プロローグ
もしも、父親が再婚して姉が出来ることになったら…
そんな特殊な環境の中で、さらに主人公の男の子も特殊だったら…
そんな妄想を文章にしてみました。
「父さん、再婚することにしたんだ」
「…はい?」
俺は飯塚誠大。17歳。高校2年生の男だ。
父親と地方都市で2人で暮らしている。
母親とは俺が小さい頃に離婚している。
母親がいなくて寂しいかと言われればそんなこともない。
母親のいない生活に慣れきった頃に父親がとんでもないことを言い出した。
俺はちょうど、バイトに行こうと準備をし、
玄関先でスニーカーに片足を突っ込んだ瞬間だった。いきなりすぎて父親に告げられた言葉が理解出来なかった。
「え〜っと、何?」
「だから、父さん再婚するんだ」
「…ちょっと待って」
俺は履きかけたスニーカーから足を引っこ抜き、
父親をリビングのダイニングテーブルまで連れて行き
座らせた。
「で?」
「父さん、再婚するんだ」
「それは聞いたよ、で?」
「黒髪が似合う清楚系美人な人だよ。誠大も気にいると思う」
「いや、見た目とかじゃなくて、なんで再婚することになったのか経緯をね…」
「会社の忘年会の2次会先のお店で出会った方でね。酔っ払いに絡まれてたのを助けたことがきっかけで出会ったんだ」
「キャバ?スナック?」
「オシャレな居酒屋だよ。…てか今の会話でなんですぐキャバクラとかスナックって発想が出てくるの?誠大、まさか年齢偽ってそういうお店に出入りしてないよね?」
「行くわけないだろ?なんで女の人と喋るのに金払わなきゃいけないんだよ。割に合わないでしょ」
「いや、理由おかしくない!?」
「それより!大丈夫?騙されてるんじゃないの?」
「まさか!沙也加さんだけはそんなことしないから!」
…騙されてるのでは?
まあ、父親も立派な大人と言われる年齢だ。
養ってもらってる俺がとやかく言ったところで本人が決めている以上、意味はないだろう。
「まぁ、親父が決めたことなら俺は従うよ。新しく1人増えるだけならそんなに負担もないだろうし」
「1人じゃないよ。沙也加さんの娘さんも一緒に住むんだ」
「…娘?」
「よかったな、誠大、お姉ちゃんができるぞ」
全然嬉しくない。
父親はスマホを操作して写真を見せてくる。
それは旅行先であろう城の前で母親と並んで写る女子高生の写真だった。
「可愛いだろ?」
「確かに。母親似の美人だね」
「当たり前だろ!美人の沙也加さんの子供なんだからこの子も美人になるに決まってる!」
早くも親バカが炸裂している。
「で、今日の夜9時くらいに顔合わせするから。お前のバイト先の近くのイタリアンレストランに来て」
「今日?急すぎでしょ」
「1ヶ月前くらいから決まってたんだが、すまん、言いそびれてた」
「…はぁ。わかったよ。バイト終わってからだから5分10分遅れると思うけど」
「それはしょうがない。じゃあ、また夜にね。」
「あぁ」
そうしていきなり俺には家族が増えることになった。