる。
その時、フサッ!とフードがずれた。
顔の全体は見えなかったが、見えた顔は美人だった。
特にオッドアイの朱と青の瞳、そして銀色の髪がミスマッチ。
「ッ!!!」
「?」
慌てて顔を隠しちゃったんだけど。どうしたんだろう?
「すっ、すいません!」
慌て逃げようとしている。
逃げだそうとしている女の人の手を掴む。
突然のことだったので条件反射が働いてしまった。
「あ、あの?」
さっきよりも怯えている。まずい
「えっと・・・。」
何て言おう。
と思っていると彼女の後ろから何者かが迫って来る気配がある。
「もしかして追われているの?」
「・・・。」
だんまりか。
だが見たところ悪い人ではないと彼のカンが告げている。
幼いころから色々な修業をやらされた竜也はある程度人を見抜くことが出来る。
それに、カンが外れたことはない。
悪い方ではあるが。
「こっち!」
「えっ?」
少女の手を引っ張り街の中を走る。
後ろから、彼女と同じフード付きローブを羽織っているので顔が分からない。
しかし、何というか戦士のような足運び。
武術を習っているなら一目で見抜けるほど独特な足運びだ。
そんなことを考えていると前からも同じような服装の奴が待ち構えている。
(挟まれた!)
竜也は隣にいる少女を抱きかかえた。
「きゃっ!」
「しっかり掴まってて。」
身体能力を強化させて、
飛んだ。
周りには5メートルの建物が並んでいたが竜也は10メートルも飛んでいた。
周りの人や追っかけていたと思わしき人物も唖然としていた。
もちろん腕の中にいる彼女も驚いている。
追っての気配を振り切るためにいくつかの建物を飛び越えた。
10程の屋根を飛び越えてやっと追っての気配をまくことが出来た。
路地裏に降りる。
「もう追ってはこないようだな。」
「あ、あの・・・。」
「?」
「お、降ろしてくれませんか?」
「あ。」
抱きかかえたままだった。
「ご、ゴメンゴメン。」
彼女を降ろし立たせる。
「いえ。」
赤い顔をしてうつむく。
(やっぱ、恥ずかしいよな。)
いきなり抱きかかえたのはまずかったのでは?
と、彼が考えていると。
「あの、ちょっと良いでしょうか?」
話しかけられた。何だろう?
「うん。何?」
「あなたはこの町に住んでいるんですか?」
「まあ、一応?」
「お願いがあるんです。」
真剣な瞳でこちらを見る。
「私、この町を見たいんです。でも始めてきたのでどこがどこだか分からないので案内してほしいんです。」
街の案内か。
「うーん。」
俺もこの町に来たばかりだからそんなに詳しくは知らない精々大まかなとこ位だ。
「駄目でしょうか?」
顔を隠したままなので表情は分からないが不安そうな声で聞いてくる。
「いや、駄目では無いんだけど・・・。」
「お願いします!」
「・・・。分かった。でも、俺はここに来たばかりだから詳しいところは分からない。それでもいいか?」
「はい!ありがとうございます!」
頭を下げてお礼を言う彼女のフードが完全に外れた。
気付いた彼女が慌ててフードを被り直す。
「1つ聞いていいか?」
「は、はい!」
「何で、顔を隠しているんだ?」
「え?」
彼女は信じられないという声をだす。なして?
「えっと、私を見ても驚かないんですか?」
「?逆に聞くが、何処に驚く要素があるんだ?」
オッドアイのことを言っているんだろうか。確かに珍しくは有るだろうが。
なぜかホッとしたように彼女はフードをとる。
「いえ、その。瞳の色が違うものは大抵魔力が物凄く高いんです。それに魔法に関する技量も平均を大きく上回っていてその・・・。」
なんかごにょごにょ言っている。要は強いから怖がるのでは無いかということだろうか?
「ふーん、そうなんだ。」
「恐ろしく無いのですか?」
まあ、自分が一番恐ろしいし。
「いや、別に怖がるようなことでも無いだろう。」
「はあ・・・。」
なぜか釈然としないといった返事が帰ってきた。おかしなこと言ってないよな?
「そんなことより・・・。」
表道理に指を指す。
「何処に行きたい?」
めんどくさい話は無しにしよう。
「は、はい!そうですね。」
彼女も歩き出す。って
「そういえばさ。」
「はい?」
「君の名前は?」
名前を聞くのをすっかり忘れていた。
「あ、はい。申し遅れました。」
一礼をする。礼儀正しい。
「私は、レイスと言います。」
「俺は本条竜也。竜也って呼んでくれ。」
「リューヤさんですか?珍しい名前ですね。」
「よく言われるよ。」
予想していた返答に苦笑する俺。
「あ!ご、ごめんなさい!私ったら・・・。」
「いや、気にしなくていい。珍しのは変わらないだろうし。」
挨拶も済んだし。
「それじゃー、何処に行く大まかなところしか案内できないが。」
「はい、それなら市場を覗いてみたいです。」
うん、そこなら知っているな。何とかなる。
「それなら、こっちだな。」
フードを被り直して俺の後についてくる。
この突然の出会いは後に大きな運命に巻き込まれていくことになる。
必然で出会った彼らはどのようにして後の困難に立ち向かうのか。
誰の知る由もない。
ついに出ましたヒロイン。
他の作品と比べて登場のタイミングはかなり遅いです。
本当はもっと遅かったんですが早めに登場させました。
何者でどんなことになるのかは次回ちょこっとだけ入れます。