表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

あらすじ

──〈ジュンランド・ラン〉、もう列車は走らない。

タトゥイーンの夜、午前二時。モス・エスパからアンカーヘッドへ向かうはずだった最終の貨物列車。その線路は今、砂の下で眠っている。錆びた枕木の横にしゃがみ込み、僕は“来ない到着”を待っていた。


頬をかすめる風がひんやりして、汗の跡をすっと乾かす。二つの太陽が落ち切った砂漠は、昼の火照りを嘘みたいに手放して、音まで冷え込んでいる。遠くでジャワのサンドクローラーがエンジンをうならせ、それが止むと、また世界が深い耳栓をしたみたいに静かになる。思わず息をこらすと、自分の鼓動だけがやけに大きい。


タトゥイーンに生まれた者なら誰だって知っている。夜の線路が物語るのは、「ここを走るものはもういない」という事実だ。残っているのは砂、星、それから歩くしかない僕たちの足音だけ。


父は昔こう言った。

「世界は砂の熱さでも闇の冷たさでもできていない。止まった線路にも、耳を澄ませば旅の音が響いている」

あの父を連れ去った帝国の徴発船は、最後までうるさいほどのエンジンを鳴らして消えた。いま僕の周りに残ったのは、突き放すような無音──だけど、それが悪くない気もする。静けさは怖い。でも真っさらでもある。何かを始めるなら、こういう音のない夜がちょうどいい。


切符はない。持ち金は七十五クレジット。フォースの才能もライトセーバーも僕には関係ない。それでも銀河の果てまで行ってみたい。ただの意地だ。行けるところまで歩く。潜り込める船があれば潜り込む。それだけ。


胸ポケットで、父の赤いクリスタルが冷えている。指先で触ると、氷みたいに硬い。旅の温度計を握っているみたいで、思わず笑ってしまった。


星が地平すれすれまで降りてきて、錆びた線路を白く照らしている。

──列車は来ない。だけど旅は、もう動き出している。


僕は砂に埋もれたレールをまたぎ、暗闇の向こうへ最初の一歩を踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ