生徒会活動方針議事録
「…………というわけで、生徒会非公式お手伝い係としてよろしくー」
「仕事を増やしたやつを歓迎できると思う? 私は今からでも追い返したいんやけど」
甘いな、と言いながら祐介はどこからともなくフリップとスタンドを取り出した。
そこに書かれていたのは2本の帯グラフで、今の生徒会本部役員の仕事量を100とした時、祐介が手伝うことでどう変化するのかを描いたものだった。
あくまで祐介は、非公式なお手伝い係だ。
生徒の前に立って何か話をしたりするような立場には基本的になることができない。
そのため生徒会が発信している「生徒会ニュースだよっ☆」などをはじめとする掲示物の作業を肩代わりすることくらいしかできないことになる。
とはいえ、生徒会はアニメに出てくるほどの大きな権力はない。
行事が近づいてきたら話は変わるが、今のままならその掲示物を手伝うだけで大きく負担が減るのだ。
実際、そういう作業の6〜8割は祐介が手伝うと書かれてあり、行事に専念できる時間も増えそうだ。
「ただ、件の生徒会ラジオについてはどうするつもりなんですか? 掲示物手伝ってもらってもそれで僕達の仕事増えたらあんまり意味ないんじゃ…………」
「大輔達は、生徒共から届いた質問に対する簡単な返答を考えて、10分弱くらいに収まる程度に俺が書いた台本を読んでくれるだけでいい」
企画、準備、台本作成、その他諸々は祐介がすべて行い表に出てくる部分だけ生徒会本部が行う…………しかも掲示物の手伝いまでしてもらうという生徒会からすればかなり虫のいい話である。
「いいの? 生徒会にしか都合いいことないからありがたいことこの上ないのはそうなんやけど…………」
「まぁ友達が困ってるんやからなぁ…………それに俺は放課後することなくて暇してるしなぁ…………大輔作のAIの完成も楽しみにしてるからさ。早く作る時間確保して欲しいのもあるから」
祐介は笑みを見せながらそう言うと、大輔と美緒を黙らせる。
断る理由が無いのだ。
人手不足、大半の生徒からの生徒会に対する不認知、おそらくこれからやってくるであろう行事関連の仕事に割ける人員と時間の問題…………すべてキレイに解決するのだ。
「まぁ……許可取ったのは1学期の間だけだし2学期には普通に部外者やけどな」
「「よしっ!!」」
「おい里奈!!石井!!盛大にガッツポーズしてんじゃねぇ!!」
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「生徒会ニュースだよ☆、って……何回見てもネタかどうかを疑うタイトルよな」
「天才里奈様のネーミングセンスに何か文句でも?」
「犯人お前か」
FAX用紙にシャーペンで下書きをしている祐介が文句を垂れながら机でじっとサボらずに作業をしている。
その光景が大輔からすれば異様でしかなかった。
普段の祐介は、授業中なら寝ているか、タブレットをこっそり先生にバレないようにいじっているかの2択で、
課題なんて、提出しないといけない授業が始まる30秒前に終わるなんてことなんてザラにある。
そんな男がこんなに真面目にしていて、しかも大輔にとって虫のいい話でしか無い提案を笑顔でしてきたのだ。
正直不安しかない。
この男、何を企んでいる?
大輔は祐介を見つめ、しばらく考えた後、
「考えすぎ、かな」
とだけつぶやき目線を動かした。